作品タイトル不明
さよなら魔国、また来て刺客。
ついに手に入れた『神のパジャマ』。早速だがこれを使ってみようと思う。
俺は宿に帰るなりウキウキ気分でワタルから手に入れた『神のパジャマ』を取り出した。
ワタルから正式に献上されたのでちゃんと使えるはず……まぁ『神の毛布』と併せて使えば仮に天罰が落ちても大丈夫、きっと。おそらく。神の力で?
さっそくパジャマに袖を通す……おお、なんというか、着心地が……何もきてないと錯覚しそうになるくらい体を動かしても違和感がない。関節の動きを一切阻害しないとかコレ服として多分最高級なのでは?
と、ここでロクコが『神の毛布』を手に入ってきた。来たか、まってた。
「ケーマ、それが神のパジャマなの? なんかいつも着てるジャージに見えるんだけど」
「ああ。外見は勝手にお気に入りな寝間着に変化するらしい」
「へー! 面白そう。ケーマ、私も着てみたいんだけど!」
「まて、ロクコ。お前の前で着替えろと? そして俺の前で着替える気?」
「あっ、そうね。夫婦といえどそこはちゃんとしとかないとね。ケーマ?」
だから夫婦じゃないって……と、ロクコも冗談で言っているのだろう。くすくすと笑っている。そして、ふいに少し寂しそうな顔をした。
「……この留学が終わったら、ちゃんとするから。元通り。前の通り。……だから、今だけよ。いいでしょ? ケーマ」
「ロクコ?」
「分かってるわよ、ケーマ。お姉さまの目が届かない魔国だから、いっぱい添い寝もしてくれてたんでしょ? ケーマはお姉さまが怖いんだものね」
「……」
急にしんみりとするロクコ。……いやまぁ、確かに魔国にきてハメを外してしまったところはあるけども。そういうつもりは……なくは無いか。うん。
「そんなこと考えてたのか」
「……少なくとも私、この留学では間違いなくケーマの奥様のつもりだったわよ? 悪い?」
「悪かないさ。……あー、その。うん……まぁ、俺も、ロクコが妻だと嬉しいし」
「知ってる」
「そうか。知ってたか」
ふふ、と控えめに笑うロクコ。
「ダンジョンの領域内だったら、ハクさんにバレないんじゃないか……?」
「……いいの? そんなこと言われると、帰っても夫婦っぽいことしたくなっちゃうわ」
「まぁ、その。バレない程度になら」
俺がそう言うと、ロクコがぽふっと俺の胸に顔をうずめてきた。
「……」
「ロクコ?」
「そういうこと、言うからぁ……もぅ……」
言いながら、何故か『神の掛布団』を取り出すロクコ。うん?
「……掛布団と毛布を両方使えば、万全でしょ?」
「あー、そうだな。パジャマがダメだったとしても2対1で掛布団と毛布が勝てるよな」
「うん。だから、安心して寝ましょう? さ、早く。ケーマ」
ぐいぐいと押されて、オフトンに向かう俺。急かされつつ横になると、ロクコが当然のように添い寝してくる。まぁ、うん、妻なので? 文句はないよな。
「子守歌歌ってあげましょうか? 教えてもらったの」
「ああ、その、……うん、それじゃ頼もう、かな?」
「うん……~♪」
ロクコが俺のすぐ隣で、かすれるようなウィスパーボイスでメロディーを紡ぐ。
翻訳機能が働いていないのか、何と歌っているのかは分からない。が、ゆったりと波のようなテンポで、眠気を誘うメロディー。
ロクコの可愛らしい歌声に誘われ、俺は眠りに落ちた。
起きると、もう朝だった。そして、ロクコを抱き枕のように抱きしめていた。
「ぐっすり寝たなぁ……」
「ん……おはようケーマ」
腕の中でもぞもぞと身じろぎするロクコ。
「……もう、魔国にいるのも終わりね。大会も終わったし、目的も果たしたし。留学期間もいっぱいいっぱいだし」
「……そうだな」
大会を勝ち進んで上位大会に出ることになっていれば、宿泊費等を魔国もちで滞在期間が延長だったところだが。
「昨日確認したけど、帰りはワタルの護衛で帰って来いって話だそうだ」
「……ワタルが上位大会行ってたらその分延長してたのかしら?」
「あり得るなぁ……」
だとしたら、優勝してもらっても良かったかもしれない……パジャマはセバスから交渉でなんとか手に入れるとして。……でもワタルだからこそネルネを対価にあっさり交渉成立したからな。
まぁ、名残惜しくはあるが、今回はこれで良かったということにしよう。
「しかし神のパジャマの効果が結局分からなかったな……あ」
『父』に直接聞いてみれば確実に分かることだった。と、俺はメニューを開く。メール機能の出番だ。と、……そこには既に『父』からの 手紙(メール) が届いていた。そういえば昨日から開いてなかったな。
えーっと? 『ケーマ君、パジャマを手に入れたみたいだね! あとロクコとの進展があったご祝儀ってことで、本来GP使って聞いてもらいたかったけどパジャマの効果も教えてあげるね!』……え、見てんの? あとGPが何気に32になっていた。
で、そこに書かれているパジャマの効果だが――
神のパジャマ。これは他の寝具にある『回復』と『着心地がすごく良い』という他に、『寝ている間に攻撃されたら自動で反撃をする』という効果を持つ神具だった。……俺も布の服ゴーレムに似た機能を付けた覚えがある、少し親近感。
でもこれ『父』的には微妙に失敗した点があるらしい。
これ、『神のパジャマ』の他に『神の毛布』を同時に使った場合、毛布の『外部からの攻撃無効』の方が優先されるようで、基本的に発動しない効果になってしまうらしい。
まぁ毛布の内部で攻撃された場合は一応有効なのだが。
「……あー、それで私こうしてほぼ動けないことになってるのね……?」
「え、寝てる間に攻撃でもしたの?」
「ほっぺたつついたら抱き付きで返されただけよ」
なんという自動反撃。そういうシステムなわけね、なるほどなぁ。
……ん? ということは、このパジャマって『同衾した相手から攻撃された時に対応するための寝具』ってことになるな?
そして神の寝具は創造神のために『父』が作った……つまり、創造神はお布団に連れ込んだ相手から攻撃される恐れがあった説……!?
「……浮気……いや、暗殺者でも相手にしてたのかね、創造神様は」
「何の話? ケーマ」
「いやなんでもない」
とりあえず俺達は起きて帰り支度をする。
この町から直接帝国に帰るとのことなのでアイディとセバスに挨拶しに行ったが、上位大会に出場するから「またね。お手紙出すわ」とあっさりした挨拶だけして鍛錬に行った。
情緒? そんなものを魔国で求めてはいけない。なぜなら魔国だから。だって魔国だもの。
そして、ワタルが護衛に付く以上、帰路の安全は保証されているようなもんだった。
……ワタルからの からかい(・・・・) に俺とロクコは頬を赤らめて目をそらすことになったのはここだけの話。おいワタル、夫婦ネタはそろそろやめて。 帝国国内(ハクさんち) ではシャレにならないことになるから。マジで。
ともあれ、だいぶ長い間滞在していた気もするが、俺達は魔国への留学を終えたのであった。
あ、ワタルとの戦闘を目当てに何回か襲撃があったことだけは言っておこう。