作品タイトル不明
ただいまゴレーヌ村
ハクさんに『魔国の文化についてまとめて書いておけ』と言われてしまった。
まぁ一応留学って体裁だったからね。そのくらいはしておこう。
「そういえばすっかり忘れてたけど、3位の賞品ってなんだったんだ、ロクコ?」
「魔道具の本ね。私も色々買っておいたけど」
「……そういえば土産買うのとかすっかり忘れてた」
「だろうから、買っておいたわ」
……よくできた奥様だよ、ホント。
*
『白の砂浜』を経由して、俺達は無事、ゴレーヌ村に帰還した。
今回もこっそりの帰還である。慣れたものよ。フフフ……
「いやー、帰ってきたなぁ、ゴレーヌ村! 長い留学やったわー!」
「はい。有意義な修行でした」
久々の村の空気。
ニオイが故郷って感じがする……
……
ああ……生きて帰ってこれたんだな……!
「ケーマ、なに感慨深そうに突っ立ってるのよ」
「実際感慨深いんだよ。無事生きて帰ってきたうえに『神のパジャマ』、さらに神の寝具2つの使用権をゲットしたんだぞ。最上通り越して超上の結果だぞ」
「まぁ、そうね。よくやったわね」
「しかもハクさんに顔を見せて無事帰ってこれた……!」
「それは大丈夫だって言ったじゃないの」
いや、ロクコがあんなに成長しているとは予想外だった。もはや俺を越えたと認めても良いかもしれない……特にハクさん関係。
「ロクコのお蔭で無事帰ってこれたよ……お礼に何かしようか?」
「あ、良いの? じゃあメロンパンに生クリームたっぷりのやつがあるんだけど、それいっぱい食べてもいいかしら」
「おう。好きなだけ食べていいぞ」
「わぁい、やったー」
……
なんか、ちょっとロクコが無理してる気がするのは、ツッコミ入れない方が良いんだろうな。うん。
ロクコが頑張って自重しようとしてくれているのに、俺がそれをぶち壊すわけにもいくまい。
「ロクコ様ロクコ様」
「ん? なぁにイチカ」
「今夜はウチと一緒に寝ます? ギュってしたりますよ」
「……そうね、お願いしようかしら。抱き付きたい気分なのよ」
というわけで、俺達はゴレーヌ村の日常に戻った。
本当に、収穫の多い留学だった……また行きたいかと言われるとそれほどでもないが。
長期間ダンジョンと村を空けてもちゃんと回してくれた部下たちに感謝だな。
「ご主人様、マイの所に連絡入れておきますか?」
「……あー、マイオドールか。そうだな。頼むよニク」
『神の枕』の使用権のこともあるし、ちゃんと帰ってきたことも報告しておこう。
対価でなにを要求されるかは要相談だな。
*
しばらく休んでから村の方に平然と顔を出すと、「あれ、新婚旅行から帰ってきてたの? おかえり村長」とか「ご旅行はお楽しみでしたね!」とか「お土産は? ない? まぁイチャイチャしてて忘れてたなら仕方ないか」とかとか声をかけられる。
うん。
俺とロクコが既に夫婦という前提だね君たち? ダメだよそんなこと口走ったら。この村にはハクさんの監視も結構入り込んでるんだぞ?
