作品タイトル不明
ワタルとの再会
魔都に到着した。
え? 襲撃はどうだったのかって?
ニクとセバスに予選突破もできなかったやつらが勝てるわけないだろ。可能性があれば予選が面倒であえて不参加、というのを選ぶような強者のケースだが、あんまり強すぎるのはワタルみたいに本戦シード参加になるわけで。
「ケーマも出れば良かったのに」
「やだよ面倒臭い。ニクとセバスがやりたそうにしてたんだから、任せた方が良いだろ?」
そんなこんなで無事に魔都にやってきた俺達。
門の所で「本戦出場者が到着した」と一報を入れ、メダルを渡す。……あ、このメダルは本戦出場者の証となるものである。敗者復活戦のやつらはこのメダルを狙ってきていたわけだな、うん。もう門に渡したので襲われることもないだろう。多分、恐らく。きっと。だといいなぁ……
で、俺達は魔都の門を抜け、魔国有数と言われているホテルにチェックインを行ったところで、早速とある人物と遭遇することとなる――
「ケーマさん!」
「ん? ……ああ、ワタルか」
「お久しぶりです! ハク様から聞いてましたが、本当に来てたんですね魔国に」
――そう。勇者ワタルだ。
今回の大会、勇者ワタルも参戦するとは聞いていたが、ここで会うとは……まぁ、順当だな。大会本戦出場者の泊るホテルはだいたい決まってるし。
「 ケーマ村長(・・・・・) 、そちらを紹介してもらえる?」
「ん? ああ。こいつはワタル。勇者ワタルだ。ワタル、こっちはアイディ。ホームステイ先でお世話になってるヤツだ。失礼の無いようにな」
俺の呼び名をちゃっかり村長にしたアイディに、ワタルを紹介する。
アイディは礼儀正しくスカートの横をつまみカーテシーで挨拶した。
「初めまして、勇者ワタル。お会いできて光栄だわ」
「……これはいきなり、ご挨拶ですね」
笑顔の挨拶にワタルもにこりと笑い返す。
……うん、これ殺気飛ばしあってるな? こらワタル、こんなところで剣に手をかけるんじゃない。アイディもワタルをからかって遊ぶんじゃないよ。せめて外でやれ。
「ワタル、魔国観光は初めてか? これは魔国では日常茶飯事の挨拶だぞ」
「……頭では分かってるんですが、身体はどうにも反応してしまうんですよ」
戦争で戦ったこともある国なもので、と剣から手を放すワタル。なんて物騒な奴だと笑い飛ばしてやるべきだろうかこれは。
「それにしても意外でした。正直、魔国って敵国という認識しかなかったので、ケーマさんたちが留学するだなんて」
「あー、ロクコとアイディは親友でな。俺はその付き添いくらいに考えてくれればいい」
「なるほど……?」
不思議そうな顔をするワタル。まぁ普通に考えて帝国のお嬢様と魔国のお嬢様で親友だと言われてもピンとこないのだろう、敵国同士なわけだし。
ワタル視点では全く共通点が見えてこないに違いない。
「国同士の思惑は分からんことだらけだという事だ」
「まったくですね。戦争をしてるのに留学もしてるとか……仲が良いのか悪いのか」
腕を組み、うんうんと頷くワタル。
そこにアイディが小さく首をかしげて割り込んでくる。
「あら。戦争をする程仲が良いということでしょう?」
「……普通、戦争って仲が良かったらしないものでは?」
「なぜ? 普通、仲が良ければ殺し合いをするでしょう?」
「え?」
「え?」
うん、理解が追い付かないって顔だなワタルよ。
ちなみに俺が魔国留学において調査した限りで説明すると、
・仲が良い
↓
・腕前が気になる
↓
・戦う(楽しい!)
↓
・もっと仲良くなる
↓
・本気の本気が知りたくなる
↓
・殺し合いをする(超楽しい!)
という経緯になるらしい。
実際に死んだら死んだで「あいつの死力を尽くした強さを知ってるのは私だけ……!」というヤンデレみたいな言動が爽やかに受け入れられるのが魔国。
……さすがに事前の同意や許可がないと犯罪扱いにはなるらしいけど。大抵は闘技場でやりあうので許可や同意もあるものとなるらしいけど。
「異文化交流って恐ろしいよな。自分の常識が通用しないことも平気であるから」
「これが文化の違いってやつですか……喧嘩するほど仲が良い、ってレベルじゃないですね」
「俺達帝国の人間にとってはまさに蛮族って言葉がふさわしい気質なんだが、厄介なのは一部の魔道具が帝国より優れていたりして一概に蛮族と言い切れない点なんだよな……」
「僕としては、帝国の気質が日本に近くてまだよかったと言うべきですかねー……?」
ちなみに夫婦の場合は子供が独り立ちするまでは命懸けの決闘をしないのがマナーだとかなんとか。親子での決闘にも色々マナーがあるらしい……そんな所にマナーがある国、それが魔国。
「それはそうと聞きましたよケーマさん。出るんですよね? 本戦」
「ああ。ちょっと欲しいもんがあってな。それが準優勝の賞品なんだ」
「……それで本戦出場するんですから、さすがですね?」
「はっはっは。ちょっと、いや、ものすごく頑張ったんだぞ」
まぁ『神の毛布』のお蔭で楽勝だったけどな!
「……ワタル。俺とお前は帝国枠だから、戦うにしても決勝で戦うことになるだろう。その時はわざと負けるからよろしくな」
「えっ。そこは僕に勝ちましょうよ? ね? 僕が準優勝になったらその賞品譲渡しますから」
「はっはっは。馬鹿め! 優勝したら上位大会に出場しないといけないんだぞ!? 譲るに決まってるだろうが!」
と、優勝準優勝に絡んだ話をしていたためだろう、色々な視線が俺達に集まっていた。挑戦的な目、田舎者を見る目、侮蔑の目。中にはワタルの事を知っているのか、はたまた単に本戦出場者だからなのか尊敬の眼差しもあった。
「おっと。他の参加者とかを煽るのはこれくらいにしておこうか」
「そうですね――僕は負けませんよ、ケーマさん!」
「ああ。俺は準優勝狙いだからぜひ勝ってくれ」
「そこは張り合ってください!」
「ロクコ。村長も大概だけれど、勇者ワタルも大概ね。村長が決勝戦にまで来ることを疑ってないなんて」
「ワタルのケーマへの謎の信頼は、本当に謎だからね。ねぇイチカ」
「せやな。まぁ……今回はマジで行くやろーし、順当と言わざるを得んわなぁ」
ともあれワタルとの雑談はこのくらいにして部屋に行って寝ることにした。何だかんだ馬車での移動は体力を消費する。ましてや襲撃があったりするとなれば尚更だ。
「……ケーマは襲撃があっても馬車から一歩も出なかったじゃないの」
「ニクが活躍してくれて助かったよ。ありがとうな、ニク」
「……はい。当然ですご主人様」
俺が頭を撫でると、ニクは嬉しそうに尻尾をパタパタさせていた。顔はいつもの無表情だが、鼻息はふんすと自慢げだ。
ご褒美として、今日はステーキバーガーだな!