軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見回り村長 後編

「そういえば食い物が保存食くらいしかないけど、みんなどこで買ってるんだ?」

全員がうちの宿や酒場でしか食わない、ということもないだろう。それなりに値段も張るし。なら自炊してるやつだっているはずだ。

「食いモンについては食料専門の新店舗を建てたから、そっちやろ」

と、ダインが指さした方向はこの村の住人たちが住む家が乱雑に建ってる地区だった。

場所としては、宿の裏の方、俺の予約してある広場分を挟んだ場所にあたる。

カンタラの鍛冶屋もその方向にあるけど、そっちはもう少し離れてるな。

……それにしても、食料専門の店舗を増やすくらいに人増えてたのか。

んじゃ、次は住宅地区を見てみるかな。俺はダインに別れを告げ、イチカと共に移動した。

「といっても、見どころはあまりないか。ただの住宅地だし」

「ところがどっこいご主人様。こっちみてみ?」

と、イチカが指さした先には掘っ立て小屋がある。

「次あっち」

と、イチカが改めて指差した先には、普通の木造住宅がある。数は少ないが、心なしか区画っぽく並んでいる。

ちなみにその間は徐々にグレードアップしていったことがうかがえるようになっていた。

「クーサンや手伝いの大工の腕が上がってな、かなり本格的な家が建つようになったんよ」

「……ええっと、このあたり川とかあったっけ? 水はどうしてるんだ?」

「カンタラの作った水差しの魔道具があるで。魔力か魔石があればいけるし、ゴブリンのクズ魔石でもある程度動く。冒険者ならちょいとダンジョンに行くのが水汲み代わりって感じやね」

なるほど、ゴブリン魔石ならダンジョンで取り放題だもんな。

……でもゴブリンの魔石って脳みその中に粒みたいなのがあるんだったよな? グロい水汲みだな、オイ。

「そのうち最初の方に建てたのも壊して新しいのにする予定やで」

「ふむ……」

実はうちの宿も最初に作ったあたりはちょっと直したかったり……いや面倒だな、ダメになるまではそのままでいいか。

住宅のある地区をさらに散歩していると、普通に洗濯物を干している住人や、 鍬(くわ) をもって出かける住人がいた。……鍬?

「ああ、見てみご主人様、あっちの方に畑もあるんよ。普通に野菜育てとるわ」

「……おおう。森もかなり切り 拓(ひら) いたな」

見ると、思っていた以上にがっつり開拓されていた。……少し環境破壊が気になったが、それでもメニュー機能でマップを確認すると森の1%分にもなってないあたり自然が豊富というか豊富過ぎるというか。

……ま、環境破壊しても【グロウウッド】みたいな魔法スキルもあるし、いざとなれば植林もできるか。魔法って便利。

「おー、イチカと村長さんだべ。元気してるだかー?」

「村長は机仕事ばっかしてねーで、少しは体動かせなー。畑手伝うけ?」

「ほれ、これ持ってけ。ウチでとれた野菜だぁ」

散歩、じゃなくて見回りを続けていると、なぜか田舎者っぽく訛ってすっかり農家してる住人から野菜を貰う。……お前ら普通の冒険者だったよな? 顔に見覚えあるぞ。

「……というか、普通に収穫できてるんだな。いつから畑作ってたんだ?」

「この春からだし、大体1、2カ月ぐらいでねーか? ダンジョン周りは魔力が豊富だからそんくらいあればだいたいのモンは 収穫(と) れるだよ」

「ワシら農家からしたら一等地だべな。ま、やり過ぎると土が痩せるけんども」

「んだども、肥料まけば大丈夫だよ。ゴブリンの死体も取り放題だぁな」

マジか、野菜の成長が早いのって魔力関わってる仕組みだったのか。そしてゴブリンの死体はやはり肥料なのか。血なまぐさそうな野菜だ。水汲みに肥料に、ゴブリンは大活躍だな。

