軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっと奴隷買ってくる。

冒険者ギルドに顔を出すと、いつもの受付嬢さん……シリアナさんだっけ? がカウンターに座っていた。

俺たちのことを心配していた、と門番は言っていたけども……

「……チッ、いままでどこに行ってたんですか」

あれれー? 俺の知ってる心配と違うぞ?

やはり好感度は無かったな。いや、これはツンデレというやつなのかもしれない。

「ああ、ちょっと外に用事がありましてね……」

「で、どうしたんです? Fランクで受けられるダンジョンの依頼はしばらくないですよ?」

ちなみにちゃっかりダンジョンバトル前にハクさんは依頼を片付けていったようだ。

ツィーアで受けた依頼を帝都で完了報告、ということもできるのか。あるいは、権力にモノ言わせた無茶なのかもしれないけど、あらかじめの打ち合わせ通り『異常なし』と報告してくれたらしい、時間的には余裕ができたな。

「あ、そういえば指名依頼どうなりました?」

「……残ってますよ。Gランク依頼ですが、受理します?」

「お願いします……っと、それとどこか奴隷売ってるところ知りません?」

冒険者ギルドの紹介なら多少安心できるだろう。奴隷を使う冒険者は少なくないようなので、

きっといいところを知っているはずだ。

「……用途は?」

「色々ですね。経験があって賢い方がいい……ああ、女じゃないとダメです」

これはハクさんからの注文で、男はダメだと厳命されている。

……本当は俺もロクコの近くに寄せたくないそうだ。

まぁスポンサー様の意向とあらば従わざるをえまい。そう、決して俺はハーレムを作りたいのではない。酒池肉林とかまったく興味ない。美脚の女奴隷とか興味ないね。ぺろぺろしたい。おっと漏れた。

「……そうですね、『グラファ奴隷商』が良いでしょう。あなたに紹介したくないくらいおススメですよ。夕方以降に行くとよいでしょう」

「それはどうも。それじゃ便所掃除行ってきますよ」

チッ、という舌打ちが聞こえたが、気にしないで行ってくることにする。

尚、指名依頼の報酬は2つ合わせて銅貨20枚だ。

まぁ、今回は銀貨100枚持ってきたからはした金だけど、せっかく指名してもらったんだからな。さくっとシュワッと『浄化』で片づけ、ニクが便所で待機している間に俺は公園で昼寝……じゃなくて情報収集する。『天上枕』はベンチの上でも最高という情報が手に入った。

