軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『欲望の洞窟』視察 3

「はい、こちら『強欲の罠』となっておりまーす」

そう言って一行を『強欲の罠』こと魔剣お試し部屋に案内する。ダンジョンツアーの一番の見どころ。

「 此処(ここ) がロクコの『強欲の罠』ね」

「部屋としては結構広いわね。中部屋くらいかしら……で、あれが魔剣の台座と」

ハクさんが早速魔剣の台座に近づき、すぽっとお試し用魔剣こと、魔剣ゴーレムブレードを引き抜く。

ガシャン! と入り口が太い鉄針で埋め尽くされ、通れなくなる。それはまさしく獣の口が閉じられるが如く。

「これ、誰かが入ってくるのを見計らって剣を抜けば殺せるって事ね」

「さすが姉さま、使い方がえぐいです。まぁ、そういう事故もありましたけど」

「魔剣は……ふむ、魔力を流すと微振動。切れ味増加ね。ケーマさんのお気に入りなのかしら?」

……手に取られてじっくり見られる。魔剣が実はゴーレムだとバレないか少し不安だったが、大丈夫そうだな。だがある意味本番はこれからだ。

「震える魔剣……ハク様、私にも貸して下さる? 魔物型(モンスタータイプ) かしら、 道具型(アイテムタイプ) かしら」

そう。なにせアイディは魔剣型コアだ。本家本元の魔剣に俺の作った魔剣ゴーレムブレードが通じるかどうか――

「 魔物型(モンスタータイプ) のようね。無生物系の気配がするわ」

「ふむ、そちらですか」

通じた! やったぜ! と、俺は心の中でガッツポーズをとった。

ちなみに魔剣についてはカタログでもモンスター枠、アイテム枠とあるので、アイディの言っているのはそれによる区分のことだろう。モンスター枠だと喋れたりもするのかもしれない。

「アイディ自身はその分け方で言うと 魔物型(モンスタータイプ) になるのかしら」

「その通りよロクコ。より詳しく言えば、剣に意思や無生物の反応があれば 魔物型(モンスタータイプ) 、 魔法付与(エンチャント) や魔法陣等によってただの特殊効果を持った剣というなら 道具型(アイテムタイプ) ね。……この村の鍛冶師が作ろうとしていたのは 道具型(アイテムタイプ) にあたるかしら」

「ふぅん。そういえばハク姉さまも魔剣のコレクションを持っていましたよね?」

「ええ。私はそこのあたり区別なく集めてるわね。 魔物型(モンスタータイプ) の方はちゃんと支配下に置いてるわよ、スパイの可能性を潰すためにね」

魔剣のスパイ。そういうのもあるのか。

……俺の愛剣、シエスタも 魔物型(モンスタータイプ) の魔剣だっけ。一応、ダンジョンの名簿に載ってたから俺の支配下にある形になるのかな。あとで聞いとこう。

「ちなみにその魔剣、この部屋からうまいこと持ち出せたら自分のモノにできるのよ。ねっケーマ?」

「……ほう?」

「……へぇ?」

ロクコの一言に2人は露骨に反応し、俺を見た。

「この部屋は冒険者達に魔剣がどういうものかを体験させて、より危険な奥へ魔剣を求めて潜らせるよう欲を促すのが目的ですからね。……持ち出せるようなら持ち出し対策をしますから、やってみますか?」

「成程ね。では私から試させてもらっても良いかしら?」

魔剣を差している状態にしてスタート。アイディが魔剣の台座から魔剣を引き抜くと、入り口が針で閉じる。戻すと開く。抜いて閉じ、戻して開き……

「……これ楽しいわね」

「遊んでないで早くなさい、後がつかえてるのよ?」

「あら失礼」

ハクさんに促され、魔剣を引き抜くアイディ。そして、針で塞がった入り口まで歩いて行き、自前の赤い魔剣を取り出して構え――

「――【クリムゾン……」

「まったまったまった!」

俺は慌ててアイディを止めた。アイディはスキルを中断してくれた。

「何かしら村長」

「今、何しようと?」

「私の攻撃スキル、【クリムゾンロード】を使おうと思ったのだけれど。この針を破壊したら出れるでしょう? そういう事よ」

勘弁してくれ。それ三つ巴のダンジョンバトルで鉄球と海水を蒸発させた威力を持ってるスキルじゃないか。海水が水蒸気になった分の、いわゆる水蒸気爆発の勢いすら海に押し返してやがった凶悪スキル。一直線でぼふんって。

