軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲撃者

「うう、なんて可愛いんだ……っ」

「ああ……ここに楽園はあったんだ。もふもふ天国……」

「ひぇぇ、ウサギがこんな、こんな素敵な生き物だったなんてぇ……もうウサギ肉食べられなくなっちゃうよォ!」

「ばかいえ、ここのウサギと他のウサギが同じわけないだろ……こんなにキレイでもふもふなんだぜ……あぁぁやべぇよやべぇ、俺の手からスティック野菜食うんだぜ……?」

冒険者たちは、すっかりウサギにメロメロになっていた。

「は、はいっ、スティック野菜は1カップ銅貨6枚ですっ」

「この量で6枚? ちょっと高くない?」

「バカお前、これをウサギたちがもふもふカリカリ食べてくれるんだぞ? なんなら膝の上にのってくれるとしたら……?」

「あっ安い」

「そ、それと、このスティック野菜とかの利益は、ウサギたちを守るための管理施設に使われる予定、ですっ! あ、使用済みのカップは銅貨1枚で回収、しますのでっ」

「なるほど、実質5枚ってわけか。じゃ、とりあえず3つくれ」

イチゴが売り歩くスティック野菜も、大好評に売れていた。

なにせ、イチゴの売るこれはウサギたちにすこぶる好評なのだ。話を聞いていた他の冒険者が持ち込んだ野菜はあんまり食べないのに。

猫に対するマタタビのような何かが含まれているのかもしれないが、その秘密の処理を含めて銅貨5枚。実際安いと飛ぶように売れていた。

……ネタ晴らしをすると、特製のカップを見てウサギ側で「これはイチゴのやつ」と判断し、自ら食らいつきに行っているのだ。持ち込みのまでは胃袋に余裕がないのでよほど食い意地の張っている(イチカ操る)ウサギ以外は、あまり見向きもしない。

使用済みのカップはイチゴの方で回収し、使いまわす。銅貨1枚が帰ってくるとあって、今のところ回収率は100%だ。

カップを使いまわしたりしてくるようなヤツが現れたらまた別途対策をしよう。というか、ここのウサギたちは何も考えてない動物じゃない。あくまでそういう接客をしている知能ある動物なのだし。

「はぁぁ、くっそかわえええ……至福すぎるでしょここ」

「お、レンニューの姉御も気に入ったっすか?」

「あたりまえでしょこんなの、反則すぎるわぁ……もふもふ」

トコイが言っていた何人かの可愛いもの好き有力冒険者も、早くもこの第2陣調査隊に潜り込んでいた。このレンニューという女性冒険者もその1人だ。

「トコイのやつがウサギ基金つくるとか言ってて何言ってんだコイツとか思ったけど、今なら私も金貨5枚くらい出すわ」

「相当気に入ったんすね」

「相当気に入ったわ。っはー、可愛すぎ。持ち帰って飼いたい……」

「お、おもちかえりはダメですよっ、この子たちは、ここで生きてるんですからっ」

レンニューの呟きを聞きつけたのか、丁度近くでスティック野菜を売り歩いていたイチゴがそんなことを言った。

「あ? ……あー、そうね。お友達と別れさせるのも可哀そうだものね。あんた、イチゴって言ったっけ?」

「は、はい」

「やっぱりウサギ獣人はウサギとお話できるのかしら……ね、この子がなんて言ってるか分かる?」

「はい? ん、ええっと……うん、うん。『おねーさんやさしいから好き。もっと撫でて、ちょっとならお腹わしゃわしゃしてもいいよ』って言ってますね。あと、今はお腹いっぱいみたい、です」

と、その言葉が真実であることを示すようにそのウサギはお腹を見せた。一杯食べたからかぽこっと膨れてるように感じる。

「おおぅ、マジで? お腹わしゃわしゃしていいとか……っはあぁ、うわぁマジで。っはぁああ可愛いぃぃ。マジで可愛い……可愛い」

早速ウサギのお腹をわしゃわしゃと撫でるレンニュー。語彙が残念なことになっているのは仕方がない。仕方がないのだ。人は本当に可愛いと思った時、可愛い以外の言葉が出なくなるのだから。