今回は布の服ゴーレムに時間が来たら起きるように命令したから遅刻しなかったぞ。

2件の便所掃除が終わるとそろそろ夕方、ちょうどいい頃合いだ。

今頃はギルドも混んでるだろうので、奴隷を買ってから依頼完了の報告をしよう。

というわけでグラファ奴隷商までやってきた。……うん、結構普通の建物だな。

「……わたしが居たところとは大違いです」

尚、スラムにもヤミ奴隷商があって、ニクはそちらで売られていたようだ。

……まぁ、山賊が買える奴隷だったんだし、そっちだよな。

建物の前に突っ立っててもしょうがないのでニクを連れて入る。

さて、買い物の時間だ。

*

「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件で?」

「ええ、奴隷が欲しくてね」

「そうでしょうとも、私どもにそろえられない奴隷はございませんとも」

ギルドの紹介で来たと言ったところ、営業スマイルで店長グラファ本人が出迎えてくれた。

きちんとまっとうな商人っぽいが、実際町中で店を構えているのだからそうなのだろう。

「それで、どのような奴隷をお求めで?」

「んー、まず足が綺麗で、女で……色々な用途を考えているから賢いヤツがいいな」

「なるほど。……ああ予算はいかほどで?」

「んー、その前に相場がわからんからな。ちなみにこいつだといくらだと思う?」

ニクを見せてどれくらいの価格がするか見てもらう。

ニクは少しでも査定額が高くなるようにと背筋を懸命に伸ばす。

「……そうですね、獣人ですが、手入れが行き届いていて躾もよさそうですし……ふむ、文字は読めますか? 書けますか? 計算は? スキルをお持ちですか?」

「読み書きも計算も簡単なものであればできます、スキルは……ないです」

一応、ニクにはそういう事にしてもらっておいた。

本当は下級魔法を全属性ひとつずつに、【収納】まで覚えているのだ。そんなの言ったら値段が跳ね上がって参考にならないだろう。

計算については先日九九を覚えさせた。

奴隷商人は、両手の指を立てたり折ったりと不思議なハンドサイン……いや、手で計算してるのかな。単純に指を折るだけではなく中途半端に立てたりもしている。最終的に左手の小指一本を立てて、値段の計算が終わったようだ。

(聞いてみたが、指算というもので、親指から順に銅貨1枚、10枚、銀貨1枚、10枚、金貨1枚を表し、右手の指の立て方との組み合わせでそれぞれを0~9を表現する、指を算盤にしたような計算方法で、商人の技能らしい。見習いがこれを覚えようと指をつらせているのはよくある光景だとか)

「であれば……うちでは金貨1枚ですね。貴族や商人向けでしょう」

……金、貨? えーっと、銅貨1枚100円として、100倍の100倍だから……100万円?!

そりゃすごいもんを拾ったな、人ひとりの値段と考えたら安いのかもしれないけど……

「これで人間だったら金貨10枚では足りませんね。これほど愛らしいければ将来も期待できるでしょうし。どうです? よろしければ金貨1枚でお引き取りしましょうか? なんならもう少し上乗せしても良いですよ」

「いや、うちのニクは売る気ないので」

「ほぉ……さようで」

ニクの価値を再確認できた俺は、ニクの頭を撫で、褒めてやる。

それを見た店長は、少し感心したような顔をしていた。

「うーん、あいにくですが当店の今の在庫では貴方様のお眼鏡に適うような奴隷が居ないかもしれませんね。さすがに年が行ったものになってしまうかと……若くて18歳から、といったところでしょうか。もっと若いのも居ないわけではないのですが、躾がまだまだで到底紹介に値しないかと……」

「いや、子供の奴隷が欲しいわけじゃないのでそれはいいんですが」

え、何? 俺そんなにロリコンに見えるの?

「おや、それは失礼。ではもう少し話をお伺いして、条件を詰めていきましょう。できるだけ詳しい用途もお伺いしたいところですね」

「そうですね。……まず、雑用に使うのでスキルは要らないです。女で、年は成年くらいで。できるだけ安いのが良いですね。予算は最大銀貨90枚くらいですが」

「且つ、足が綺麗であれば尚良い、と」

覚えていてくれたようだ。この店長、やりおる。

「ふむ、雑用奴隷を所望でしたか。安いのが良いのでしたら、人間以外でも……ええ、幾人か候補を見繕ってまいりましょう」

そう言って店長は席をはずし、しばらくして戻ってくる。

その傍らには4人の女性が連れられてきていた。首輪があるので、奴隷だろう。……うん、なかなかのおみ足がそろってるじゃないか。素晴らしい。

「ふむ、お気に召されましたか。……こちらから銀貨80、100、90、60となります」

……予算は90枚って言ったのに若干高いのを混ぜてくるあたり、商人だなぁ。それを見越して予算より少し少なく答えたんだが、それこそ見越されていたといった感じだ。

で、80枚の方から熊耳の獣人、毛並のいい狐耳の獣人、ぱっとしないエルフ、普通の人間、となっていた。どいつも俺を見定めるような目で見てきている。

「ん? そっちの60枚のはなんでそんなに安いんだ? しかも……みたところ、人間のようだけど」

「ああ、えー、その、なんといいますか……曰く付き、と申しますか。安いのを希望だということで、お持ちいたした次第ですよ。ひっこめましょうか」

「面白そうだ、曰くを聞いてからにしよう」

簡単に纏めると、

・食道楽とギャンブルでこしらえた借金が払えず奴隷落ちした。

・主人を傷つけて返品されたことがある。

とのこと。……美味いもん食わせてやると買ってった商人が、翌日下半身のアレを齧られたと返品してきたそうな。齧った本人は「じつにマズかった、金返せ」とだけ答えたとか。金返せは齧られた商人のセリフだろう。

