軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最終決戦

#Sideアイディ

アイディと564番コアの戦いが始まった。

おそらくこれが最終決戦だろう。よもや、本当に1日でダンジョン全てを攻略してしまうとは思わなかった。

アイディ1人であれば、何日もかかっていた。いや、そもそも攻略できなかっただろう。

……しかしまさか四天王がリスの群れに無力化されるとは思わなかった。ゴーストについてはほぼスルーしただけだったが、アイディの写し身、炎の魔剣で切り伏せたので問題なし。

ロクコの 戦い(ダンス) を直接見れなかったのは残念だが、とりあえず今は目の前の敵に集中しよう。

「死ねぇい!」

「おっと。■■■■。■■■■■■■■、■■■■――【サモンスケルトン】」

ダンスのようにステップを踏み、564番コアの剣を躱しながらスケルトンを召喚するアイディ。

このスケルトンはただの障害物にしかならない。せいぜい、目の前にハンカチを広げるような些細な目くらましだ。

「■■■■。■■■■■■■■、■■■■――【サモンスケルトン】」

「何度やっても無駄ァ! この俺様を舐めているのかッ、666番ッ!」

即座に壊され、床に散る骨たち。アイディはにやりと口端を歪め564番コアを見下すように笑む。

その視線が、564番コアをますます苛立たせ、攻撃を単調にした。

「さて。ここはボス部屋。そして564番がボスということは、殺せと……そういうことで良いのかしら?」

「ふんっ、俺様を殺せるわけなかろう! 俺様の方が強いのだからな!」

「リスを駆逐して自慢げに誇ってた程度の腕前なのに?」

「ハッ、知るか! 負け惜しみを言うな! 貴様は俺様より弱いのだ!」

「ふふふ、遠吠えね」

とは言うものの、564番コアはどうしても攻め切れない。魔王流剣術はお互い手の内が分かっているし、アークデーモンはこの場を離れ逆侵攻をかけさせた。

そして舌戦では完全に負けているのだが、 癇癪(かんしゃく) を起した子供のようにみっともなくとも負けを認めなければ、負けたことにはならないのだ。

もっとも、「本人にとっては」というだけであり、これを眺めている貴賓室の反応は冷ややかなモノだろうが。

「そろそろいいわね。……おいでロクコ」

「ッ!?」

散らばった骨のスキマを縫うように、リスが部屋の中に駆けてきた。

それはアイディの援軍。大半はゴーストを撒くときに囮にしていたリスだが、ロクコが追加で召喚し後追いさせたものも混じっている。

その数は100を超える。

「ぐ、くそっ!」

骨が目隠しとなりリスが見辛い。が、リス側はそんなことをお構いなしに564番コアを包囲。564番コアの脳裏に黒いミノタウロスがリスで窒息死している光景がよぎった。

かちんと歯を鳴らして口を閉じる564番コア。

これこそ最も簡単な窒息対策。食いしばり。

口に飛び込むにしても、口を開けなければ入ってこれない。それだけのこと。

これは結構効果があるのだが、リスの狙いは口だけではなかった。

「ッ! ~~ッ!?」

「あらあらもふもふ。可愛い 飾り付け(デコレーション) ね、似合ってるわ」

目、耳、鼻、その他鎧の無い地肌で、膝裏などの柔らかい所。

リスたちは564番コアに群がり、 団栗(どんぐり) の硬い殻を齧るその前歯を容赦なく突き立てていく。564番コアはブンブンと体を振り払いつつ、壁に向かって突進する。

何匹かのリスは壁に挟まれ潰れ、他のリスも激突した衝撃で落ちる。しばしの解放。が、すぐ後ろに後続のリスが迫っていた。

「くそっ、【薙ぎ払い】ッ」

剣術スキルで剣をぶんと振り回すが、相手が小さすぎる。しかも骨が邪魔だ。数匹のリスが骨と一緒に飛ばされた程度で効果はほぼないに等しかった。

再びリスに群がられそうになり、全力でバックステップ。リスから逃げ回る564番コアを、アイディはくすくすと笑いながら見ていた。

「なるほど。これは 愉(たの) しいわね。素晴らしいわロクコ」

『でっしょー? やっぱり数は力よね!』

「ええ、今なら私も理解できるわ。 群(むれ) とは、こういう事なのだと。で、そろそろ 止(トド) めを刺していいかしら?」

『ダメよ。どうにかしてボス部屋から追い出して、ダンジョンコアへのタッチで勝ちましょうよ』

と、 仇敵(しんゆう) の言葉に眉を 顰(ひそ) めるアイディ。コアを殺すことを臆したか、そう思ったのだが。

『564番コアが完全敗北して 惨(みじ) めに悔しがる様――見たくない?』

ニンゲンに戦力を 悉(ことごと) く消滅させられ、屋敷は燃やされた。

そしてたかがリスに追い詰められ、ダンジョンコアをも制圧され、戦いすら翻弄される。その上手加減されて生き残るのだ。600番台相手に、500番台コアが。

「素晴らしいわ! 素敵、そんなの絶対 愉(たの) しいに決まってるじゃない。貴方天才ねロクコ」

『ふふん。マスターの教育の賜物ってやつよ』

「最高のマスターね。そうと決まれば、たぁっぷり手加減してボス部屋の外に送ってあげましょう。ロクコ、入口の前まで誘導できるかしら? そうしたら、押し出してあげる」

『うちの抱き枕を舐めないで。余裕よ。ニク、イチカ、やっちゃいなさい!』

と、リスたちの包囲網が変わる。今までは単純に564番コアが好きに逃げるのを追い回して遊んでいたが、先回りするようになった。目端にリスを捉えた564番コアはそれを避け、知らず知らずのうちに入口の近くまで誘導される。されてしまった。

魔剣を弓を引くように構えていたアイディ。迂闊にもその正面に着地してしまった564番コア。

ここまでくれば、あとはアイディが「ちょん」と押すだけで部屋の外へ吹き飛ばせる。

「――【クリムゾンロード】」

それは、「ちょん」にしてはいささか派手過ぎた。

火属性の突き攻撃スキル、【クリムゾンロード】。1日に1回という制限と自身への火属性ダメージというデメリットはあるが、元々炎の魔剣型コアであるアイディには火属性ダメージは無効。単なるクールタイムのあるスキルに過ぎない。

以前アイディとロクコ(と三竦みトリオ)がダンジョンバトルした時に、鉄球と海水のギミックを一直線に蒸発させた実績のある、アイディの奥の手の一つだった。

「リス、数匹焼いちゃったけど良かったわよね?」

『まぁ、うん。……え、生きてる?』

「手加減したから死んではいないはずよ」

まだダンジョンバトルも終了していないし、生きてはいるのだろう。状態はさておき。

さ、行きましょう。とアイディはボス部屋の奥に開いた扉へ足を向けた。

そして、誰もいない、寝室となっているコア部屋の一角に、ダンジョンコアはあった。

サキュバスが隠れているかもと思ったのだが、本当に誰もいなかった。

もっとも、いたところでアイディに切り捨てられていただけだろうが。

「ここは629番、ミカンがタッチした方がより面白い 表情(かお) を見せてくれそうよね」

『あ、じゃあせんえつながらボクがタッチさせてもらうきゅよー』

そう言って、リスの1匹がぴょこんと前に出た。おそらくミカンが操っているのだろう。

最後の妨害といったものは何もなく、ダミーコアへのキャスリングもなく。リスはダンジョンコアへのタッチに成功した。

最後の最後は、拍子抜けするほどにあっさりと。

こうして、ダンジョンバトルの幕が下りた。