あとお前ら普通の冒険者だっただろ、いつから訛っていつから農家になったんだよ。

「いやー、実は実家が農家で俺五男でさ……自分の畑って、憧れてたんだよね」

「じーさんの口調真似てみたんだけど、やっぱこう訛ってると農家って感じするじゃん?」

「えっお前ら素は訛ってねーの? 俺こっちの方がキャラ作ってるんだけど」

よく分からんが、おまえらが村人生活を満喫しているようで何よりだよ。

と、貰った新鮮とれたて野菜を齧りつつカンタラの鍛冶屋へ行く。

「このあいだの【グロウウィード】で 速成(・・) 栽培した野菜と比べたら天と地の差やな」

「ああ、結構うまい。ちゃんと野菜してるな……っと、お、カンタラいるみたいだな」

カンタラはカーンカーンと鉄を叩いて形を整えていた。……片手鍋作ってるのか。

俺に気付くとその手を止めて、ハンマーを持ったまま手を振ってきた。

「おー、ケーマ殿。戻ったのか、なんかツィーアに婿入りするって聞いたけど?」

「とんだ誤報だな。それよりそれは鍋か。魔道具じゃない普通のか?」

「ああ。注文が入った普通の鍋だよ。コンロに使うんで小さいのが欲しいってさ」

鍛冶屋は剣や鎧とかの武具ばかり作っていると思っていた時期が俺にもありました。

まー、普通に包丁とか以外にも、釘とか鍋とか作るよね。

「そうだケーマ殿! これをみてくれ、新作だ!」

「お? なんだこの、えっと、槍か?」

「ああ、手元のスイッチを押すと刃の付け根から火が出て、熱した刃にするんだ。コレで斬られたら、熱いぞ!」

で、カンタラは魔剣を自作することを目標として錬金術も身に着けている。

ちなみに火が出るといってもライター、せいぜいコンロくらいの火力だった。

「なるほど、ちょっと攻撃力が上がるな」

「欠点としては温まるまでに時間がかかることと、急に冷やされると壊れやすいってくらいか」

「結構な弱点じゃないか。戦闘開始してから火をつけても間に合わなくないか?」

「ずっとつけっぱなしにしておけば……あー、魔石ガンガン使うな」

ちなみに槍にした理由は、剣だと手元が熱くなって握れなくなるかららしい。

欠点だらけじゃねーか。

「まぁ要改善だろうな。むしろ刃から直接火が出るようにしたらいいんじゃないか?」

「むむむ、たしかに直接火が出た方が火を纏う槍っぽくてかっこいいな。しかしそうなると強度との両立が難しい、もどかしい所だ。素材をオリハルコンに……は、伝説の武器だな。黒鋼ではどうだろうか……ケーマ殿、ダンジョンの奥の方では黒鋼製のゴーレムとか出ていないかね?」

「今の所見てないな」

関節にオリハルコンを混ぜ込んだゴーレムなら、ダンジョンボスに検討してるけどな。

最近はもっぱらアイアンゴーレムをメインにしてたしそれで安定してたけど、そろそろさらに上の金属のゴーレムスポーンを導入するのもいいなぁ。

黒鋼ゴーレムスポーンは100万DP……やっべたけぇ。今の全財産使えばいけるか、ってくらいか。

「そうか、まぁもし見かけたら教えてくれ、外から買わなくて済むならそっちの方が安いからな」

「ああ。見かけたらな」

そろそろ他を見に行くかな。と、俺はカンタラに別れを告げた。

「しかしカンタラはんも結構すごいことしてると思うんやけど、ぶっちゃけご主人様が【クリエイトゴーレム】で魔剣作れるからなぁ……」

鍛冶場を離れる。えーっと、他に村にある施設は……

「あとは、宿やな。こっちは見る必要ないやろ、自分の拠点なんやし」

「一応見とくか。それと、ダンジョンも」

俺は結構大きくなってた村を見回り、宿に戻った。