「こんな姉御初めて見たわ……ウサギ恐るべしだな」

「ウサギ、可愛いですもんね」

「私もうここに住むわ……」

おそらく冗談だろうが、そんなことを言うレンニュー。

「このあたりに村でも作ります?」

「……流石になにも出ない、ウサギだけのダンジョンで村作るまではないだろうけどな。野営しやすい拠点にするくらいはアリ、いや、もうここが既に野営しやすい拠点といえば拠点か……」

「トコイの兄貴はここに食いモノ売る店でもあればって話してたっすね」

それは、トコイにケーコ(ケーマ)が吹き込んだアイディアだ。

無名の冒険者よりも帝都で信用あるBランク冒険者からのアイディアとした方が受けがいいということで。

「いいんじゃないか? ウサギたちはどう思う? ……って、わかんねーか。イチゴ、ウサギたちに分かるように説明できたりする?」

「あ、はい。……えと、大丈夫だそうです。ただ、ダンジョン内なので建物を飲まれないように従業員が誰か在住しとく必要はありそう、ですね」

「なら倉庫とか調理場とかの建物だけ外に立てて、中へは屋台とか、闘技場の売り子みたいに箱に入れた形で売り歩くとか、まぁそんな風にすりゃいいだろ」

「おお! さすが姉御、素晴らしいお考えっすね!」

と、3人がそんなことを話している時だった。

ファーン! ファーン! ファーン! と、けたたましい音が鳴り響く。

そして、部屋のフチを囲うように出ていた、安全地帯を示す淡い緑の光が――点滅し、消えた。

「な、なんだ!? この音は!」

「おい、安全地帯が消えたぞ!」

調査隊の面々はにわかに騒ぎ出す。当然だ、安全地帯が消えたのだから。

「総員、武器を持て! 警戒態勢!」

「姉御! ウサギたちが怯えてるぞ! 声を抑えてっ」

「いえ、ち、ちがいます! レンニューさんの声とかじゃなくて――ウサギたちを襲う、敵が、くるそう、です!」

イチゴが訳したウサギの言葉に、さらに警戒を強める。

そして、ダンジョンの奥に繋がっていた通路から、動く石像――ガーゴイルが現れた。数は3体。普通のガーゴイルであればこの調査隊であれば、余裕をもって対応できる。

「イチゴ、あれが敵か?」

「……は、はいっ、あれが敵です! 倒してください!」

「そうか。……いくぞテメェら! ウサギを守れ!」

「「「応ッ!」」」

結果を言うと、あっさりと対処できた。

ウサギを狙った魔法攻撃も盾で防ぎきったし、斧や槌、剣のスキルでガーゴイルたちは普通に倒すことができた。

気合を入れて対処した分拍子抜けしたほどだが、ガーゴイルを排除したところで、ふわりと、安全地帯が元に戻る。

「なんだったんだ……うおっ!?」

「わわっ、おいおい、お前らどうしたんだ?」

そして、先ほどまで怯えていたウサギたちが全力で体を摺り寄せ、甘えだした。

「……お、おう……も、もっふもふじゃねぇか……ッ!」

「姉御! 顔だらしねぇですぜ」

「見んじゃねぇ! ……あ、お、お前達はいいんだよ? うおっ、か、可愛い……ッ」

敵を排除したからであろう。とても嬉しそうだ。

と、そこに3匹のウサギが協力してカゴを運んでくる。その中に、ポーションが3つ入っていた。

「……お礼、だそうです」

「ははっ、こりゃありがとうね! ……そうか、そうか。ここは そういう(・・・・) ダンジョンってことなんだな」

「そういう、っすか? 姉御」

このダンジョン入り口の看板。ウサギたち。ウサギの敵。お礼のポーション。

点と点をつなげば、明らかに そういう(・・・・) ルールであると分かる。

「十中八九、このダンジョンは『ウサギを守る』ことでアイテムを貰えるダンジョンってことだ。前回来た時は襲撃が無かったってことは、そこは何か別のルールがあるのかもしれない」

「へぇ! そりゃいいや。可愛いウサギたちを守って戦えて、アイテムまでもらえるんだ」

「い、いいダンジョンです、ねっ」

「ああ、まぁもう少し調べてみる必要はあるけど、そういうダンジョンだろう」

レンニューの出したこの結論に、イチゴもにこりと笑みを浮かべた。