軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本戦大会(4)

そしてワタルVSアスラ戦――これは、危なげなくワタルが勝利した。

これでアスラ選手を除く3人が、全員2勝1敗。しかもそれぞれが順繰りに敗北宣言をして負けている。

「状況は、アスラ選手を除いた以外最初に戻ったと言えるだろう……なぁ564番。これどうなるんだ?」

「うむ、3人が同勝利数となると……そいつらで再度決戦だな! 喜べ、まだ優勝の目はあるぞ!」

「……ふーむ、再試合か」

だが、それでも俺がワタルに降参し、セバスが俺に降参し、そしてワタルがセバスに降参するのであれば……何度やっても同じ結果にしかならない。まるでジャンケンのようなあいこの連続、千日手。

「どうするんだコレ。終わらないだろ」

「む、簡単だろう? 全員まとめて戦って、生き残った順に順位を付ければ良かろう。どいつが勝っても同じことだしな!」

「……あー、そうくるんだ」

既に一応同じ勝敗の数となっているのであれば、誰が勝っても同じと言える。ならバトルロイヤルで順位を付けたところで問題もない。

1人だけ落ちたアスラ選手には悪いが、今度こそ真の決勝戦と言ったところか。

「ワタルとセバスが潰しあってくれれば、勝者に優勝を譲るところなんだけど……」

「何を気弱な! ここまできたら優勝するしかありえんだろう!?」

「だから準優勝の賞品狙いだって言ってるだろうが! ああもう……」

先ほどのワタルの様子を見るに、俺に本気でぶつかりたいという気配がプンプンする。

……セバスと共闘して、ワタルを先に排除。しかる後に降参して準優勝。これが一番俺に都合の良い展開と言えるのではなかろうか。

「っと、そうと決まればセバスと話を付けておかないと――」

「む? あの小僧なら勇者と何やら約定を取り付けていたようだぞ? 試合中に。見ておらんかったのか?」

「……」

さすがワタル、手が早い。

というわけで、碌に交渉をする時間もないまま再びの決勝戦となった。

そして魔国大会において前代未聞の、降参し合いでの再決勝戦という事態。これに、貴賓席におわす大魔王様からありがたいお言葉がかけられた。

「――貴様ら。全力で戦え。降参は認めぬものと心得よ」

くおおおお、この、余計やりにくくなったぁああ! 大魔王様のお隣のアイディのニコニコ笑顔は「これで本気で戦えるわね? 礼は不要よ」とでも言ってるかのようだ。

それならいっそ、優勝賞品を『神のパジャマ』にしてくれればいいのに! そしたら本気で優勝狙ってやるっての!

大魔王様のお言葉に、決勝で即降参するというつまらない試合を見せられていた観客たちは「わぁああ!」と喜んでいる。くそう、アスラ選手相手にはちゃんと戦っただろ! えぇいあれだけじゃ不満なのか、この戦闘大好き連中め!

「ケーマさん! 大魔王さんもああおっしゃってくれたので……本気、出してくださいね!」

「おいケーマ。大魔王様からのお達しだ……分かってるだろうな?」

ワタルとセバスは試合開始位置に向かう。

俺も自分の開始位置について……さーて、どうしようかと空を見上げた。

「始めェ!」

と審判の声。直後に、ワタルとセバスが同時に俺目掛けて走ってきた。

……おそらく事前の密談の結果、2人して俺を狙うことにしたのだろう。

「セバス! 共闘してこの勇者を倒さないか?」

「断る」

「チッ……じゃあワタル。共闘してそっちの執事を片付けてじっくり勝負といかないか?」

「お断りです。ケーマさん僕と二人で残ったら全力で負けに行く 心算(つもり) でしょう?」

予想通りとはいえ、断られてしまった。

振り下ろされる剣、そして剣、さらに攻撃魔法。だが、『神の毛布』の力はまさに神。俺が不安を感じないレベルで結界のようなものが展開されているのか、1mくらい先で攻撃が止まるし、消える。俺にいくら攻撃しても攻撃が通らない。

後ろに回り込まれても、真上から岩を落とされても、つるんと滑るように攻撃が俺を避けていく。

「やはりだめか……ふむ」

セバスは一旦俺から距離を取るが、ワタルはしつこくも攻撃を続けてくる。

「くっ、ケーマさん、凄い防御ですね!? なんですかこれ!」

「……ロクコから借りた愛の力とでも言っておこうか?」

「愛! さすがケーマさんです! いやこの場合はロクコさんの方ですかね? ……それじゃ僕も本気でやらせてもらいますよ!」

よく考えたらワタルが満足するまで攻撃させれば、どうにかこうにか準優勝に納まるんじゃないかな。……あれ? でも待てよ、大魔王に「降参」を封じられている以上、どうやって負けたらいいんだ……?

