軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化と教育

定時報告で、俺はナリキンに憑依して ナーナ(トイ) 達に情報を渡していた。

「サンシター地方ですか」

「ああ。そこに俺達の暗殺をしようとしてきたお偉いさんがいるらしい」

「丁度良いですね。我々も『ダンジョン』の情報を得てそちらに向かっているところです。光神の日の光の下に平等とか言いつつ、ただし人間に限る町ですよ」

サンシターでは2級市民も3級市民も平等に働ける、みたいな謳い文句で人を集めているらしいが、とても胡散臭いことこの上ない。少し踏み込んだところを尋ねたところ、どうやら秘匿されたダンジョンがあるようなニオイがした、とのことだ。

「ドルチェ様は一体どんな拷問をしたんですかね? 依頼主の情報なんて最も秘すべき情報なのに。よく口を割りましたねぇ、ふふっ」

「暗殺者の質が落ちてるんだと。失敗に次ぐ失敗で予算が無くなってんじゃないか?」

ああ、それはありえますねぇ。と ナーナ(トイ) は頷いた。

「……ところで、これはどういう状況だ?」

「どういう、とは?」

ロクファがごく自然に 俺(ナリキン) の隣で薄着になっている状況だよ。なんというか、その。目のやり場に困るのだが。

「……おやおや? お二方は夫婦でしょう? 宿の部屋で夫の隣に部屋着の妻が居て、何の不思議がありますか」

「いやその」

今は中身はロクコではないのだが、ロクファの顔はロクコが監修しただけあってロクコそっくりなのだ。あと胸は盛り気味。

そんなロクファだが、ランプの魔石節約とのことで定時報告が終わったらあと寝るだけという状況らしく、かなりの 軽装(・・) で大きめのベッドの上に座っていた。

「……ああ! 奥様。旦那様がご所望ですよ。脱ぎましょう」

「そういうことでしたか。これは気が利かず申し訳ありません」

「違うわ! むしろ逆だ、逆。あんまり肌を露出されると困る。ナリキン、お前からもはしたない真似はするなと止めてくれ」

俺と入れ替わりにトランに憑依したナリキンがくちばしにカーディガンのようなものを咥えて飛んでくる。小鳥のくせにわりと力があるな……

『ロクファ、とりあえず何か羽織っておくべきだ。はしたないそうだから』

「はしたない、ですか? ううむ、私の肌を見て良い男性はロクコ様が夫と定めたナリキンと、マスターのみです。これはかなり貞淑な妻であると自認していたのですが」

ダンジョンモンスターはやはりどこかズレているな……いや、まさかロクファの考え方が一般的なのだろうか? と、 ナーナ(トイ) をちらっと見る。

「聖王国、そして光神教ではわりと一般的な考え方ですよ、旦那様。なにせこの国は多夫多妻制ですからねぇ、たった1人か2人相手にしか肌をさらさないのはとても大人しい妻なんですよ」

「なんだその多夫多妻制て。そんな制度初めて聞いたぞ」

なんでも、ひとつの家に複数の「夫」と「妻」が居て、共同体を作っているような感じらしい。……つまり、ハーレム・逆ハーレムも推奨。そのための多夫多妻制、とのこと。

「甲斐性さえあれば、そして夫婦で釣り合いが取れれば何ら問題ない事です。2級市民なんかでも、ダンジョンを攻略するパーティーがそのままひとつの家族になる、というのが一般的ですね。生まれた子供は皆の子供として育てます」

色恋沙汰でパーティーが空中分解するのを防止。育児も複数人で行うため負担が少ない。その上、子供は親達から各種の教育を受けられ、自分の向いた職に就ける。と、良いことづくめらしい。

……お偉いさんが合法ハーレムを作るためのものだけでなく、とことんダンジョンを破壊しようという気概が見え隠れする制度でもあった。

人間至上主義なのも、子供の種族を『人間』に統一して変な諍いが減るようにするための代物だったりするのかもしれない……獣人だと獣特徴で子供が分かり易いもんな。しかも獣人は職の適正が戦士に偏りがある、と。