ダンジョンの壁効果で強化されてるとは言え、鉄製の針なんて余裕で吹き飛ぶわ。迷宮エリアの壁も貫通するわこんなん。

「手加減はするつもりだったわよ? この針は564番コアよりは脆いと思うけど」

「取得で構わないので、ダンジョンの破壊は勘弁してください」

「あらそう? ふふ、やったわロクコ」

「……おめでとう?」

アイディは嬉しそうに魔剣ゴーレムブレードを【収納】にしまった。

「じゃあ次は私かしら? 魔剣が無くなっちゃったけど、補充してもらえるのよね?」

「本来はある程度期間を置いてからってことにするつもりなんですが、まぁ今回は特別に」

そう言ってダンジョンの設置機能で魔剣を台座に補充する。

「ふふ、この程度簡単ですよ。入り口を壊すまでもありません」

そしてハクさんは魔剣を引き抜くと――

「……記憶を辿り、遥かなる彼方へ路をつなげ。空を駆けよ、時を駆けよ。其処は此処、此処こそ彼方なり。交わり、重なり、繋がれ――【転移】」

ぱしゅんっと、消えた。

そして入り口に生えた針の向こう側に、ハクさんの反応が現れた。

……そうか、【転移】ときたか。その対策は考えてなかった。

俺は台座に魔剣を補充し、入り口を開ける。そこには手に魔剣ゴーレムブレードを持ったハクさんがニコリと笑顔を浮かべて立っていた。

「魔剣を外に出しても別に入り口が開いたりはしないのですね」

「ハク姉さま! 凄いです!」

「やるわね、流石は テンランカー(上位10位内) といったところかしら」

完敗だな。

……これの対策は【転移】したら魔剣が自壊するようにしとくくらいしかないだろう。一応俺も【転移】は覚えてるし、ゴーレムに教育できるが……うーん、いっそ部屋の外に持ち出したら自壊、でもいいか? 反則的だけど。

「お見事です。どうぞ、その魔剣はお持ちください」

「ふふふ、まぁ、魔剣としては下級も下級ですが折角の記念品ですし頂いておきますね」

ハクさんは上機嫌に魔剣ゴーレムブレードを【収納】にしまった。

と、そんなこんなで名所である『強欲の罠』は見事二人には突破されてしまった。

このダンジョンの山場は過ぎたも同然なので、あとは流すように紹介だ。

というか残すは『強欲の宿屋』。謎解きエリア跡地。案内はここまでだ。

この先はあまり冒険者も入ってこない場所であり、わざわざ説明する必要もない場所である。

螺旋階段エリアの先、倉庫エリアに闊歩している変則的なゴーレムもあまり見せたくないしな。さらに草原エリアに寄り道されてサキュバスと鉢合わせしても困る。

ちなみに『強欲の宿屋』利用者は何人もいた。空き部屋もあるが……そもそも手前の貸本屋とか保存食売り場とか、何だよ。ここで生活させる気かよ。

まぁ、俺はDP稼げるからいいんだけどさ。

「この奥には倉庫エリアがあり、先ほどのと同じ魔剣が置いてあります。が、一般的な冒険者は螺旋階段エリアの前、つまりここまでしか来ないので、案内はここまでです」

「そう。もっと見たかったのだけど」

「……ふぅん。模様替えしたのね」

ハクさんが感慨深そうに破壊された跡を見ている。そして、螺旋階段エリアの方を。

「……工事も終わったみたいですね?」

「……あ、はい」

ロクコは何か思い出したようで、「あぁ」と頷き、アイディは意味が分からず首をかしげていた。

「しかし『強欲の宿屋』ねぇ。ダンジョンの施設でこんなの見たことないのですが」

「詳細は秘密ですよ。解説は冒険者に分かることまで、ですからね」

実際、裏側では半分以上手作業でやってるから説明もなにもないんだけどな。

「村長、『強欲の宿屋』は抜け出せたら魔剣が貰える、とかは無いのかしら?」

「ありません。まぁ運が良ければ魔剣も手に入るってだけの施設ですね」

さすがにここを試していくのは時間の無駄(というかハクさんもアイディも1日当たりのDP量が0なのでお互い得も無い)なので、俺達は引き返した。

帰りも当然戦闘などは無く、すんなりと出ることができたのは言うまでもない。