軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰ってきたゴレーヌ村。

で、トイについてはハクさんに押し付ける気満々だったのだが。

「ではトイについてはケーマさんにお任せします」

「えっ。嫌ですよなんで俺が」

「……国の中枢にこのような危険物を置いておけと?」

ですよねー。

ハクさんの離宮でお茶会形式の報告&相談を行った所、トイは俺の下に来ることが確定となってしまった。

「かといって放し飼いは論外です。ロクコちゃんの側に付けるのも不安ですが……それに、いざというときに手綱をとれるのはケーマさんでしょう」

と、そもそもが俺が【超変身】でレオナに変身し寝返らせたことを持ち出されて押し切られた。仕方ない。確かにその通りだ。まぁ、今後も何事もなくレオナに【超変身】できるかは保証できないんだけど。

あと話し合いの最中にハクさんの膝の上に座らされたままのロクコが「あらいいじゃない、ウチにはニクがいるし、きっと仲良くするわよ!」と、まるでペットに犬を飼ってるんだからもう一匹増えてたところで同じよ的な発言をしたのも要因だろう。

……ロクコ、お前その 犬(トイ) に媚薬盛られたの忘れてない?

そんなわけで、数日ぶりに俺とロクコはゴレーヌ村に帰還することになった。トイという 爆弾(オマケ) つきで。

「ただいまー」

「あー、久々の我が家ねぇ」

「あれ、お帰りなさいませマスターにロクコ様。いつの間に起きてでかけてたんですか?」

と、『白の砂浜』経由で村長邸に戻った俺達の事を出迎えたのはシルキーズの……えっと、髪飾り赤いからナコルだっけか。

「……あれ、ニク先輩? ん? なんですかその格好……んん? なんか違います?」

「あら。このような木っ端にも見破られてしまうだなんて……やはり見たことのない相手になりすますのは難しいですねケーマ様?」

「えっ、えっ?」

困惑するナコルを半ば無視して俺に話しかけるトイ。

「それはそうと、ケーマの部屋にさっさと行きましょ? ケーマと私の肉人形が寝てるんでしょ?」

「おっとそうだったな」

ロクコに促されて村長邸の俺の部屋に向かう。部屋の中では、ひとつのオフトンで仲睦まじく寝ている俺とロクコがいた。……ついでに俺の額の上にはフロストリザードのゴンタが。

「護衛のはずが、すっかり置いてけぼりになってたわね」

「……俺を巻き込み、って魔法陣に描いてあったけど、明らかに俺とロクコだけ狙い撃ちだったってことだな。トイ、あってるか?」

「ええと。あの部屋の……ああ。レオナ様が書き込んだ効果のない文字列がありましたが、それでしょうか? 元々ケーマ様とロクコ様を呼ぶつもりだったそうですから、おそらくその推測は当たっているかと」

チロリと青い舌を見せて俺と俺(肉人形)を交互に見るゴンタ。

さすがのレオナも先日出したばかりのゴンタの存在は知らなかったから対象にしていなかったと見える。……ん? でもロクコと俺がピッタリ一緒の時にうまいこと呼び出してたっけな。偶然か? まぁいいか。

「おうゴンタ、こっちおいで。それはレオナが作った偽物だ」

俺がDPで出したカップアイス片手にゴンタを呼ぶと、するすると俺の身体を登りアイスまで到達した。がぶがぶ。トカゲも慣れると可愛いんだよなぁ。

「ケーマ様、私には餌を頂けませんの?」

「ケーマ、私もアイス食べたいわ」

「それより先にこの肉人形をどうにかしないとだな」

つんつん、とロクコが俺(肉人形)の顔をつつく。

「なんかもったいないわね。こんなによくできてるのに。貰っちゃダメ?」

「ダメだぞ。なんか妙な罠仕掛けられてたら困るからな」

「ケーマの目覚まし時計でどうにかできない? ほら、そしたらケーマには私あげるから」

……あー、まぁ、それなら何とか。

「ねぇトイ、これって何か罠しかけられてる? そういうの分からない?」

「ええロクコ様。分かりますとも、少々お待ちを……はい、特に何も仕込みはないようです。しいて言えば排泄の必要がないよう体内に栄養が蓄えられている程度で……ふむ、生体反応をトレースしているようですから、かなり強く刺激すればそれらしい反応も返すでしょう」

目を赤く光らせ、ぺたぺたと肉人形ズに触るトイ。魔力視系のスキルだろう。

「だってケーマ! もらってもいいんじゃない?」

「あのレオナが作った代物だぞ、処分しておかないと後々厄介なことになりそうだ」

トイの言葉が真実でも、トイに見つからないように罠を仕込むことだってレオナならできないわけじゃないだろう。可能性がある以上、廃棄処分が妥当である。ハクさんにもそう言われている。

「さっそくドルチェさんに連絡を入れて回収してもらおう」

「それには及ばないですよ、もう来たから……はぁぁ……」

「あらドルチェ。もう来たのね」

「はいロクコ様。さきほどハク様から連絡を頂きまして。えー、では回収させていただきますねー……はぁぁ、めっちゃ怒られた……このドルチェの目をしても見破れなかった……」

ふわりといつの間にか部屋の中に入ってきたドルチェさんは、【収納】にするりと肉人形を仕舞い、すぽんと壁を抜けて出て行った。……そういやレイスだったな。

「ああん、持ってかれちゃった」

先程まで肉人形が寝ていたオフトンに座って、名残惜しそうにドルチェさんが消えた壁を見るロクコ。まぁ俺もロクコの肉人形は少しもったいないかなと思わなくもなかったけど、ここで未練は良くない。うん、よくない。

「おやケーマ様。……エロホンが彼女に見つかり泣く泣く処分しているような顔していますね? ええわかります。わかりますとも。今宵は私が慰めて差し上げますね?」

「結構だ」

「……ふむ、だそうですロクコ様。ロクコ様が 無聊(ぶりょう) を慰めて差し上げてくださいまし」

「え? 何だって?」

「ええと、言葉が難しかったですか? つまりロクコ様がその身体を使ってケーマ様を――」

「そんなことよりロクコ。とりあえずトイをどうするか決めよう。俺としてはイチカあたりに任せて当面働いてもらっておけばいいんじゃないかと思うんだけど」

俺はトイの言葉を遮り、ロクコにトイをどうするか相談する。

「そうね、私もそれでいいと思うわ。シフトに組み込んでおきましょう」

「よし、それじゃあ適当に誰かに言伝を――」

「ご主人様! 起きられたのですね」

と、そこにニクが安心の 無表情(ポーカーフェイス) で尻尾をパタパタ振りつつやってきた。というか俺達はずっとぐっすり寝ていたことになっているらしい。……ここら辺しっかり説明しておかないとなぁ。

そして部屋の中を覗くニク、目が合うトイ。そっくりな顔のくりっとした黒目がぱちくりと 瞬(まばた) く。

「……だれですかこの犬?」

「あら、これがケーマ様が愛でている失敗作ですか? うふ」

尻尾からして不機嫌っぽいけど……生き別れの姉妹が再会したシーンと言えなくも無いんだろうか? よくわからんけど。