軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウサギの楽園、訪問

「で、助けてくれるんきゅよね。期待してるっきゅよ」

オレンジ色のウサギが鳥篭の中で耳をぱたつかせた。

……もふもふだなぁ。

と、その時、部屋に突然ハクさんが現れた。まるで忍者の如く……【転移】、いや、これはダンジョンメニューの機能、『設置』だな。少なくともこの帝都はハクさんの領域だし。

「お待たせ。話してたみたいね」

「ハク姉さま」

そして真っ先にロクコがハクさんに近寄る。

「ハク、さま。このたびはぼきゅを助けてくれてありがとうきゅよ……」

「災難だったわね、629番。魔王派閥に目をつけられるだなんて」

「……まったくきゅよ」

ミカンは「たしったしっ」と後ろ足を踏み込む。スタッピングっつったっけ? ウサギのストレス表現だった気がする。

果たして何に対してのストレスなんだろうな。魔王派閥に対してか、それともハクさんへのストレスか。

そうだ、気になってた事を聞いておこう。

「なあ、ミカンはどうやってハクさんに助けを求められたんだ? よもや帝都にぴょこぴょこ歩いてきたわけじゃないだろ? そんなことしたら食肉として狩られるだろうし」

「物騒なこと言うきゅね!? ……あー、でもそれはボクもしりたいきゅよ。ダンジョンで頭抱えてたらハク、さまが来たんきゅよね。そこで頭を下げたんきゅよ」

うん、ウサギってデフォルトで頭下がってる気もするけどそれはまぁいいか。

と、そこでハクさんを見るとハクさんはロクコを抱きしめつつ答えてくれた。

「魔王派閥から宣戦布告されたのよ、『お前の派閥のダンジョンを壊す』って。それで言われた場所を視察しにいったら見つけたのよね。あいつら思い込み激しいわよね」

「そっきゅよ。あいつら、こっちの話聞かねーんきゅよねー……うー、草原でごろごろしてたら見つけられちまったんきゅよぉ……」

再び「たしったしっ」と足踏みするミカン。

「ところで、ミカンってのは629番の名前なのかしら?」

「ええ、俺にはやっぱり番号だと呼びにくいので」

「……ふぅん。それで、マスターにでもなれたのかしら?」

「いえ?」

やはりハクさんには実験してみたって分かるんだな。ミカンは気付かなかったみたいだけど。まだ分かってないみたいで「?」と首傾げてるけど。

「あっ、んでな! ウチのダンジョンはどうすればいいんきゅかね?」

「ん? そうね。とりあえず私からケーマさんにDPをいくらか渡しておくわ。協力して魔王派閥の襲撃をなんとかしなさい」

「……これまた見事な丸投げですね、ハクさん」

「私が指示を出すよりケーマさんに任せた方が面白、きっといい結果を出してくれると信じていますよ」

今完全に面白いって言ったな。まぁ、ハクさんなら俺の手の内を少しでも見ておきたい、という意図もありそうだが。

「というわけで、正式にミカンを私の派閥に入れてあげるわね。感謝なさい」

「ははぁー! 感謝カンゲキっきゅよー」

ぺこ、と頭を下げるミカン。後ろ足がぴく、ぴくと足踏みしたそうだけど見なかったことにしておこう。

「……ところで、ハクさんの派閥って他に居るんですか?」

「ラヴェリオ帝国内のダンジョンは殆どが私の派閥ですよ。魔王派や龍王派ほど主張は激しくないですが」

「……だからぼきゅが裏切者派に間違われたんきゅねぇ……」

あ、裏切者言っちゃった。まぁミカンももうその裏切者派閥だけどな、正式に。

「うう、ぼきゅもいちおう獣王派だったんきゅけどねぇ」

「そうだ、それも聞いておきたかったんだった。獣王ってのは誰だ?」

「8番コアの派閥ですね」

俺はミカンに聞いたのだが、ハクさんがすかさず答えてくれた。

「獣系コアは大体そこに所属していますが、あそこも弱肉強食、子供を 千尋(せんじん) の谷に突き落とすような放置っぷりですから」

「……つまり、そこでも見捨てられるレベルの最下層だったと」

「きゅぅん……」

なんかこのオレンジ色のウサギが可哀そうに思えてきた。……今回のダンジョンバトル、しっかり手伝ってやらないとな……!