「ってぇ、ケーマさん! 帰還したならちゃんと報告してくださいにゃ!」
そう、このゴレーヌ村出張中の帝都冒険者ギルド長、ミーシャみたく。
「すまんミーシャ。すっかり忘れてた」
「まぁいいにゃ、毎日スイートでごろごろしてハンバーグやらお魚やらいっぱい食べれたから許したげるにゃー」
俺の肩に腕を回してくるミーシャ。ハハハこやつめ。
「で、ロクコ様に手ぇ出したの?」
ハハハハこやつめ。ダイレクトに聞いてきやがった。目が赤く光ってるのはスキル使用してんなコレ。
「出してないよ」
「にゃはは、ケーマさんの意気地なしー」
「ミーシャお前それハクさんの前でも言える?」
「ごめんなさいでした。あ、人間牧場行った? あそこは中々の娯楽施設なんだけど」
娯楽施設なの? 人間牧場。……あれか、普通に牧場みたいな感じなのかな。
乗馬体験ならぬ戦闘体験コーナーとかあったり、ふれあいコーナー……いやそれはそれでアウトだな。うん。
「行ってない。というか、ミーシャは魔国に行ったことあるのか?」
「まぁにゃー。冒険者ギルドとハンターギルドは提携してるからその都合もあってちょいちょい行ってるにゃ」
「ミーシャ……お前……仕事してたんだな……?」
「ケーマさん? 私これでも白の女神直属の優秀なギルドマスターなんだけどにゃー?」
お仕置きされてばかりいる気がしてならない。
ミーシャはそんな俺の考えを読んだか知らないが、俺の頭を抱き込んでうりうりとつっついてきた。まるで男友達のノリである。色々当たってるが気にしないものとする。
……確かにミーシャは魔国によく行っているのだろうな。この距離感やスキンシップ、魔国ではよくある光景だ。体育会系というか、細かい事を気にしない魔国系?
「ま、無事帰国してきてなによりですよ。あ、ケーマさんの留守を狙ってきた暗殺者とかはレイちゃんに引き渡しといたから」
「おう。ありがとな……え?」
「そんじゃ、私は帝都に帰還するとしますかにゃー。あー、おうちのベッドでちゃんと寝られる自信がないにゃぁ」
さらりととんでもないことを言って帰ろうとするミーシャを、俺は呼び止める。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。暗殺者って?」
「え? ほら、ご存じ光神教の過激派ですにゃー? レイちゃんを狙ってたみたいだけど。光神教、他の宗教を認めないから聖女の暗殺とか普通にするんだよね」
ご存じとか言われても知らんがな。マジか、レイが命を狙われたりしてたのか……
「雑魚ばかりでちょちょいのちょいだったからへーきへーき。ま、この村の平和を守るのがハク様から頼まれた本来の仕事だから、礼を言われるほどの事じゃないよ」
「いや、それでも助かったよ。ありがとな」
「あ、じゃあケーマさんケーマさん。お礼にスイートの寝具欲しいにゃー! なんつって!」
「しょうがないなぁミーシャ。ま、ミーシャの頼みだ。オフトン教に入ってくれるなら良いよ」
「やったにゃ! 言ってみるもんだにゃー、オヤスミナサイ!」
おい。白の女神の直属の部下がオフトン教入って良いのか。冗談のつもりだったのに……ミーシャは白神教の幹部ってことじゃないのか? まぁ……言わなきゃ問題ないのかな……?
「ご安心を。白神教とオフトン教は仲良しこよし、帝都でも宣伝しまくってあげるにゃー!」
いいのかよ。まぁ、問題があるようならハクさんが止めるだろう……
「あ、一番高い聖印買ってやりますよ? お金がいい? DP払いがいい?」
「……売ってる中だと金の聖印だけど、なんか別の金属使ってみるか?」
「じゃあオリハルコン! 防具にもなるかにゃー、穴空いてるけど」
「高いぞ……? っていうかオリハルコンの聖印とかいくらで売ったらいいか分かんないぞ」
「あ、用意はできるんだ……さすがに冗談のつもりだったんだけど」
「DP用意してくれるならな」
結局ミーシャには作り置きしておいたミスリルの聖印を売りつけることにした。結構高く買ってくれたので、収支はプラスだった。
さて、レイが狙われた件についてもうちょい詳しく教えてもらおうかな。
「といっても、大したことはないにゃ。ダンジョンの機能で侵入者もバレバレだし、防衛に支障はないはずですよ。それにケーマさんがいたら警戒して襲ってくることもないだろうしにゃー」
「そうなのか?」
「オフトン教教祖がドラゴンを従えたって情報が出回って、それがいない間に勢いを削りたいって狙ってきてただけだからね。今後はケーマさん本人が暗殺者に狙われるかと思う次第?」
「え、俺暗殺者に狙われるの?」
……寝る時はダンジョンの奥に行った方が良いのかなぁ。