軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王子達の事情

倉庫エリアに入る俺達。多腕ゴーレムや多脚ゴーレムといった変則的なゴーレムを適度に撃退しつつ、先日王子たちが魔剣を手に入れた部屋に行く。

そして、魔剣が無いことを確認し「はぁ」と落胆する王子。

「一昨日はここに魔剣があったのにな」

「いやいや王子、持ってったら無くなるに決まってるでしょうに。いくらダンジョンでもそう簡単に魔剣は復活したりしませんよ、なぁウーマ」

「ジャンガリアの言う通りだ」

まぁ実際は魔剣ゴーレムブレードくらいならいくらでも補充ができるんだが。

「そうか……だがアイアンゴーレムが湧くのはいいよなぁ。羨ましいぜ」

「ああ。鉄が無限に手に入る鉱山ダンジョン……我が国にぜひ欲しいな。もっと鉄があればダイードの立場も向上するのだが……」

「銅鉱山はありますが……鉄はほぼ輸入ですからね」

ため息を吐く王子と側近2人。

ダイード国は国際的な立場が悪いらしい。近隣の帝国や魔国、聖王国と比べて圧倒的に。

……3か国に囲まれ、緩衝地帯的な扱いをされているらしい。聖王国は山脈を挟んでおりまだマシ(実際はともかくとして)ではあるが。

「このままではいずれかの国の属国になるのも時間の問題といったところか」

「パヴェーラやツィーアのように帝国に併呑される可能性もあるのか……」

「ダイード領……ううむ。いや! 我が国は独立を貫くぞ! そのためにも手柄が必要なのだ!」

おっと、これは王子達の目的に近づく発言。

何やら覚悟を抱いて燃える王子。……しかし、手柄? こんなダンジョンで一体どんな手柄を得られるというのだろうか。少し突っ込んでみよう。

「ほほう、手柄ですか?」

「うむ。我々は――」

「ここで手に入れた魔剣を使い、更なるダンジョンを攻略しよう――と考えているのです」

王子の言葉を遮りクルシュが目的を言った。言いかけで止められた王子は少し不満気だ。

余った魔剣は売って資金にするそうな。

「更なるダンジョンですか。まぁこのダンジョンは既に攻略済みですし、狙い目なのは魔剣くらいしかありませんし順当ですねぇ」

「……そうなのか?」

「知らなかったのかハークス? 俺でも知ってたのに」

「む、いや、ケンホでも知っていたのか……そうか」

まさかギルドに『ダンジョンコアまで攻略済みです』って報告入れてあるの知らなかったのか王子……もっとちゃんと調べてこいよと言いたい。

見るからに脳筋っぽいケンホが知っていたのはジャンガリアから聞いたかららしいが。優秀だなぁジャンガリア。『影』って便利。うちでもそういうのを育てるべきか……

……

よく考えたらウチの面子って全員そんな感じだったわ。

ロクコはあれで結構したたかだし、ニクは外見詐欺で隠密もできる主戦力。

レイは聖女に見せかけて拷問とかもこなすダンジョン管理者だし……ってか、キヌエさんやネルネもモンスターだからな。何かしら裏がある――

――あれ? まさかイチカが一番まとも……なの? もっとこう、普通の人間の仲間を増やすべきなんだろうか。また奴隷買ってくるかなぁ。

「あ、いや、他にもアイアンゴーレムがあるだろう。そうだ、我々が狩った分は国に送るとかできないか? どうだクルシュ、良いアイディアだろう。次期宰相として検討してみてくれ」

「大きな欠点がありますね。ここからダイードまでとなると……輸送費がかなりかかります。関税もありますから、2体狩って1体分の鉄が送れるかってとこでしょうか」

「……それでは優位性がいつまでたっても確保できないな」

「そもそも他国の鉱山で採掘しようというのが無謀なのです」

アイアンゴーレム1体分の鉄を手に入れるために帝国に同量の鉄を納めるとなると、むしろ帝国を強化する(微々たる量だが)ことにしかならない。

ただの村長の俺が言うのもなんだが、ダイード国は弱小国家なんだなぁって……うん、ご苦労様? としか言いようがないね。

「なんというか、大変だな王子様も」

「分かってくれるか! よし、ウーマも俺達の仲間になってくれ! 好待遇で迎え入れるから!」

「悪いが、宮仕えは趣味じゃないんだ。他を当たってくれ……」

「むぐぐ、諦めないぞ俺は!」

なんで王子は俺をそんなに気に入ってるんだ。

「いやなに、人材の確保は急務なのだ。ウーマを信用して話すここだけの話だが、我が国は色々な混乱があって……今、まともな人材が少ないのだ」

「色々な混乱、ですか?」

「うむ。ウーマ殿は『テンセイシャ』という存在を知ってるか?」

テンセイシャ? 転生者か? 名前からして前世の記憶でも持ってるのだろう。

「他言無用で頼むぞ。……今、我が国では――水面下で多くの貴族令嬢・令息が『テンセイシャ』となり、妙な動きをしているようなのだ」

「ほほう? そりゃ初耳だ」

「王子である俺でもいったい誰が、何人が『テンセイシャ』なのか分からぬ。しかし、この『テンセイシャ』には――少なくとも俺達が尻尾を掴んだ奴は、ほぼ全員が国内の金を集め、いずれ国外へ逃亡しようという動きを見せていた。つまり――実質的な国賊だ」

ダイード国で蓄えた資金を国外に持ち出す……それは、外国の商人がダイード国の資産を強引にむしり取るのと変わらない。

そして現状の法では『テンセイシャ』はただの商人と同じなため中々手が出せない。聞いてるだけでも非常に厄介だ。

で、王子達はこの現行の法をどうにか変えるために、大きな手柄を欲しているんだとか。なるほど、こいつらにはそんな背景があったのか。

「『テンセイシャ』がいずれも優秀なのも手に負えぬ。故に、自身が『テンセイシャ』であると隠している奴がどれだけいるか。……優秀な奴ほど怪しく思える。少なくともケンホ、クルシュ、そして俺の3人は『テンセイシャ』ではないと確認済みだ」

「判別方法があるんですか?」

「ああ。我が国の魔術研究所所長は優秀でな。おっと、無論この所長も『テンセイシャ』ではないぞ」

ふふん、と自慢げに笑う王子。

「そしてこの『テンセイシャ』なのだが……所長が調べたところ、 記憶操作(・・・・) を受けており―― 転生など(・・・・) 一切していない(・・・・・・・) という調査結果がでたのだ。偽りの『前世の記憶』とやらを植え付けられた、正真正銘、我が国の人間なのだ」

「……それは……なるほど、穏やかじゃないですね」

「分かるか、さすがウーマ。そうだ、これは侵略行為。一体誰が――いや、どこの国からの侵略なのか。……実は俺達はこの調査も含めて旅をしている。元凶を突き止めることができれば、それは立派に手柄となるしな」

なるほど。ハークス王子達は国を憂いて頑張る立派な王子だったのか……大変だなぁ。

……ちなみに俺、そんなことをしそうな 混沌神(レオナ) を一人知ってるんだけどどうしたらいいかな。