軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:魔国のお土産

Case:ネルネ

魔国からケーマの持ち帰った魔道具の本。

ネルネはそれをゴレーヌ村鍛冶屋カンタラ(魔道具作りの先生でもある)と一緒に読んでいた。

「いやー、やばいですねー、これー」

「ケーマ殿のお土産、とんでもないな……」

魔国は帝国よりも魔道具が発展している。それは実用のためひたすらに競争を繰り返した結果である。

ケーマが闘技大会で3位となって手に入れた魔道具の本。

それは具体的に言うと、日用品や魔道具の設計図であった。

しかも最先端の魔道具のものなども含まれている。さすがは闘技大会3位賞品。

……地味に写本が皇帝に献上されたとかいうレベルの代物で、帝国では最先端の先を行く内容である。これを超えるのは独自の次元に居る勇者工房くらいなものだ。

「しかもー、魔剣を作ろうーって試みがー、あるようですねー?」

「ああ……こいつはわしの研究が相当捗るな……火の玉を飛ばす魔道具! そういうのあるのか! 燃費は悪そうだが」

「剣を振ったら火の玉を飛ばす剣とかカッコ良くないですかー?」

「それいい、分かる……!」

というわけで、ざっとめぼしい所を見たのち、ケーマのお土産本は1冊だけではなかったので、ネルネとカンタラはそれぞれで好き勝手に本を読むことにした。

「氷ー……冷気ー……ほほうー。これは応用がー効きそうですー」

「魔力塊の射出魔法陣……いいなこれ、普通に魔石を投げてるようなものだが。自己魔力で発動できるなら魔法を覚えてないやつでも魔法を使えるようなものだぞ」

そうこうして読んでいると、だんだんと作りたくなってくるのがクリエイターの 性(サガ) というもの。魔道具試作用の魔法陣を刻む銅板を取り出し、本を見ながら鉄の針でガリガリと魔法陣を刻み始めるネルネとカンタラ。

ワタルが見たら嫉妬しそうな息の合い具合である。

尚、カンタラは鍛冶屋なので銅板はいくらでも用意できるし、失敗した銅板も溶かして再利用できる。魔石については鍛冶屋としての稼ぎで冒険者やギルドから買ったりしていて、いつでも実験できる環境を作っていた。

ネルネも、研究室でやるならともかく、ここではその環境に甘えて魔法陣の実験をしたりしている。

「よし! この火の玉を飛ばす魔法陣を自己魔力で発動できるようにしてみよう!」

「じゃあ私はこの氷を作る魔法陣を弱めてー、冷気を生み出す魔法陣にしてみますー」

「ほぉ。そりゃ鍛冶をするときにあると快適になりそうだ。出来たらおしえてくれ、わしも参考にする」

「自己魔力で火の玉飛ばす魔法陣もよろしくですよー」

剣の柄に取り付けるモジュールに埋め込めば、魔法を放てる魔剣になるはずだ。二人はガリガリと銅板を削って魔法陣を描いていく……その研究は、とても楽しそうであった。

Case:キヌエ

キヌエはイチカから魔国料理のレシピを貰っていた。ついでに食材もだ。

ついでに【収納】に入れて時を止めておいた、できたての料理現物もある。

「ほほう、これが魔国の……ウドンですか」

「せやで。ただ帝国の小麦粉とは質っちゅーか、使い勝手が違うてご主人様が言っててな、魔国の小麦粉も貰って来たで」

「薄力粉とか強力粉とかいう区分ですね。マスターから貰ったレシピに載っていました」

イチカの説明を聞き、もぐもぐとウドンをフォークで食べながら自身の知識と照らし合わせるキヌエ。料理はお家妖精であるキヌエにとって掃除の次に大好きな家事なのだ。

(勿論、マスターであるケーマからは宿やダンジョン奥のお掃除も任されているので不満は一切ない)

「へぇ、ならご主人様に頼めばこっちでもウドン作れるっちゅーこっちゃな」

「……別に、マスターに頼まなくても私がDPで出せますよ? イチカ教官」

「せやった、キヌエもカタログ使えるんやった」

イチカはあくまで奴隷のため、例えダンジョンの幹部でもメニュー機能が使えず、DP交換はできない。DPの行使についてはケーマに申請してイチカ用に取っておいてあるDPを使ってもらう必要があった。

だがあらかじめキヌエにDPを渡しておいてもらえばケーマを通さず食べ物関連のDPを使うのに便利だろう。今度そうしておいてもらおう。

「まぁ他にもいろいろ魔国で見つけた食材とかデザートとか持って帰ってきたから、参考にしてぇな。ホラ、この温かくて甘いデザートとか中々のモンやで? ほら一緒に食べよ」

「な、なんですかこのオレンジ色のねっとりしたの……あ、ニンジンですか。何かと思いました」

もぐもぐと魔国のデザートを一緒に食べるキヌエとイチカ。

帝国ではめったに食べられない料理やオヤツに、キヌエも内心大喜びであった。

Case:レイ

ダンジョン管理に励むレイと、その部下の妖精エレカ。その手には、ニクから貰った魔国のお土産の包みがあった。

「エレカ、ニク先輩からお土産を頂きました」

「お土産ですか? レイ様」

と、レイは布に包まれたお土産を取り出す。それは、ニクが持ち帰ってきたボロボロのジャージであった。

「……これは?」

「マスターの使用済みジャージです。どうやら魔国で激しい修行に励まれたようで、使用済みのジャージがいくつか入手できたそうで。お裾分けだそうです」

「なるほど?」

首をかしげるエレカ。 ケーマ(ダンジョンマスター) の使用済みのジャージといわれても、エレカにはピンと来なかった。が、敬愛する上司であるレイはとても嬉しそうにそのジャージを抱きしめているので、水を差すような真似はしないでおいた。

「ふふふ、さすがニク先輩。これは捗ります。激しい修行により汗が染み込んでいますよこれは……!」

「よかったですね、レイ様」

「はい。とても! あ、そうだ。私の部下であるエレカにもこの喜びを分け与えるべきでしょう。……上と下、どちらが良いですか?」

と、断腸の思いで部下にケーマの使用済みジャージを選ばせようとするレイ。

しかしエレカには特にそれが欲しいという気持ちはない。むしろなんでそんなにジャージを喜んでいるのか、理解が及ばなかった。

「はっ! そうだ良い事を思いつきました。私が以前マスターから下賜されたジャージを与えましょう。こちらの新鮮な使用済みジャージは私がいただきます」

「!」

ぴこん、とエレカの羽が動いた。

「確かそれは、レイ様が抱かれ枕を作成したものでしたか」

「はい。私が堪能済みのものですが、エレカがよければ――」

「ぜひその方向でお願いします」

食い気味でエレカは頷く。ケーマのジャージは要らないが、 敬愛する上司(レイ) の使用済みとなれば話は別だった。

「わかりました。では私の部屋の抱かれ枕からジャージを交換してきますね」

「はい。楽しみにしています、レイ様」

……実に、よく似た上司と部下であった。

一体誰に似たというのか……と言われれば、勿論それは 一番上(ダンジョンコア) の名前が挙げられるのではなかろうか。