軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

中盤戦と貴賓室

666番コアがケーマからの通信を切る。

そのまま階段へ向かうかと思ったが、そうはしなかった。

「おや、666番が何か始めたようだよ」

「あら本当。何するのかしら」

「なにやらお前の妹のマスターから指示を受けていたようじゃが……?」

そして近くの部屋にあった家具――木製の棚や小さなタンスを階段前まで運び、剣で破壊した。がつん、がつん、がっがっ……と、見る見るうちに壊され、木片となる。

「本当に何をしているのかしら……」

「特に意味がある行動なのかね? これは」

ただの木片の山になったそれを階段の近くの壁に寄せ、666番コアは写し身――炎の魔剣を突っ込み、ボッと火をつけた。

「…………」

「……な、何をしとるんだ666番は?」

もくもくと煙を上げて燃えていく木片の山。そこに同じく近くの部屋で手に入れたであろうカーテンを放り込む。

ごう! と更に勢いを増す炎。屋敷の中で盛大すぎるたき火。

『ふふっ、よく燃えるわね』

火は壁を焼き、天井を焦がしていく。ここまでくれば666番コアの――いや、ケーマの目論見は分かりやすい程に分かった。

「ま、まさか……屋敷を焼き払う気か! 正気か!?」

「あっはっはっは! さすがケーマ君だねぇ、考えることがぶっ飛んでるよ!」

「……このような攻略法、思いついてもやらないでしょう普通」

驚愕する大魔王、笑い転げる『父』、あきれるハク。

しかしこの火攻めの効果は絶大である。なにせ、屋敷は燃えるのだ。

屋敷だってダンジョンの保護効果で強度は増しているし、DPにより修理もできる。

しかし壊せないほどではない。また、燃えにくいが、燃えないわけでもない。壊れたり燃えた端から直せば無傷のように見えるだけだ。DPによる修理では新たに建材が補充され、残骸は残ることになる。

それに、例えば木の柱。フローリングの床や天井、木の階段。これらは一度壊してしまえば、本当にただの木材(残骸)と成り果てる。ダンジョンの保護効果から外れるのだ。

つまり簡単に燃える。燃やせてしまうのだ。

666番コアは壁を破壊し、柱を切り落とし、火にくべる。

破壊した壁は復元され、柱も直る。

しかしそれもまた修理した端から壊され、火にくべられ、燃える。

ここで、2階に上がる唯一の階段を壊して燃料にしたとしよう。最上階にダンジョンコアがある場合、ダンジョンの1階から下が切り離されることになる。こうなると、もはやダンジョンの保護効果がなくなり今度は壊さずとも普通に燃える。

