作品タイトル不明
ダンジョンのおさらい
なんかしらんけどダイード国の王子が来てるらしい。
ドルチェさんからそういう報告を聞いた後、シキナやマイオドールからもそう言う話があった。情報提供にお礼を言いつつ、そういえばダイード国ってレオナがなんか遊び場にしてるところだったなと思い出す。
……国外にいるということは、それから逃れているのか、それとも巻き込みにきたのか? いずれにせよ、要警戒であることには変わりない。
「しかし、王子ね……なのにスイートには泊まらないんだな」
俺はマスタールームから王子とかいう奴らの様子を見ることにした。
ダイード国の王子、ハークス。そして側近のクルシュ、ケンホ。
ドルチェさん曰く、この3人組に加えてこっそりともう1人、中々優秀な『影』(「暗殺者じゃないからスルーしたけど、私なら楽勝」とのこと)がいた。
とはいえ、別段その『影』は存在を隠しているわけでもなく3人に合流し、早速4人でダンジョンに入ってきた。
ここで1日あたりのDP量を見ると、王子が202、側近2人がそれぞれ250くらい。そして『影』の冒険者が532だった。
532……準勇者クラスか。それ以外のやつも中々優秀だ。ゴブリンやトラップは普通に突破され、迷宮のゴーレムも普通に狩っている。ハークス王子とケンホは剣で、クルシュは地属性魔法で援護。『影』のやつは……周囲を警戒してるな。隙が無い。
そして倒した後はアイアンゴーレムの残骸を【収納】に入れて……なるほど、全員【収納】持ちか。こりゃ中々厄介だ。
「……普通に優秀だな」
「そうね。今日は様子見だったから引き返すみたいだけど」
と、いつの間にかロクコが俺の横にいた。顔が近い。
「ねぇケーマ。どうするこれ」
「どうするって?」
「普通に、攻略されちゃうんじゃないかしらと」
「……あー、まぁ、攻略されてもダミーのコアのところまで見せれば十分だろう。ワタルと同じだ」
「それもそっか」
いい機会なので、現在のダンジョンの構造をおさらいしておこう。
まずはゴレーヌ村。宿で休ませつつDPをがっぽがっぽ稼ぐ場所だ。ツィーア山を貫通してパヴェーラ側と繋がる『ツィーア山貫通トンネル』もある。ここはさておき……
1Fのエントランスエリアではゴブリンとトラップによる軽いジャブ。
2、3Fの迷宮エリア。アイアンゴーレムはここに出る。魔剣のお試し部屋もここ。
4Fの『強欲の宿屋』がある元謎解きエリアは単なる休憩場所として、この先が上級者向けとなる。
「大体うちのダンジョンに来る冒険者はここまでよね」
「アイアンゴーレムで稼ぐからな」
5F、螺旋階段エリア。吹き抜けの中央に落とすように壁がせり出してきたり、壁に板が刺さってる状態の階段が折れたりする。
6F、倉庫エリア。ここには魔剣ゴーレムブレードや変則ゴーレムが。初期型のハニワゴーレムも徘徊しており、地味に危険なエリアだ。
「地味にここまで来る冒険者がたまにはいるのよ」
「魔剣ゴーレムブレードも結構持ってかれてるよな」
そして7F以降は分岐する。
7F-1、草原エリア。今はサキュバスの村がある。地味にヤバい所だ。
「サキュバス村に入ると、身ぐるみはがされてダンジョン入口に放り出されるんだっけ?」
「ああ。そういう約束になってる。……ここまで来た冒険者っている?」
「今の所居ないみたいよ」
7F-2、フェニの箱庭、溶岩エリア。『火焔窟』に続く。
「フェニを放し飼いしてる所ね。むしろこっちに来て『火焔窟』に抜ける冒険者は何人かいたわ」
「ワタルも最初ここ行ったんだっけな……」
7F-3、新・謎解きエリア。ここが本線のルートで、扉には「工事中」と日本語の張り紙がはってある。レオナ対策であるが、今の所試したことがないため効果は不明だ。
「ここの謎解きはやたら時間がかかるヤツにしてるのよね」
「ああ。少なくとも1日以上はかかる。時間稼ぎにはなるな」
7F-3、新・謎解きエリアからは闘技場エリア、ボス部屋と続く。
闘技場エリアでは鉄製のハニワゴーレム、ボス部屋ではドラゴンゴーレムと戦うことになる。
「トラップ埋め込んでて火を噴けたりするのよね、ドラゴンゴーレム」
「ボス部屋の中限定だけど、そもそもボス部屋からボスは出ないから問題ないな」
「まぁ、本物のドラゴンには及ばないけど」
「『火焔窟』最終ボスのレドラと比べたら大抵のドラゴンが及ばないからな?」
7F-3のボス部屋を突破すれば、いよいよコア部屋だ。
だがそうして突破したコア部屋に置いてあるのはダミーコア。
まだ奥に隠し部屋があるのだ。ダンジョンコア=最奥、という先入観を利用したトラップである。
しかも、このダミーコア部屋。実はボス部屋となっている。……ボスは親指サイズのオリハルコンゴーレムだ。ロクコ発案、採用した。
しかもしかも、このオリハルコンゴーレムは部屋の天井タイルの裏に隠れており、見つけるのは非常に困難。仮に見つけても倒すのは更に困難。倒しても隠し扉の鍵が開くだけでその扉が見つけられるかは別の話。
「ミニサイズのオリハルコンゴーレム……これは我ながら凶悪なアイディアよね!」
「しかも隠れるから見つけようにも見つけられない、そもそもボス部屋だと気付けるのかどうかだな」
仮にオリハルコンゴーレムを撃破して隠し扉もみつけたとしよう。その奥の部屋にはコアが置いてあり、こんどこそダンジョンコア――と思わせておいてそれもまたダミーコアだ。
隠し部屋を見破り、あれほど凶悪なボスを倒したという達成感で今度こそ本物だと思わせるトラップである。
これが今の『欲望の洞窟』の全貌であった。
……え、本物のダンジョンコアはどこかって?
実はこの間までは闘技場の照明に紛れさせてたんだけど、レイとエレカの発案で先日移したんだよね。闘技場だと俺の【エレメンタルショット】みたいなのの流れ弾が飛んでいかないとも限らないので。
……えーっと、今は『ツィーア山貫通トンネル』の途中に作った隠し部屋に置いてあるんだったかな……トンネルの通路の、何でもない天井に隠して作った部屋。その奥に。
しかも同じように作った隠し部屋がいくつもあるのだ……もし隠し部屋がバレてもすぐには見つけられない。時間稼ぎをしているうちに「キャスリング」で『欲望の洞窟』最奥のダミーコアと入れ替えることも可能だ。
というわけで、そんな2重3重の罠により ダンジョンコア(ロクコの本体) は守られているのだ。
一通り見直したところで、ロクコがデレッと顔をにやけさせた。
「えへへ、ケーマ、愛してるわ」
「お、おう。なんだよ急に」
「だって、このダンジョンの攻略難度は愛の証でしょ? こんな徹底的に守られて、嬉しくないコアがいる訳ないじゃない」
そういうもんなのだろうか? ……実際、間違っちゃいないけども。
「これなら、このダイード国の王子とかいう連中がいくら凄腕でも安心よね」
「そうだな。放置でいいか」
……というか、挨拶くらいしといた方が良いのか?
いや、お忍びなら下手に声をかけない方が良いだろうから止めとくか。