軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラゴンの住む山へ(山頂まで徒歩3時間)

「いやぁ、ロクコさんに愛されてますね、ケーマさん?」

おいワタル、ハクさんに余計なこと言うなよ? マジで言うなよ、フリじゃないぞ?

まぁそれはさておき、俺達は登山を開始した。

基本的に道は無く、ひたすら山頂に向かって岩がゴロゴロしてる上り坂を歩くだけだ。ゴーレムアシストを使っても太腿上げの運動をしているようなもので、地味に疲れる。

「ああ、一つ勘違いしないように言っておく。討伐隊と言ってはいるが、今回の目的は村に被害が出ないようにすればいいだけだ。倒す必要はないぞ」

「なるほど。つまり……ケーマさんならなんとかなると!」

「え? あ、うん。まぁ、そうだけど」

「いやぁ、これは僕、余計なお世話だったかもですね!」

なぜか急にワタルが手のひらを返したかのように俺を頼りにし始めた。

かも、じゃなくて確実に余計なお世話だったんだけど。

「なんなら今から帰ってもいいぞ?」

「まさか。ケーマさんの秘策、この目で見させていただきますよ」

……だから嫌なんだが。まぁいいか。勇者っていうのはこれ以上ない証人にもなるし、良い方に考えなきゃな。

イグニとの談合はどうせ他では使えない仕込みだ。秘策として今回見られたところで全く……さほど……たぶん、影響はない、はず、であると思いたい、ような。うん。

「それはそうと疲れたな。休まないか?」

山全体の半分くらいまで歩いたところで、俺は休憩を提案した。

「ケーマ、まだ1時間も歩いてないぞ……まぁ予想してた。ケーマは力はあっても体力が無いからなぁ……おいワタル、 背負子(しょいこ) で運んでやれ」

「はーい。あ、もしかして僕このために呼ばれたんですか?」

「へぇ。そりゃ贅沢過ぎる勇者様の使い方だな、ハハッ」

「んなわけねェだろボケ村長。んじゃワタル、頼んだぞ」

「この村本当にいいなぁ、ケーマさん筆頭に僕のこと特別扱いしないもの」

ワタルは笑顔だった。なにこいつドMなの? 女(ネルネ) に貢いでるあたりそういう素質はあるかもしれない。

そして二宮金次郎の使うような背負子で薪よろしく運ばれる俺。あーらくちんらくちん。

運ばれながら俺が打ち合わせを思い出していると、ゴゾーが、ワタルに運ばれる俺を見てため息をついた。

「本当に運ばれるのかよケーマ。冒険者として情けねぇとは思わねぇのか?」

「え? ゴゾーが言い出したんだろうが。そもそもこの中で一番足が遅いのは俺だ。つまり、これが一番早い布陣なんだよ。合理的だな、さすがウチの村の冒険者代表」

「ったくケーマめ。大事な主戦力を働かせてどうする……本当は帰りに怪我人や死人を運べるように用意したんだぞ?」

「そりゃ結構。怪我人や死人が出なけりゃ帰りも乗せてもらえるわけだ」

「イチカやクロの嬢ちゃんたちも歩いてるってのに……」

「あっはっは、何言っとるんゴゾー、奴隷が主人歩かせて休むわけにもいかんやろ? むしろウチらがご主人様を背負ってくべきトコやで?」

イチカの発言にこくこくと頷くニク。

そういえばウチのパーティーメンバーは奴隷だったな。半分忘れてた。

「おい、ワタルがなんか言ってやれ」

「ケーマさん軽いですから大丈夫ですよ。でも、これなら昼過ぎには山頂につくんじゃないですか?」

「……ったく、ロップはどうだ?」

「冒険者としてはどうかと思わなくもないけど、ケーマさんだし良いんじゃない?」

「あぁ、俺が間違ってたのか?」

ワタルの言う通り、このペースなら昼過ぎには余裕で山頂につきそうだ。やはり俺が足を引っ張っていたらしい。

……少し鍛えようかなぁ、俺も一応勇者なんだし、鍛えたら体力もつくだろうけど……

やめとこ。ダルいわ。

