軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:忘れられてた奴ら

大会も近づき、活気づいているアイディの町。

元々は別のコアが管理していた町だったが、アイディとそのマスター、セバスが正式な決闘の上強奪した町である。

魔国では、戦国時代のように魔国内で領土の取り合いを行っているらしい。基本は決闘で、たまに集団戦だとか。勝敗に合わせて、ダンジョン領域も一緒にやりとりするそうだ。

で、町の大まかな感じとしては、帝都とさほど変わりはない。俺にとってはどちらも『異世界だなぁ』という印象であるが、魔国らしいことに外壁がほぼないので、どことなく埃っぽい感じがする、ような気がする程度だ。

あとは食べ物が独特なところもある。

「ケーマ、あっちに屋台があるわよ! 行ってみましょう!」

「おう……って、何売ってるんだ? アレ。オレンジ色の……お菓子?」

「摩り下ろしたニンジンと小麦粉を炒めて甘くした、ハルワってオヤツやな」

「ニンジン……むぅ」

そんな魔国の町を、ロクコと散策。ロクコは「いわゆるデートね!」と嬉しそうだったが、イチカとニクも一緒なのでまるでそんな気はしない。

というかニク、ちゃんと野菜も食べた方がいいぞ。全然身長が伸びないって悩んでたけど、栄養素足りてないんじゃないの?

「あれ、ケーマさんじゃないですか? 何でこんなところに」

「ん? 誰だ?」

と、そんな風に散策していたら名前を呼ばれた。

話しかけられた方に振り向くと、そこには二人組の冒険者が居た。

誰だよ、いやマジで。……あれ? 前にもこんなことあったっけ?

「ウゾーです! ケーマさんに命を救っていただいた!」

「ムゾーです! 村に行く約束が未だに守れず申し訳ありません!」

「……おお。そういやそんな名前の知り合いがいたな。え、そんな約束してたか?」

ウゾームゾー兄弟。ウチの宿『踊る人形亭』の初めてのお客様にして俺がダンジョンで命を助けたCランク冒険者コンビだ。お試し部屋で想定外のハマりかたをしてDPをたくさんくれたっけ。

それで、助けるときに使ったゴーレムブレードの代わりの魔剣を探してくると言って、見つけてくれたのが俺の愛剣、魔剣シエスタなんだよな。眠りを振りまく魔剣、重宝しまくりである。

「なんでこんなところに、ってのはこっちのセリフだよ。お前ら帝国の冒険者だろうが」

「いやー、あの時受けた依頼でポカしちまいまして」

「死にかけたところを助けてもらい、それから帰れずなんやかんやズルズルと……」

今は魔族の坊ちゃんのところでお世話になっているらしい。そして、闘技大会にも出場するそうな。この町には予選のために来たんだとか。

「へぇ。そいつぁいい、俺も出るんだよ、その大会」

「そうなのか? だが、ケーマさんと戦うことになっても手加減しないぞ、なぁムゾー」

「ああ。恩はあるがそれとこれとは別だからな、ウゾー」

「それは別にいい。だが、一つ頼みがある」

折角なので、俺はウゾームゾー兄弟に「もし『神のパジャマ』を手に入れたら融通してくれ、あるいは手に入れたヤツと知り合いなら交渉させてくれ」と頼んでおいた。

「もちろん対価は払う用意がある」

「ああ、分かった。それくらいなら承ろう。なぁムゾー」

「ああ。他でもないケーマさんの頼みだからな。ウゾー」

よし、これで『神のパジャマ』を手に入れられる可能性が増えたな。

……ちなみに、「この国ではある程度強くないと交渉相手にもしてもらえないが、ケーマさんなら大丈夫だろう」とのことだった。本当に大丈夫なんだろうか……?