尚、回復魔法で生やしなおして大事には至らなかったようだ。

「奴隷は主人に危害を加えられないんじゃなかったんですか?」

「それができてしまったあたりが曰く付きたる所以ですね。主人というより、差し出された食事だと本気で認識していたようで。当然そのあと首輪はちゃんと作動しました。……そもそも主人が食べさせてやると約束していたことと、『ほら食べろ』とモノを差し出した等が色々重なったのです。契約魔法は正常に動作しますよ、ご安心を」

ああ、自分で齧る許可を与えちゃったのね。そりゃ仕方ないわ。

そのあたり奴隷を契約魔法で縛る根底の物凄く重要なところで、商人ギルドまで出てきて嘘を検知する魔道具を使ったうえでしっかりばっちり調べ上げたそうだ。それこそ、いつもの口癖からお得意の口説き文句まで。

「……といっても、流石にそういう経歴があるってだけで売れなくてですね。こちらとしても借金のカタに買い上げたもので、処分するにしきれずズルズルと……見た目は文句ないもので、ついつい、ですね。せめて少しでも赤字を減らしたいのですよ。……いかがです? お買い得ですよ」

「なるほど」

たしかに肉付きがよく、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。髪はこの辺りに多いほんのり赤みがかかった金髪で、見た目は文句ない、まぁ俺からみたら足が良いだけで割と文句はない。それに、宿屋の受付で使うと考えたら整っていたり大きかったりして悪いことはないだろう。

齧られたりしないようにすれば問題ない。気を付ければいい。

「本人に意見を聞きたいな。そのあたり、どうなんだ?」

「ウチは美味いモン食わせてくれるゆーたから買われてやったんや。それを家につくなり粗末なモン出して『食え』言われたらしゃーないやろ? よほど美味いモン食わせてくれると期待して腹空かせてたんよ、そんなに美味しいんか気になるやん? せめてちゃーんと美味いモン食わせてくれて満腹だったならこっちもちゃーんと相手したったのになぁ?」

ずいぶん態度のデカい奴隷だなおい。

「命より食事が大事で、食べるためなら死んでも構わないそうですよ、ええ」

「なるほどなるほど」

俺は寝るためなら割となんでもするが、同じ三大欲求で死んでも構わないとまで豪語するとは。うん、かなり気に入った。悪くない。お安いのもお得感がある。

「ニク、どう思う? 悪くないと思うけど」

「うちのごはんは美味しいので、いいとおもいます」

「へぇ、ええやん! ウチにもその美味しいごはんくれるん?」

問われてないのに割り込んでくる曰く付き奴隷。少し首輪がきゅっとめり込んだのか、ぐぇっと声を漏らしていた。そんなにごはんが大事か。

俺は店長に許可を出させて、話を続ける。

「お前の口に合うかどうかはわからんが、いいだろう」

「ホンマに?! 嘘やったら食いちぎったるで? 食いモンの恨みは恐ろしいんや」

「ああ、約束しよう。そのかわり、ちゃんと働いてくれるな?」

「気に入った! なぁなぁなぁ、特別にお値段負けたってーなグラファ様ぁ。な? ウチ、ホンマは銀貨45枚までいけるんやろ?」

「こら、余計な事を言うなっ! あ……えー、お客様、その、えーっと」

しどろもどろだ。どうにも本当に問題児らしい。

しかも頭も悪くない。こちらが買う気なのを察し、即決させようと値切りをサポートしてきた。自身の底値までしっかり把握しているのだろう。

もしかしたら奴隷商の仕込みなのかもしれないが、それでもこれが演技でできるならそれも悪くない。

「あ、じゃあ銀貨50枚でいいですよ」

「…………ありがとうございます」

掘り出し物っぽかったので、5枚追加しておいた。