軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本戦大会(1)

そんなわけで、本戦が開始された。

開会式を終えての第一試合、いきなり俺の出番であった。

御前試合と言うべきか、この闘技場にはばっちり貴賓席が用意されておりそこに大魔王こと6番コアが鎮座ましましている。高い位置から舞台全体を見下ろせる観覧席だ。

……アイディとロクコもそこからの観戦である。

「ケーマ、がんばれー!」

大魔王様の隣でもブレないなぁロクコ。6番コアは腕を組んで悠々と舞台を見下ろしている。

その目線の先には俺と、その対戦相手。俺の相手は、尖った犬歯の目立つ空手家だった。……これは多分吸血鬼だな。日の光は克服しているようだ。

「おい帝国の田舎者。大魔王様の御前で無様な試合をするんじゃないぞ?」

「ん? あー、そうだな。精々頑張ってくれ。お前がな」

「は!? 良い覚悟だ! 最初から本気で行ってやろう!」

……挑発されたから挑発し返したんだけど、煽り耐性低くない?

あ、いや、単に激励だったのかもしれないな。それを嫌味で返されたから怒った素直な人、うん、異文化。

まぁそんなわけで怒らせてしまった吸血鬼の人と俺は、闘技場の舞台で向かい合い――

「始めッ!」

「うおぉおおおお!!」

「【エレメンタルショット】」

「ぬお!?」

――初手、【エレメンタルショット】。俺の勝ちパターンである。

だが俺の放った光線は、空手家吸血鬼の包帯を巻いた拳に弾かれてしまった。カィンッと何か硬い物がぶつかり合う音がして。

恐らく拳に魔力を纏わせているのだろう。そうでなきゃ手に穴が開いていたはずだ。

「ぐ、我が魔拳に響く、だと!? なんだその魔法は! もっと撃て!」

「えぇぇ……」

そして足を止めておかわりを要求してくる空手家吸血鬼。何なのコイツ、嬉しそうな顔しやがって。……さっき怒ってたのはどこへ行ったんだ?

俺は要望通りに【エレメンタルショット】を連発してやることにした。

「勝者! ケーマ・ゴレーヌ!」

で、結局持久戦の様相をみせたものの、俺は実質無限に撃てるので当然のように押し切った。結局俺は一歩も動かなかったし空手家吸血鬼が【エレメンタルショット】を楽しそうに弾くだけの試合? になってしまった。

吸血鬼要素どこにもなかったな……いや、魔力の高さがそうだったのか?

「いやぁいい鍛錬になった。ケーマ殿と言ったか、今度また我が魔拳に打ち込みを行ってはもらえまいか? 我が拳に穴が開くなど何年ぶりであろうか」

「え、いやです」

鍛錬って言っちゃったよこの吸血鬼。試合はどうした。

「試合? 我が魔拳の堅さと、それを上回るケーマ殿の魔法の白熱した戦いであったな!」

そういうもんなのか。

で、その後、連絡先が書かれた名刺みたいなメモを強引に渡されつつ、俺の第一試合は終わった。

控室に戻ってしばらくの後、ワタルの試合が始まった。

闘技場では、控室からでも謎のモニター(恐らくダンジョン機能のモニター)によって試合を見ることができるのだ。

ワタルの相手はエルフだった。弓矢で牽制しながら魔法で仕留めるスタイルの、単体で戦える魔法使い。

しかも弓矢だが魔道具を使って矢を補充しているのか、矢切れの心配も無いようだ。何あれ欲しい。まぁ矢は数秒後に消えてるけど。

「おう帝国の魔法使いさん。あの矢筒が気になるのか?」

そんなに物欲しそうな顔で見てたのだろうか、出場者のアラクネさんが話しかけてきた。

「アンタなら魔法撃ってた方が強いだろうに」

「仲間に持たせるのにどうかなって思ったんだよ。アレはなんなんだ?」

「あの矢筒は魔力の矢筒って魔道具だな。帝国には無いのかい?」

どうやら魔国の錬金術師が作った魔道具らしい。魔力を込めると矢が生まれるそうな。ただし、この矢は5秒で消えるとのこと。

……うーん、凄いな。材料は魔力なのか?

「まぁ実用性はさほどでもないね。闘技場みたいな狭い場所でなきゃ敵に届く前に消えちまうから。狙ってる暇もない」

「そうなのか」

……うちのダンジョンの罠、クロスボウに組み込んだら凄く便利そうだなぁ。矢を補充する必要もないし。狙いとかつけないから最大限活用できそう。

「ダンジョン産のだったら倉庫に入れてある矢筒を召喚するっていう『倉庫矢筒』なんてのもあるね。ただコイツの場合は倉庫から離れるほど魔力消費がバカにならなくなって結局使い物にならなかったりする」

「……なんか不遇だな?」

「『魔弓』の二つ名で有名な魔族が持ってる『無限矢筒』なら、使う端から矢が補充されるって話だけどね。これは魔族じゃないと使えないらしい」

あ、それは矢筒の魔道具と言ってDPで矢を出してるヤツじゃないかな。魔族ってダンジョンコアのことだって話だし。

……そうか、自分の矢筒を魔道具と言い張るために不遇な矢筒を流通させて、という可能性が……?

「ま、それにしてもさすが にやけ面の悪夢(ナイトメア・スマイル) 。全部余裕で防いでやがる」

「あー、さすがワタルだなぁ」

モニターを見ると、ワタルは微笑みを浮かべたまま全ての矢を剣で打ち払い、全ての魔法も剣で打ち払い、その身体に闘技場の舞台に一切の攻撃を届かせていなかった。

「なぁなぁ帝国の。今のあれ絶対当たらない軌道だったろ、なんで勇者ワタルは弾いたんだ?」

「楽しくなってきたからいっそ全部打ち払っちゃおうって感じじゃないか?」

「なるほど! 納得した!」

他の出場者が話しかけてきたので答えてやる。

「あの 笑顔の殺戮者(デス・ピエロ) の微笑み……心胆を寒からしめるな」

「おいおい、お前次勝ったら当たるだろうに。いまからそんな弱気でどうする!」

「うぐ、だが戦場で切り落とされたこの右腕が疼くんだよ!」

ちなみに右腕はしっかり生え治ったらしい。回復魔法も発展してる魔国。

「おい、聞き捨てならん。次に勝って 狂剣士(ファニーマン) に挑むのはこの俺だ!」

「む、貴様はガイガンキン! くくく、良いだろう。貴様など準備運動にしてくれるわ!」

そしてまた初めて聞く二つ名が……ワタル、どんだけ有名人なんだ。

というわけで、ワタルは観客に十分アピールをした上で、余裕の勝利を決めた。

……あ、ちなみにアラクネさんはセバスとの試合で敗退したので明日は観客席から応援してくれるそうな。中々いい試合だったけどやはりセバスは強かった。かしこ。