と、ウゾーが俺の腰に下げているシエスタに気付く。

「……! ケーマさん、その腰の魔剣は!」

「ん? どうしたウゾー……はっ! まさか、その剣は!」

「おう。お前らから貰った、魔剣、シエスタだ。」

「昼寝剣シエスタ! まさか、まだ持っていてくれたなんて……! なぁ、ムゾー」

「ウゾー、俺は今この時ほど嬉しかったことを知らない……!」

大げさな奴らだな。と、2人はそれぞれゴーレムブレードを取り出した。片方はナイフタイプのやつ。確かシエスタをもらったお礼にお釣りとして上げたヤツだ。

「俺達も、ケーマさんからいただいた魔剣を、今も大事に使っている」

「ああ。この魔剣は俺とウゾーの宝だ。最近ガタがきて動かなくなっちまったが……」

「ん? ちょっと見せてみろ」

と、俺は2人の魔剣を受け取る。

……あー、こりゃゴーレムの寿命だな。剣として使う以上、どうしても打ち合うことが多くなる。打ち合えば――剣の形をしているとはいえゴーレムだ、当然HP的なものが減る。ゴーレムは生物ではないので自然回復しない。つまり、いずれ死んで動かなくなる。

で、この2本の魔剣はすっかりゴーレムが死んでいた。

ある程度は対策したつもりだが、だいぶ使い込んでいるようだし当然といえば当然か。ここまで使いこまれていると、作り手としては嬉しくなってしまうな。

「……『活性』」

俺は、ゴーレムブレードにこっそり【クリエイトゴーレム】をかけて復活させる。ついでにガタが来てた箇所も修復。そしてその事実を誤魔化すために「土を元気にする生活魔法」である『活性』を使った。

「ほれ、直ったぞ。運が良かったな」

「……は? え、え? ちょ、ちょっとまってくれケーマさん!」

「何をしたんだ!? い、今のって生活魔法の『活性』か?」

ゴーレムブレードを返すと、ウゾーとムゾーは驚いていた。まぁ、壊れた魔剣がちょっと撫でただけで直ったらそりゃ驚くだろう。

「ああ、ウチの村の鍛冶屋に教えてもらったんだが、剣は金属だろ? 金属ってのは元々土の中にあるもんで、むしろ土から作るもんだ。だから、剣に『活性』をかけると元気になる――ことがあるんだよ。ギリギリ生きてたみたいでよかったな」

ちなみにこれ、実際にゴーレムの体力をちょびっとだけだが回復させる効果があることを確認している。つまりは魔剣ゴーレムブレードの寿命を延ばす効果があるってことだな。さすがに死んでたら効果は無い。

「……商売あがったりになるそうだから、他の人に言うなよ。秘密だぞ」

「あ、ああ……分かった。これから毎日『活性』をかけてやろう」

「え、えっと。修理代、いくら払えば?」

「いらんいらん。シエスタが大活躍だからな、オマケだ」

いやほんと、シエスタは凄い剣だからな。オフトン教では聖剣認定してる程に。

「ねーケーマ。早く屋台行きましょうよ。あのお菓子食べたいわ」

「おっと、スマンスマン。じゃ、俺はもう行くわ。またな」

と、俺はロクコに急かされ会話を切り上げた。

ウゾームゾーに見送られ、ロクコに引っ張られて屋台に行く――

「……で、ケーマ。あの剣、なんで直したの? 敵になるかもしれないなら壊れたままにしておいた方が良かったでしょ」

「いや、恩を売っておけば交渉の時に有利になるかなって……それに、ニクならあの2人のどっちが相手でも楽勝だろ?」

「ん。ちゃんと考えてるなら良いわ。ニク、あの2人と当たっても手加減しちゃだめよ?」

「……はい、頑張ります」

――何気にロクコは勝ちに貪欲なようだ。

そしてニクも、目にいつも以上に気合が入っていた。

こりゃ帰ったらまた模擬戦に付き合わされるんじゃないか……まぁ『神のパジャマ』のために頑張るけどー。