俺は宿で寝ていられればいいだけなんだし、自分を鍛える必要性が全くないもんな。そういう面倒で大変で危ないアドベンチャーはワタルにでもさせておけばいいんだよ。

俺はダンジョンマスターらしく部屋の奥に引きこもって寝てるのが性に合ってるな。

というわけで、山頂までやってきた。

山頂にフレイムドラゴンがいないことを確認して周囲を調べると、ダンジョン『火焔窟』に大きなものが入って行った跡がある。

事前にイグニにはしっかりと跡をつけなおしてもらうように頼んでおいたが、ばっちり注文通りの出来だな。

「……山頂にはいねぇみたいだな? どこかに隠れてるのか……つっても、まぁ十中八九あそこだろうが」

「ですね。間違いないでしょう、何度か出入りしているような跡がついてます。勇者として断言してもいい」

「『火焔窟』か……ま、そういう気はしてたからちゃんと装備も整えてきたわけだが」

俺達は『火焔窟』に突入……する前に、入り口から離れたところで今度こそ休憩をとることにした。

「飯や飯。キヌエの弁当あるでー」

「イチカは今晩の飯無いからな。今のうちにしっかり食べておけよ?」

「なんでや!? ウチはただロクコ様とご主人様の仲を取り持とうとしただけやっちゅーのに!」

「はっはっは、イチカの飲み物は唐辛子ペーストでいいか?」

「液体ですらない! 勘弁してぇなご主人様ぁ」

言いながらサンドイッチを食べる俺達。さすがキヌエさんのサンドイッチだ、野菜も 瑞々(みずみず) しくて美味しいな。

「……まだ日も高い、これならうまくすれば日帰りもできそうだな」

「おいケーマ、さすがにそれはキツイだろ。『火焔窟』の探索、それもフレイムドラゴンの居場所を探したうえでの討伐となったら相当時間がかかるだろうに」

「あー、そうだな」

おっと、うっかりしていた。実際はイグニの居場所も把握してるしその後の打ち合わせもできているから問題なく日帰りできると思うが、ゴゾーたちはそれを知らないもんな。

だがそれで帰るのが遅れるのはちょっとアレなので、 主導権(イニシアチブ) をとっておこう。

「……まぁ、『火焔窟』は慣れてる。上層なら罠も少ないし、ドラゴンがいそうな場所も大体見当がつく。まかせとけ」

「おいおい。おめぇ入り口までくるのにワタルに背負われてたじゃねぇか。普段家から出るのも面倒がるお前が慣れるほどここに来てるとは思えねぇぞ?」

ゴゾーからの指摘。……言われてみればそうだな。

「まってくださいゴゾーさん。ケーマさんがなんで『火焔窟』に慣れてるか……その仕組み、僕には分かりましたよ!」

「えっ」

俺はヒヤリとした。まさか、俺とイッテツの仲がバレ……いや、それはないだろうけど、何を言い出すんだワタル。

「思い出してください。『火焔窟』は、ゴレーヌ村にあるダンジョン『欲望の洞窟』とつながっているんです! ケーマさんはこのルートでこっそり探索を進めていたに違いありません!」

「お、おう。そうだ。ワタルにしては冴えてるじゃないか」

「本当かぁ? うーん、だがまぁ、それなら多少はつじつまが合うが……」

危ない危ない。びっくりしたわ。……っと、こっちからも言い訳を言っとかなきゃな。

「……まぁ、実は例の建築魔法使いから情報を買ってあったというのもある。ワタルの言うルートと合わせてクロとイチカに確認させたりもしていたから確度は高い」

「なるほど、凄腕の魔法使いからの情報に加え、実際に探索慣れしてるのはイチカとクロの嬢ちゃんか。それなら納得だ」

ゴゾーも納得してくれたようで何よりだ。俺はニクを撫でた。

ん? イチカも撫でてほしいのか? え、それより晩飯抜きを解除? ……おう、検討しといてやるわ。この探索という名の茶番でしっかり役に立ってくれればな。

昼食休憩が終わったところで、俺達は『火焔窟』へと入り込んだ。