軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウサギのダンジョン 1

「――というわけで、ウサギの可愛さを売りにした癒しを売る店。うさぎカフェを作る」

「かわいさ! かわいさなら自信あるきゅよー。毛づくろいを欠かさねーからな!」

と、ミカンは しな(・・) をつくって「てふーん」とポーズを取った。

俺達は無視して話を続ける。

「……料理出すっちゅーことか?」

「ウサギにそれを求めるのは厳しいからなぁ……カフェは無くてもいい。可愛いウサギと触れ合って、癒しの時間を得る。こっちはその分DPを貰う。Win-Winだ。まぁ『ふれあい動物園』って言った方が分かりやすいかもしれんが……どうだ?」

「うーん、まぁお偉いさん方にはペットを飼うっちゅーのがあるから通用しない手やないと思うけど、冒険者相手やとちょっとなぁ。まず、ウサギ見たら肉やと思うで?」

うん、それは俺も思った。ミーシャはともかく、ニクとイチカもそんな目でウサギを見てたもん。今日ここにきた最初は。

「でもまぁ、俺は行けると思ってる」

「ほぉ。その根拠は?」

「見ろ。アレを」

俺が指さした先。そこにはイッカクウサギと戯れるロクコとニクが居た。

もふもふに囲まれる幼女。かわいいとかわいいが合わさり最強に見える。

ウサギを肉としてしか見ていなかったあのニクが。ついでにゴブリンフェチのロクコまでもがウサギと楽しそうに戯れているのだ。

「……あー……ウチも、あのニク先輩を見たら行ける気がしてきたわ」

「だろ。だがそのためにはまずウサギを肉としてではなく、可愛い動物として見る必要がある。そのきっかけとして必要なのが、このイチゴちゃんだ」

「んきゅ!? 私ですか?」

突然話を振られて、ワーラビットのイチゴはびくっと震えた。

「なるほど、つまりイチゴに店員をさせようと?」

「最終的にはそうなる。普通に住んでもらうのもいいが、まずは冒険者として登録だな。そして、新たに作るウサギダンジョンに調査に来る冒険者チームと一緒に来てもらい、そこでウサギを愛でる方向に誘導してもらう」

「……なるほど、つまり格闘術で言うとこの『誘い』やな!」

日本の言葉でサクラとも言う。

「でも新人の冒険者がいきなりダンジョンの探索依頼を受けられ――あ、そっか。そこはミーシャに協力してもらうんやな」

「ああその通り。とりあえずCランク冒険者の地位でも用意してもらおう。そのためのミーシャだ、協力してもらうのをバッチリ約束してもらったしな」

こういう時、権力者とズブズブなのって便利だよね。

「そ、そんな大役、務まるでしょうか……」

「……俺も付いていこうか。むしろ、最初は部外者が1人か2人くらいで丁度いいかもしれん。それで、練習したり流れを作って――って感じだな。じゃ、適当に冒険者風の格好用意するから。イチカ、ロクコと一緒にそれっぽい装備を見繕ってやってくれ」

「任せとき」

うん、やっぱりイチカは役に立つな。ウチのダンジョンで一番常識人な気がする。

こういうのは俺やロクコは前提として常識を投げ捨ててるし、ニクも常識なんて知らないし、レイたちでも視点がダンジョンに思いっきり偏るし。

頼りになるよ、イチカは。

……でもギャンブルで借金作って奴隷落ちした人が一番の常識人なウチのダンジョンって……

よそう。深く考えたら負けだ。

「まぁそんなわけだ。早速、ダンジョンの方も用意するとしようか、ミカン」

「おう、わかったっきゅよ! 何があればいいんきゅかね?」

「そうだな――」

と、こうして俺達は新ダンジョンの作成に入った。

といっても、作るものは少ないからすぐ出来ちゃったんだけどね。

ミーシャにダンジョンの調査依頼を出してもらった。

『新発見のダンジョン調査。定員2名。Cランク以上。報酬:銅貨50枚。備考:発見者同行』

ワーラビットのイチゴが発見者で、定員のうち1名は俺で埋まっているので、実質定員1名の依頼だ。イチゴはDランク冒険者ということになる。

1日がかりの仕事としては相当お安いと思ったんだが、ミーシャ曰く「これでちょーどいいお人よしが参加してくれるはずにゃー」との事。

で、実質定員1名のそれに応募してきたのはなんとBランク冒険者、トコイという奴だった。

初見ではない。以前ちらっと帝都で見た覚えがある冒険者だ。顔は厳めしいのに子供の面倒を見るのが好きなお人よし。

今回のダンジョン調査も「若いのが怪我するくらいなら俺が様子見てきてやる」といった具合らしい。

「初めましてだな。俺はトコイだ」

「よ、よろしきゅおねがいしましゅ……い、イチゴです」

「初めまして。ケー コ(・) です」

俺は顔バレ防止のため、適当な女性の姿に【超変身】して付き添いをすることにした。

実在しない存在には変身できないのだが、日本で見た感じの誰かに変身できないかなと思って変身したらできたのだ。しかも髪染めで茶髪。

女性にしたのは、その方がイチゴをサポートしやすいからで他意はない。体力的には布の服ゴーレムでなんとかなるしな。

……こちらに知り合いが居るはずもない、完璧な変装である。

勝手に体を借りるのはアレだから、文句があるなら言いに来てくれて構わない心積もりだ。文句が来たら他の人に変えるからよろしく。

尚、これにあたってCランクの仮の身分をミーシャに用意してもらったりもしている。この件が終わったらこっそりと消える使い捨ての存在だ。ひゃっはー。

「新しいダンジョンの調査は初めてか?」

「ええまあ。トコイさんは?」

「俺は何回かある。だが、それでもダンジョンというのは個別で全く違う様相をみせる代物だ。どんな危険があるかは分からないから油断はするなよ」

と、すごく優しいことを言ってくれているのだが顔が怖いせいで「おう、ルーキーが足引っ張んじゃねぇぞコラ」と脅すように聞こえてしまうのは気のせいだろうか。

現にイチゴはすごくビビっていた。危険が無いことくらい分かってるはずだがすごい演技力だ……え、トコイの顔が怖いだけ? ですよねー。

そんなこんなで雑談をしつつ馬車を飛ばして目的のところ、新ダンジョン『ウサギの休憩所』(現状では自称)までたどり着いた。