ダンジョンを攻略するパーティーにするなら、まんべんなくバランスが良い方が捗るというものだろう。

うん、光神教とんでもねぇな。

「帝国でも貴族の家督を持つものであれば複数の妻や夫を持てる法はありますよ、平民は一夫一妻制ですが」

「俺としてはそっちの方が馴染み深いからな。……ロクファも、あまり聖王国に染まらないように。あくまで潜入先なんだから」

「あっ、な、なるほど。そういう事ですか、分かりました。仰せのままに」

ロクファは上着を羽織って、ぺこりと頭を下げた。谷間見えてんぞ。

『憑依』を解いて宿に戻ると、ニクがオフトンに潜り込んでいた。あちらでも寝る時間だったが、こちらでももう寝る時間なのだ。俺もそのままニクをいつも通り抱き枕にして寝るとしよう。

「はふ……」

「そういやニク、暗殺者捕まえたんだって? よくやったな」

「……はい」

ニクの頭を撫でると、ぱたぱたと尻尾が揺れた。

自慢げに「むふー」と鼻息。表情筋以外は相変わらず表情が豊かだ。

「なにかご褒美をやろう。何が良いかな」

「……抱き枕業務が良いです?」

「いやそれいつもしてるから……まぁ、ちょっと待て」

【収納】を開き、何かいいものが無いかを探す。……うーん、少し整理しないとだなぁ。

あ、そうだ。

「オリハルコンで何か作ってやろう。何が良い?」

ダンジョンのボスに設定している親指サイズのオリハルコンゴーレム。以前『父』から貰ったボススポーンでこいつを量産することに成功した。

まぁ、復活までに1か月はかかるので量産とも言い難いが……1か月に一度、親指サイズのオリハルコンが手に入るとなれば――正直遊んで暮らし放題のお宝だ。

何ならボススポーンは2個あるので、もう1個もオリハルコンゴーレムを設定してしまえば半月に1回手に入るということになる。

加工が難しく、本来ごく一部でしか加工ができないオリハルコンなので売る先は限定されてしまうが……ダンジョン品ということで加工済みの状態で売ることもできなくもない。

もっとも、オリハルコン目当ての冒険者が山盛りになるだろうから売ったりしない方が無難だろう。やったら宿とダンジョン防衛で忙しさが天元突破する。

そもそも日々の食事や寝床に困っているわけでもないし、ワタルからせしめた金貨もあって貯金も完璧だ。

「ナイフがいいですが……オリハルコンは軽い、ですよね?」

「一部をオリハルコンで作るってんならできるぞ。下手に全部オリハルコンに変えるより重みもそんな変わらない一品になる。使い勝手はそう変わらないはずだ」

「では、それで」

「おっけい、純オリハルコンにはできないが、刃と峰をオリハルコンで作ろう。2本だな」

ちょいちょい、と【クリエイトゴーレム】でオリハルコンを加工。鉄製ナイフの刃と峰をオリハルコンに置き換える。いわゆる付け焼刃だな、焼いてないけど。

ちなみに、付け焼刃が悪い意味で使われるのは、その刃が脆く切れ味的にすぐ使い物にならなくなるから。つまり、オリハルコンならその脆さが一切ないためその意味は反転する。最強の刃だ。

「最後に刃を作って……」

オリハルコンは硬すぎて研げないので、刃の部分も生成しなきゃならないが……まぁ柔らかくして上下から挟み込んでやれば薄くなる。あとはその薄さを維持したまま形を整えれば完成っと。……これゴーレムブレードにする必要ある? 一応しとくけど。

「ほいできた。タイムは?」

「はい。2本で15分です、お見事です」

「じゃ、これを下賜する」

「ありがとうございます、ご主人様」

鞘にしまってほいっと渡すと、ニクは尻尾をパタパタさせて喜んだ。

……武器貰って喜ぶ幼女……うーん。教育を間違えてる気もしなくもないなぁ。