軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ソトのお茶会

ケーマの娘、ソトは何の違和感もなくゴレーヌ村に溶け込んでいる。

で、今日はお友達を増やすべくお茶会をしていた。場所は『踊る人形亭』の食堂で。

「私がパパの娘、ソト・ゴレーヌ! ソトちゃんと呼んでくださいね!」

お茶会の参加者はソトの他、ニクと、マイオドール、シスター見習いのミチルの子供組。それにおまけにシキナの5人だ。食事時を避けての席が空いてる時間でオヤツを食べるのに丁度いい頃合い。テーブルの上にはお茶とお茶請けのプリン。

「わたくしはマイオドール・ツィーアですわ。クロ様の婚約者です」

「私はミチル! オフトン教のシスター見習いっ! 気が合いそうだねっ!」

「……わたしも挨拶しなおしましょうか。ニク・クロイヌです」

「自分も参加してよかったのでありますか? 自分は偉大なる父、ダイン・クッコロが長女、シキナ・クッコロであります」

ちなみにソトのフルネームは「カリニソト・ゴレーヌ・増田・ラビリスハート」なのだが、ただの村長の娘ということで普段の名乗りでは省略だ。

隣(ドラーグ) 村のシドも長い名前を略してシド・パヴェーラと名乗っているし、このお茶会参加者の中で一番貴族らしいマイオドールも、相当格式の高い場でもなければ使わない長いミドルネームがたんとある。あと一応シキナも。

「こちら、お近づきの印の靴下です! 大丈夫、ダンジョン産の新品ですよ?」

「これはご丁寧に、どうも?」

マイオドールを筆頭にソトから新品の靴下を受け取る面々。

特にラッピングもされておらずむき出しであるのだが、確かに質はとても良い。

「ぜひ今! 履いてみてもらえないかなと! あ、古い靴下はこちらで回収するので!」

「ソト様。今日のお茶会ではそういうのは止めるようご主人様から言われています」

「うぐっ、お姉ちゃん……パパめ、覚えてろよ……」

ソトがその変態性を発揮しかけたところでニクに止められた。

……不思議とソトの奇行――靴下収集癖については、何故か今までは容認されていたのだが、それはケーマの部下、奴隷のニクとイチカ、ダンジョンモンスターの娘たち、つまり身内に限られていたからだともいえる。

さすがに外部の相手には止める方が無難だろう。ニクのおかげで無事にお茶会を始められそうである。

「ソト様は、クロ様の妹なのですね?」

「はい! その通りですマイちゃん。私はお姉ちゃんの妹ですよ、ふふん……あ、マイちゃんはお姉ちゃんの婚約者でしたっけ。マイ 義姉(おねえ) ちゃんって呼ぶべきですかね」

「お、義姉ちゃん……! た、たしかに!」

マイオドールは篭絡された。

「いやぁ、しかし師匠に娘がいたとは驚きでありますな」

「あら、クロ様もケーマ様の子でしょう? そう驚くことではありませんよ」

「……ん? でも家名がちがうでありますよ? それにクロちゃんは犬獣人。種族が違うようでありますが」

「わたしのクロイヌはご主人様からいただいた名前です。それと、ソト様とは母親が違うので」

「あ、なるほど。クロちゃんは庶子でありますか。師匠も隅に置けませんなぁ」

ニクの言い訳にふむふむと納得するシキナ。

ちなみに父親も違うのだがそれは黙っておく。黒髪は珍しいので黙っていれば勝手に血が繋がっていると誤認識してもらえるので。

そして次に、ちゃっかり靴下を履き替えたミチルがソトに話しかける。

「ソトちゃんソトちゃん!」

「なぁに? ミチルちゃん」

「あなたはオフトン教ですか?」

「はい! オフトン教です!」

「いえーい!」

「いえーい!」

ハイタッチを交わすソトとミチル。あっさりと意気投合した。

そして、ニクに見えない位置でそっと脱ぎたての靴下をソトに渡すミチル。

「……今度の教会行事の件につきまして、こちらで私ミチルにどうぞよろしく……」

「くくく、おぬしも悪よのう。パパに口添えしておきましょう……」

そしてまるで悪徳商人と悪代官のようなやり取り。山吹色のお菓子ではなく靴下なのが子供らしいといえなくもない。

尚、二人ともノリでやっているだけなので特に悪だくみもないはずである。多分。

「……それにしても、この宿のプリンは本当に完成度が高いですね。レシピをいただいてから我が家でもつくらせてみてはいるのですが」

「マイ殿、いつのまにレシピを!?」

「ふふふ、なにせクロ様の婚約者ですので」

「いいでありますなぁ……」

「? 別にここに来ればいつでも食べられますよね?」

「ミチル殿、自分はいずれ帝都の実家に帰るのでありますよ……あと10年程は居たいでありますが」

シキナの婚期は大丈夫だろうか、と心配しかけたがやめておくマイオドール。エルフだし他家のことだ、気にしても仕方ない。

「確かに、帝都は遠いですわね」

「ここの食事専属の【収納】持ちを雇うのも手でありますなぁ」

「なるほど、ワタルみたいなものですね」

「え、クロちゃん、勇者ワタルってそんなことしてるでありますか?」

ここでお米を仕入れて帝都へ運ぶのもワタルの仕事に含まれているらしい。

……ダンジョン機能を使えばいくらでも帝都へ運べるし運んでいるが、誤魔化すためにワタルを使っているようである。(『白の砂浜』経由で融通している分も含め、お米の輸出は『欲望の洞窟』の大事な収入源のひとつである)

「ふーむ。帝国の各地を旅する勇者ワタルの靴下とは、どんなのなんでしょうか……」

「ソト様」

「わ、わかってますっ、今日は無しですよね、今日はっ」

ニクに釘を刺されるソト。

「ニクちゃん、別に私は気にしないよ? ソトちゃんの愛も受け入れます、それがオフトン教シスターなので!」

「ミチルちゃん可愛い! 好き!!」

「こらミチル。またクロ様をその名前でっ」

「……わたしはむしろそちらの名前で呼ばれたいのですが?」

「駄目ですクロ様! はしたないっ……わ、私と結婚したら、その、寝室でお呼びして差し上げますので……それまではご容赦を……っ」

マイオドールが顔を赤くする。

……ケーマ達の間では普通に呼ばれているので忘れがちだが、『ニク』はそういう意味なのである。

「ね、ね、ソトちゃん。マイ様良い匂いしてるよ」

「うんうん、可愛いですねぇ! こういうの好物ですよっ」

「お、さすが師匠の娘でありますな!」

「ちょっと! 何話してるんですかお三方!」

「……とりあえずプリンのおかわり、いかがですか?」

こうして、ソトは普通に……普通に? 村長の娘として受け入れられた。