軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無罪?

というわけで、トイを連れて牢屋を出る。巡回している兵士を呼び止めて、ダイード王に伝言を頼む。『 犯人(トイ) に逃げられて、(代わりに) こいつ(トイ) が捕まっていたようだ』と。

トイは地下牢から逃げて俺の隣にいるし、トイは捕まっていたわけだから嘘ではないんだよ、嘘では。

面会の準備をするから待つようにお願いされ、しかる後にまた謁見室へと向かう事になった。今度はトイを横に引き連れて。

「ゴレーヌ男爵。犯人に逃げられた、いや、逃げられていたとのことであったが……」

「はい。あいつは俺の予想以上に狡猾でした。さすが、ダイード国を相手取って大騒動を引き起こしただけのことはある」

「ちゃんと逃走経路、そして身代わりを確保していた、ということか……」

と、ここで責任者のひとりとして参列していたうちのダンジョンに来ていた次期騎士団長ケンホ君を渋くしたようなおじ様――つまりは現騎士団長が 訝(いぶか) し気な顔で一歩前に出た。

「怪しいな。ゴレーヌ男爵、貴殿、犯人とグルなのでは?」

「チャリディ」

ダイード王が手で制すが、騎士団長は首を横に振る。

「王よ。私は怪しきを疑い、国を守るのが仕事です」

「しかし、相手は少女であるぞ? 見よチャリディ。お主がそんな怖い顔をするから怯えておるではないか」

横を見ると、トイがシュンとした表情で小さく震えていた。……演技派だな。

というかある意味現状、チャリディ騎士団長の言う通り組んでると言っても過言ではないんだよな……寝返らせた、が正解だけど。正直に言うとややこしいことになるので言わないけど。

「む、ううむ。しかし……」

「騎士団長殿はお疑いの様子。ですが拘束でこの首輪だけ外せなかったので、丁度いい。本人に証言してもらえばはっきりするのでは?」

「む。確かに証明とはなるか……宜しい。少女よ、答えるのだ。お主は犯人であるか?」

俺の提案に、騎士団長はギロリとトイ睨みつける。ビクンっと震えて俺の後ろに半身を隠すトイ。

……正体を知ってるとそんなタマじゃないだろうと言いたくなるが堪える。

「わ、私は無実です……気が付いたら、あそこにいて……ああ、どうか、どうかお慈悲をお貴族様!」

「首輪は反応しないようだ……嘘ではない、ようだが……首輪が動作しなかったという報告も聞いているぞ?」

おっと、そういえば兵士が首輪の事を見ていたっけ。

「それもそうですね。あー、何か嘘をついてみたらわかるんじゃないか? 首は締まるけど」

「えと! なら、わ、私が犯人です……うぐぅっ!」

「解除、解除だ!」

再びの俺の提案に、藁にでも縋ると言わんばかりに飛びついて見せるトイ。騎士団長が解除を命じると、首輪の締まりは止まったようだ。……首輪をごまかすことができるとは言ったが、反応させる方も自由自在とは恐れ入った。

「この首輪はそこらの嘘発見の魔道具より高性能なものであるぞ。これは潔白の証を立てられたのではないか?」

「であれば、納得せざるをえませんな。……おい、鍵を持ってこい! 無実の少女にいつまでこのような罪人の首輪をつけておくのだ!」

と、あっさり納得してもらえた。その後、首輪を外し、念のため改めて首輪が本物であることも確認してもらったことでトイが無罪であることを疑り深い騎士団長でさえも保証するところとなった。

まぁ完全にコイツが犯人――裏にレオナがいるが実行犯――なんだけども。

「今更ですが、犯人が少女の精神を乗っ取って操っていた、という可能性もありますね。このような少女が犯人というより、そう考える方が自然です」

「なるほど、それであれば首輪が反応しなかったのもあり得る話だ。本人はただ操られて口を動かしているだけなのだからな……君、お家はどこだい?」

「わ、私……なんにも覚えてなくてっ……うぅ怖いよぉ勇者様……」

と、 厳(いか) つくも優しい笑顔を浮かべる騎士団長に、トイはあからさまに怯えて俺に縋りついてくる。……何も知らなかったら俺も騙されてしまいそうなくらいの演技力だ。

「…………どうやらゴレーヌ男爵殿に懐いておられるようだ」

「チャリディ。お主の笑顔は怖いといつも言っておろう、その位にしてやりなさい」

「むぅ。怖がらせてしまった詫びに我がクルトン家で責任をもって預かろうと思ったのだが」

ちなみに騎士団長の家名はクトゥグアということになっていた。クルトンがクトゥグア……微妙に改変されていたわけだな。書類のサインがある日を境に変わっていたりするんだろうか? だとしたらなんという地味な嫌がらせだ。

「ほっほっほ、では記憶が戻るまで王家で面倒を見るというのは」

「こ、怖い、嫌です勇者様。お願いです、お願いだから、私を一人にしないでください……っ」

「……威厳がにじみ出てしまっていたのじゃろうか? 子供に嫌われるのは堪えるのぅ、チャリディ」

「私の気持ちが分かって頂けたようでなによりです、王よ」

と、寂しそうなオジサマ2人をよそに、トイは俺の背中に顔を隠してプルプル震えていた。これ笑いをこらえてるんじゃないかな。こいつならあり得る話だ。

「それで、この子の処遇であるが……そもそも我が国の国民なのかも分からんな」

「でありますな。しかし可能なら保護したいところでしたが……あー、その。ゴレーヌ男爵。大変申し訳ないのだが」

「ああ、はい。この子の身柄はこちらで預かっておきます。何かあれば国を通して連絡していただければ」

と、そこからはトントン拍子に話が付いた。げに恐ろしきは演技力のある子供よ……

これでいて戦闘力も成人男性を軽く凌駕するとか、これ最強なのでは? ヤバいね!

というわけで話し合いも終え、「犯人は逃がしたもののこの国も大変そうなのでこのくらいでまぁいいよ」という具合に帰らせてもらう事にした。

ダイード王と騎士団長はトイに対してまるで孫の機嫌を取るかのように「いくらか金を持っていくがいい」「マントだ。これはあると便利だろう」「まて、まず服を用意させねば」「今夜くらいはゆっくり休んで行ってはどうだ? 美味しい食事を用意させよう」「おお、それはいい。幸いなぜか食文化がやたら発展しております故な!」と色々与えたがった。

完全に要らないというのも不自然なので適度にもらい受けつつ、王城の門をトイを連れて出ていく。見送りについては、城の外まではいらないということにした。……門のところで顔を出して手を振ってきたけど。案外気さくな王と言うべきかなんというか。

「……なんであんなに構いたがるんだ?」

「ああ。ダイードで活動するにあたって、私を優遇するように調教してたからかもしれませんね」

「……神の目覚ましでも覚めなかったか」

「別段害のある洗脳ではありませんし。あと息子よりも娘が欲しかった、娘を甘やかして可愛がりたいという欲望がございましたから。あれが彼らの素なのです」

そういうのもあるのか。まぁ、魔術や薬等で洗脳した訳じゃないならそうなるんだろう。

「さぁケーマ様、無事に私の脱獄も済みました。いかがなさいますか?」

「まずは……帝国だな」

はやくトイをハクさんに押し付けてやらねば。

「それと、そういえば 些末事(さまつごと) で忘れておりましたが国外に出ていた王子達は 如何(いかが) しましょう? 始末しておきますか?」

「……始末はしないけど解呪はしてやった方が良いんじゃないかな」

今どこにいるか知らないし、たまたま会うか国に帰ってきたら連絡を入れてもらうかしてもらう必要はあるな、うん。