作品タイトル不明
ドーター
「……え、誰?」
「ケーマ、誰これ。知り合い?」
「いいや」
少女はぱちくりと目を開く――どこかで見たことあるような、碧眼。というか全体的な見た目として、ロクコに似ているような――
ふと、予感が走る。少女は口を開き、元気に第一声。
「パパ! ママ! はじめまして、私はあなたたちの娘です!」
……よし、大体把握した。
「お前さてはさっきのダンジョンコアだな!?」
「えっ。さっきの? パパとママってわ、私達のこと? え、娘……そういえばケーマに似てるわね!」
「いやいや目元はロクコだぞ」
って何で赤ちゃんを前にした夫婦みたいな会話してるんだ俺達は。
「察するに。俺とロクコがあのコアに力を注いだろ? それで……俺達の何らかの要素を取り込み、ダンジョンコアが 孵(かえ) った……んじゃないか?」
「なるほど。わかったわ……つまり私たちの子供ね! 私がママ!」
「俺がパパってことかよ」
「さすがパパとママ、状況の把握が早いですね! 大体その通りです!」
ぱちっと手を合わせてにっこり笑顔で肯定する少女。
……迂闊だった。というか本当に第一子が誕生してしまったことになるのか?
いやいやそんな、生まれたときからこのサイズで喋る第一子なんて……ダンジョンコアだからあり得るんだよなぁ。
「とりあえずお父様にメールで聞いてみないとな」
「あ、じゃあ私はハク姉様に――」
「絶対に駄目だロクコ! 先に状況の確認をしっかりやってからだ!」
俺を殺す気か、とロクコを止めてメニューを開けば、そこには先回りして『父』のメールが届いていた。
『用件:おめでとうケーマ君! 第一子誕生だね!』
「マジか……」
メールタイトルから神に娘認定されてしまった。……開いて詳細を読む。
『やぁ、まずはおめでとう。どうやらケーマ君はロクコと番外ダンジョンコアを完成させてしまったようだね! 勇者スキルのレベルを上げるために用意した 初期状態(プリセット) コアだったのに、2人の要素で 起動(ブート) させたわけだ。よって間違いなく君たちがそのコアの両親だよ。ちゃんと面倒みてあげてね?』
……どうやら推測通りだったらしい。
『追伸。番号は割り振らないからちゃんと名前つけてあげるように! それと、一応その子にもDPカタログは使えるように 接続(コネクト) しておいたからね。僕からの出産祝いってことで』
マジかー。あー……うん。出産祝い、出産祝いね。
「お父様はなんて?」
「……こいつは、間違いなく俺達の娘らしいぞ……名前つけてやれってさ」
「やったぁ! それじゃあ何て名前にしようかしら!」
「はい、はい! 私かわいい名前がいいですっ」
「娘の名前考えるなんて初めてだから緊張するわね!」
生まれたてなのに普通に喋っている点や、発言する時に挙手までしている。これについては何の疑問も持たないらしい。
……つまり、ダンジョンコアだからそういうもんなんだろう。 初期状態(プリセット) とやらに一通りの基礎知識が入っている、まったく人間とは大違いすぎる生態だ。生まれからして。
「ちょっとケーマも一緒に名前考えてよ。あなたの娘でもあるんだから」
「お、おう? まぁそうだけど……って、お前、ダンジョンコアの本体はどうした?」
「え? その中ですけど?」
と、いまだ開きっぱなしだった【収納】を指さす娘。
……まさか俺の【収納】がダンジョン化したとか言わないよな?
「私のダンジョンはママの【収納】ですね!」
「あー、やっぱり……そうなるよね……ん? 今なんて言った?」
「だからママの【収納】……」
!?
「まて、なんで俺がママなんだ!?」
「……? 私の知識と照らし合わせて、ママがママだと判断しました! あれっ、なにか違いました?」
「俺は男だからパパだ!」
「……あっ、なるほど……? 男なら……パパです、か? 私にはない知識ですね」
おい闇神、お前んちの 教育(プリセット) どうなってんの。
「神様とそうじゃないのの場合、神様がパパで、そうじゃないのがママです!」
「あっ、確かにそうね」
「そうか、ロクコも基礎は同じ教育なんだな……」
ダンジョンコアは神の子供。つまり神に類する。よって……その定義だと俺がママになるのか……くそう、ジェンダーフリーダムな神様感覚だった。
「俺は人間だしロクコも人間型コアだから、人間の感覚を適用してくれ」
「質問ですママ! ニンゲンと神様では神様の方が上で優先されるべきなのでは?」
「いいから人間ルールで頼む……な、ロクコもパパは嫌だろ?」
「え? 私はどっちでもいいけど」
駄目だこいつら早く何とかしないと。
一瞬、もしこの件がハクさんにバレた時、俺がママな方が心証が良いのでは? とも思ったけど、ロクコでこれだとハクさんも同じ考えに至って意味がなさそうだし。
「ケーマ。大事なのはこの子が私たちの子って事よ。どっちがパパでどっちがママとか、些細な事じゃないかしら」
「その考えは立派だが、まるで俺が産んだみたいに聞こえるぞ?」
「……ケーマが産んだじゃないの?」
と、ロクコは俺の【収納】を指差す。
「……じゃあアレだ、その。ケーマママって呼ばれたら同じ音が連続して聞き取りにくいから、俺をパパってことにしてくれ」
「分かりました! パパ!」
「私は別に気にならないけど、日本語だとそうなんだ? それなら仕方ないわね」
いいのかよ!?
いや、いいって言ってるんだから良いんだけど。
「とりあえず次は呼び名だな。番外コアだって話だから、仮にソトと呼ぶことにしよう」
「カリニソト? どんな意味です?」
いや、なんで「仮に」まで入ってんだ、と俺が訂正しようとしたら、ロクコが良い笑顔でポンと手を叩いた。
「カリニソト! 良い名前ね。ソトは外部、範囲外、番外って意味の日本語よ」
「仮にだっつったろ。いいか、仮にだぞ」
「カリニは一旦、一時的に、とりあえずという意味よ。異世界由来ね!」
「カリニソト、略してソトですね! とりあえず外……可愛いです! 最高です!」
コアの謎センス! 外国語をカッコいいと感じるような印象なのだろうか?
身悶えして喜んでいる……って、おい、こいつまさかカリニソトで本決定にするつもりか。
「名前はあとでちゃんと考える! カリニソトは却下だ!」
「やです。決めました、私はカリニソト! ソトちゃんと呼んでくださいっ」
「頼むしっかり考えさせてくれ」
「では靴下をください。脱ぎたて靴下をくれたら考えてあげます……あ、パパは靴下を履いていませんね! 【収納】の中にも残ってません。残念でした、買収不可です!」
……何を言ってるんだコイツ。確かに俺は部屋の中で靴下履いてないけど。
「ゆえに、私の名前はカリニソト、ソトで決定です!」
「よかったわねソト。あ、私の名前も異世界で695を示す意味でケーマが付けてくれたのよ」
「わぁ! パパは名付けの天才ですね!」
自慢げに胸を張るロクコ。ごめんて。俺が悪かったよ色々……
あ、ナリキン達に定時連絡しないとなー(現実逃避)