「それでは顔合わせも済んでるようだし、現地へ行ってみましょうか」

ハクさんが【転移】を唱える。ハクさんとミーシャだけならともかく、俺達全員が行くとなるとダンジョンの配置は使えない。

【転移】の光に包まれて、それが収まると俺達は草原にいた。

……見渡す限り、草しかない平地といってもいい。まさかこの広大な草原がミカンのダンジョンだというのか。あるいは、広く見せかけてるだけで壁がある室内タイプか?

「あ、ぼきゅのダンジョンはこの周囲50mくらいっきゅよ。えーっと、このあたりに地下への入り口の穴が……お、ここ、ここっきゅよー」

ミカンが草むらでモフモフぴょんぴょんしていると、足元に茶色い土がむき出しになっている箇所があった。

敵に見つからないように、階段に幻を重ねているんだとか。なるほど……

「知らなかったら落ちて足くじくな、コレ」

「ふっふっふ、そこをみんなでボコボコに殴るんきゅよ! イッカクウサギやアーマーウサギ、魔法ウサギにソルジャーラビットがいるっきゅよー。みんなー、ただいまー!」

階段を下りていくと、まず大きな部屋があった。そこにはアルマジロみたいなウサギとツノが一本生えたウサギがいた。こいつがアーマーウサギとイッカクウサギらしい。

ぷひー、と鼻を鳴らしている。「おかえりー」と言っているらしい。……ウサギ語って翻訳機能さんで話せないかな?

「おかえりー」「おみやげはー?」「くさくいてー」

お、いけたいけた。イッカクウサギ3匹が話してる内容が分かる。……これ、今後ウサギ肉食う時に複雑な気分になるな。早まったかもしれん。

そしてニク、尻尾がぱたぱたしてるけど狩っちゃダメだからな? ダメだからな?

「んむんむ。あ、ケーマ。ウチのダンジョンはな、ここでこいつらが足止めして、その間に魔法ウサギやソルジャーラビットがそっちの部屋からかけつけてくるって戦法なんきゅよー。いままでこれにかかって生き残った侵入者はいねーっきゅよ! さいきょー!」

「なるほど。でも魔王派閥のやつは普通に生き残って帰ったと」

「……アーマーウサギが足止めしてる間にボクがコアだって気付いて止めたんきゅよ。まぁ、あのまま続けてたら皆殺しにされてたと思うけど……」

たしたしと地面を蹴るミカン。自分の力は分かってるらしい。

まぁ、今までウサギを狩るような――初心者冒険者しか来なかったんだろう。ツィーアでもDランクにもなればウサギ狩りは卒業みたいなところがあるからな。

しかし入ってすぐにモンスターが群がってくるとは、初心者相手ならかなりの出来である。

今までの生還率0%、これは命を DP(えいよう) にする『ダンジョン』という存在からしたら立派な実績とも言えよう。欠点もあるが。

少なくとも、俺がマスターになった時のウチのダンジョンより遥かに良いことは間違いない。

「この構成は自分で考えたのか?」

「他のウサギ型コアの先輩に教えてもらったんきゅよ。ウサギでも、みんなで囲んでたたけば勝てるって」

あ、他にもウサギ型コアいるんだ。へぇー。……そういやウチの宿のバイト、セツナの父親がウサギ型コアだとか言ってたっけ? もしかしたらそいつなのかもな。

そんなどうでもいいことを考えていたら、ハクさんがロクコに後ろから包むように抱き着いたまま聞いてくる。

「さてケーマさん。それで、このダンジョンで魔王派閥のを一泡吹かせられるかしら?」

「……もう少し情報が欲しいところですね。相手のこととか」

「できないとは言わないのね」

ハクさんがニコリと微笑むと、ロクコが自慢げにふんすと鼻を鳴らした。

いや、褒められたの俺だからな?