軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そして終盤戦へ

「無残としか言いようが無いわね」

「無様ともいえるじゃろ。いや、無能か?」

「あはは、2人とも酷いね。564番も頑張ってるんだよ?」

貴賓室では、ケーマ達のガーゴイルが屋敷の窓から侵入してタッチするのをよく見ていた。煙の換気のためにサキュバスが窓を開けたのが運の尽きというか、なんというか。

「うーん。階段を燃やされた時点で、564番は動かずにいればよかったのかな? ハク、6番、どう思う?」

「さっさと屋敷を放棄すればよかったかと思いますが」

「……まぁ同意ですな。あの状況は詰み。……だがまぁ、屋敷を放棄できない気持ちも分かるので、なんとも……」

本人が動いて666番コアのところまで行ったのは、あながち間違いではなかった。というか、階段を壊され燃やされるとは普通思わないだろう。

階段がたき火された(ああなった) 時点で666番コアを直接叩きに行ったのは、英断でもあった。

「もっとも、600番台相手に500番台が互角以下の戦いをしたのは醜態以外の何物でもないのじゃがな」

「……そうね」

以前、ロクコたちに条件を揃えたうえでのダンジョンバトルで敗北したことを思い出し、ハクは目を逸らす。それを『父』はにまにまと見ていた。

「それはさておき、これはもうどっちが勝つか分かり切った感じはあるかな? どう思う6番」

「そうですな。一応逆転の目が無いわけではないでしょうが、明らかに追い込まれ過ぎですからここから564番が勝つのは難しいかと。あとは666番達がどのようにトドメを刺すかといったところでしょうな」

時間稼ぎくらいしかできないだろう、と6番コアは断言する。

「じゃ、ここで564番コアに話を聞いてみよう。ダンジョンの奥までいって落ち着いたみたいだしね」

「はっ。お望みとあらば」

その返事の直後、564番コアにモニターが繋がる。

するとそこには、怒りの顔でサキュバスの腹を殴りつける564番コアが居た。

『くそぉ……どうして俺様がこんな……ッ! 敵は600番台が3匹いるだけだというのに!』

「ふむ、荒れておるなぁ564番」

『! こ、これはこれは6番様! お見苦しい所をお見せしました』

「そのサキュバスは何かしたのかね?」

『いえ別に? ただの殴るためのものですが?』

「そうか」

魔王派閥では弱者は搾取されて当然の存在ではあるので6番コアは特に表情を変えなかったが、隣で見ていたハクは若干顔をしかめた。

そのサキュバスが殴られて 嬉しそうな(・・・・・) 笑顔を浮かべていたからである。それが嫌な奴を思い出させた。

「それで、貴様はこれからどうするつもりだ?」

『はっ! 無論返り討ちにしましょう。今奴らはどういう訳かもう地下3層まで入り込んでいますが、その実モンスターは雑魚ばかり。6層より奥の階層を守護している最精鋭、四天王に敵うはずもありませぬ! そもそも4層には我が自慢の『知恵の門』を設置しております。奴らに突破することは出来ぬでしょう!』

「ほう。よほどのモンスターと謎解きを用意しているのだな」

『勿論でございます! この10階層にて悠々と眺めているだけで奴らは手も足も出なくなること請け合い。苦し紛れの小賢しい攻めをしのぎ切ったら、悠々と反撃に打って出ればよいのです!』

はたしてそんな都合よく行くだろうか、と6番コアは思う。

これはもう勝負あったな、とハクは思う。

『父』はただにこやかに笑っていた。

「……無様な真似をして、失望させてくれるなよ?」

『……ッ! は、ははァッ! 必ずや、勝利をッ!』

既に見捨てる気満々の6番コアだったが、そう言って通信を切った。

「……何が『無様な真似をして、失望させてくれるなよ?』ですって?」

「言うな。どうにせよあ奴はもうダメだろう?」

「ここまで入り込まれていてはね……」

はぁ、とハクはため息をついた。

そこに『父』がにこっと笑いつつ尋ねる。

「それでハク。564番の『知恵の門』と『四天王』、ケーマ君ならどれくらいで行けると思う?」

「遅くとも明日には片付きますわ、お父様」

「ほほう。自信満々だが、その根拠はあるのかい?」

「まずここまでまだ半日経っていません。次に、上の屋敷を564番は放棄していますので、あとは地下の攻略に集中するだけです。そして、四天王とやらが564番より強くなければ、666番を止めることは出来ないでしょう。仮に強くともケーマさんなら対抗手段を講じられるかと」

「『知恵の門』はどうだい? 564番が自慢する内容だよ」

「そもそも問題として成立していればいい方ですが……ケーマさんに知恵比べで勝てるとは思えません」

『知恵の門』を自慢する点を見たところ、特別広い階層があるわけでもなさそうだ。

……

嫌なことを思い出したハクは、そっと目を閉じ、眉間を抑えた。

「それじゃ、ここからは終盤戦と見て良いのかな?」

「でしょうね。早ければ今日中に決着はつくでしょう。ケーマさんは今までのダンジョンバトル、全て1日で決着をつけているそうですから」

思い返せばそれで全勝しているケーマは少々――いや、かなり異常である。

本人曰く「 イッテツ(112番コア) と再戦したんですけど、そこでは負けたんで! 無敗とか全然ないので!」と言っていたが怪しいものだ。112番コアと示し合わせてわざと無敗記録を消したのではないかと思わざるを得ない。

「しかしハクよ。あのマスターが1日で決着をつけているというより、1日しか戦えないと見ることは出来ぬか?」

「それは、ケーマさんは人間ですから、休憩も必要でしょう」

「逆に言えばあのマスターが休息をとるまで粘ることができれば、勝てる目が出るかもしれぬということかな」

「無いですね」

ケーマが休息してる間もロクコや629番コア、そして666番コアがいる。

ダンジョンコア3体というと去年のダンジョンバトルの龍王チームを思い出すが、ケーマの 薫陶(くんとう) を受けているロクコがいるのだ。564番に後れは取るまい。

「無いですね」

「二度言わんでも分かったわ。それでは儂も、564番の負けっぷりを鑑賞させてもらうとするかの」

「私もそうさせてもらいましょう」

そう言って深くソファーに座り直す6番コア。

ハクは、【収納】にしまってあったクリームソーダを取り出し、口にした。

「ハク? 美味しそうなものを食べて……飲んで? いるね。それは?」

「あら。お父様がご存じないのですか? これはクリームソーダですわお父様。ケーマさんが勇者を貸す対価としてくれたものです。……差し上げませんよ?」

「そこをなんとか!」

「自分でお作りになれば宜しいのでは? お父様ならこの程度いくらでも」

「それじゃ意味が無いだろ? なっ、頼むよハク」

「仕方ないですね。お父様への貸し1つということでよろしくてよ?」

どういう意味があるのかは分からないが、渡したクリームソーダを『父』は美味しそうに口にした。

それを見て6番コアも羨ましそうに見ていたのだが、こちらにはクリームソーダが渡ることは無かった。