「はぁああああ!! 【ギガスラッシュ】! 【メテオクラッシュ】! 【真空切り】!」

うーん、少なくとも『神の毛布』を着ている以上、毛布を脱ぐのは同じく禁止されている「手加減」にあたるんだろうか。

「【チャージ】! 【チャージ】! 【チャージ】! ……【オメガブレイク】!!」

いやまて! この『神の毛布』はそもそもロクコからの借り物で俺の力ではないとも言えるのでは? つまり『神の毛布』を脱ぐことは手加減ではなく、俺本来の力で戦うという意思表明でありつまり「本気」という事になるのでは?

「【グランドボム】! 【ライトニングエッジ】! ……【 充填解除(チャージ・リリース) 】、降り来たれ雷の柱【ライトニングピラー】! 燃え上れ炎の柱【フレイムピラー】! 生え出でよ土の柱【アースピラー】!!」

よし、どちらか片方が負けたら本気を出す 体(てい) で毛布を脱いで負けよう。そうしよう。

「はぁー、はぁー……け、ケーマさん、な、なんですかその、結界……! びくともしないんです、けどっ!?」

「ああスマン考え事してた」

「……渾身の攻撃を上の空で弾かれていたんですか僕は」

気が付けば、周囲の地面がすごいことになっていた。抉れたり焦げたり柱が突き出たり。観客席の手前、闘技場の壁にも傷が入っていた。まるで巨大な獣が怒りに身を任せて大暴れした跡のようだ。

一方で俺の回りだけ、半径1mくらいは綺麗に残っている。

「……勇者って凄いなぁ?」

「嫌味ですか。いやぁ、さすがはケーマさんです」

「これについては俺じゃない、ロクコの愛が凄いんだ」

「……なるほど」

そういやこの被害でセバスは大丈夫なのか、と思ったが、ちゃんと攻撃を避けていたようだ。

「セバスさんは、僕がケーマさんに勝つまで共闘することが決まっていますからね。なぁに、別に僕がここで力を使い果たしてセバスさんに負けて、帝国の威信が少し落ちるだけです」

「……それはマズいんじゃないのか?」

「はっはっは! 僕がまた戦争なりで活躍すればすぐに取り返せる話ですからね! それに、僕が準優勝になったら……ケーマさんが欲しがっていた、『神のパジャマ』……でしたっけ? アレが僕のものになっちゃいますね? さぁ、僕を倒すために本気を出していいんですよ?」

「ほぉー……煽るね、ワタル」

既に呼吸も整い、ワタルは再び剣を構える。

というかワタルは、俺に本気を出させたいがためにどこまでする気なんだろうか。

仕方ない。少しだけ付き合ってやろう、そうしてワタルをのしたら、セバスに良い感じに負けてしまおう。

「くらえ、【エレメンタルショット】!」

「ふんっ!」

カィン! と、ワタルは【エレメンタルショット】を剣で弾き、防いだ。

「ハク様から貸与されている聖剣『エア』は伊達じゃないですよ」

「聖剣、そういうのもあるのか」

「ええ。……しかしその魔法、ここまでの試合でも見てましたがとんでもないですね……魔力を纏わせた聖剣で弾くのが精いっぱいですか」

魔剣と何が違うのかな、と思いつつ、ハクさんから貸与されてるってことは魔剣の一種なのだろうと推測する。……【エレメンタルバースト】なら弾ききれないだろうが、下手したらワタルを殺してしまう可能性もあるな。いや、ワタルなら【超幸運】で命までは大丈夫だろうか。

と、そこにセバスがやってきた。特に警戒をした様子もなく、すたすたと俺に近寄ってくる。

「おいケーマ。少し良いか」

「ん? どうしたセバス」

無防備に近寄ってくるセバスの言葉に、俺は普通に耳を傾ける。

「ずっとその毛布の攻略方法を考えていたんだ」

「……は?」

「眠れ。安らかに――【スリープ】」

セバスがそう呟いた瞬間、俺は急激な眠気に襲われ、意識がブラックアウトした。