だから階段を直すしかない。

しかし666番コアは淡々と、それすらも破壊し、火にくべる。

屋敷を燃やすわけにはいかない。なので階段を直すしかない。

破壊。火にくべる。

階段の直りが早いことに気付いた666番コアは、優先的に階段を対象にし始める。

階段直る、破壊、火にくべる。階段直る、破壊、火にくべる。

ここに、延々とたき火が続けられるシステムが完成していた。

『あら。これは良いわね。なんだか 愉(たの) しくなってきたわ。ロクコも来ればよかったのに』

ちなみにコアが地下にある場合は階段を破壊したら今度は2階から上が保護できずに普通に燃えることになる。

屋敷を守る限り、やはりここの階段は死守せざるを得ないのだ。

屋敷を放棄するか、564番コアのDPが尽きるまで燃やし続けられる。

元々炎の魔剣である666番コアにとって、炎は心地よい存在だ。いくらでも火にまみれて踊り続けられることだろう。

屋敷型ダンジョンと666番コアと火計。何もかもが組み合っていた。

「……考えれば考えるほどにえげつない……!」

「なぁ、あのマスターやはり悪魔じゃろ? 人間って嘘じゃろ?」

悪魔は564番コアの方であるはずなのだが、行動を見るに明らかにケーマの方が悪魔に 相応(ふさわ) しかった。

666番コアを排除、あるいは火を消しに564番コアのガーゴイルがやってきたが――

『~♪』

鼻歌交じりで蹴散らされる。ガーゴイル程度では666番コアの相手にもならないようだ。今頃564番コアは大慌てだろう。

「よし、さっきはケーマ君の所につなげたし、次は564番のとこにインタビューしてみようか! 6番!」

「はっ。父上の仰せとあらば……」

と、モニターが繋がる。

『うおあー!? 666番め、止めろ、止めるのだ! だああぁあ! 階段を壊すでないわぁああ!!』

予想されていたことだが、564番コアの混乱っぷりを見て、モニターの裏側で『父』はくすくすと笑っていた。

「……ごほん」

『はっ! こ、これはこれは大魔王様! お見苦しい所をお見せいたしました!』

「よい。で、どうじゃ?」

『は、はいっ! な、なぁに、この程度どうということはありませぬ! 我が力を見せてやりましょう!』

564番コアは取り繕ってそう言う。「ふむ」と重々しく頷いて返す6番コア。

『まぁ、666番には多少お仕置きしてやろうと思いますが、構いませぬな?』

「好きにせよ」

『はっ! ありがたく。では、少々立て込んでおりますので――だあああ少し焼けとるッ!』

と、通信を切る。

「いいのかい、好きにさせちゃって?」

「あ奴は見限りました故。もはや関係ないという意味でございます、父上」

「あらあら。500番台を見捨てても良いと? 薄情な魔王様ね」

「ぬかせ。別段積極的に 壊(ころ) そうというわけではない、ただ儂の庇護を外すだけの事……まぁ、好きにさせたところでたかが知れておる。精々666番の踏み台になってもらおう」

ふうん? とハクは口に手を当てて考える。

「仮にも500番台なのに、600番台に勝てないというのは……それは564番が弱いのか、それとも666番が強いのか。どちらかしらね」

「両方じゃな。儂が言うのもなんじゃが666番は天才じゃよ。しかもマスターができてから成長速度も加速しておる。ま、儂には勝てんじゃろうがな」

と、629番コアのダンジョンで動きがあった。

どうやら後方で生き残ったサキュバスが懸命に【サモンガーゴイル】を唱え、戦力を揃えていたようだ。が――

当然、それはマップに表示されている。故に、629番コア側のガーゴイルがそれを襲った。

戦いつつも逃げるガーゴイルとサキュバス。そして、それが追い込まれた先は――

「あー、勇者」

「詰んだの」

あっさりと全滅。564番からの指示は無かったのだろう。さもなくば、方向を見失い勇者の居る場所へ向かって逃げるなどあり得ない。

だがそれも仕方ない。なにせ、今564番コアのダンジョンは室内キャンプファイヤーを執り行う666番コアがいる。しかもさらに地下にも200匹もの『敵』が入り込んでいた。

「部下等に分担して対応を任せればよいのに」

「66番の末路を考えると、己のモンスターであっても信用するのは難しいものでな」

「あれは……ま、仕方ないですね。こちらがとやかく言う事でもないでしょうし」

と、564番コアの地下ダンジョンの方も、順調に攻略されていく。

みるみるうちに1層目が突破されていた。

「というか……リスですか」

「これもえげつないのう……前は水と合わせて魚を流し込んどったよな。あれよりはだいぶマシに見えるが」

DPで出したであろうガーゴイルが足止めに向かうも、ちょろちょろとうじゃうじゃと進むリスたちはその足元をすり抜けて自由に駆けていく。魔法を撃ってもファイアボールなどのボール系の小さな弾では着弾点だけぽっかりと穴をつくられ避けられる。

明らかに『群体』の操作に慣れた者が動かしている。

「これはケーマ君の部下だね。良い操作だ」

「……優秀な部下をもっているな。羨ましい事だ」

「まったくですね。私でもそう思います。ミーシャと交換してくれないかしら……ふむ、あの時より上手くなってますね」

壁際に追い詰めるも、それは数匹のみ。その他大部分はやはりダンジョン中に散らばって探索を進めている。と、早くも次の層への階段を発見したようだ。1時間も経たずに1層を攻略。すさまじい探索速度だ。

「相変わらず、この戦法はえぐいですね。6番、あなたならこれをどうやって切り抜けますか?」

「ふむ? そうじゃなぁ……範囲攻撃スキルかのう。この小ささと数はやりにくいが、範囲内の敵全体にダメージを与えるようなタイプの魔法で囲いつくせばよかろう。毒霧とかが効きそうじゃな」

「おや、大魔王ともあろうものが毒を使うのですか?」

「ククク、大魔王じゃぞ? 使える手段をつかって何が悪い」

こうして、中盤戦もケーマ、もとい629番コアたちが優勢のまま進行していく。

……そういえば、564番コアが666番コアにお仕置きとか言っていたが、何かするつもりなのだろうか? やるならさっさとやって、そして盛大に踊って欲しいものだ。