軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お出かけ終了

前回のあらすじ。八百屋でバナナを買った。

さて、実は先程から俺達についてきている輩がいる。

マイオドールの知り合い……だろうか? どうにもみすぼらしい恰好をした成人男性で、いかにも盗賊って感じのヤツが2、3人。

ふむ。

領主がこっそり付けた護衛か何かだろうと思う。

その証拠に、俺たちへ一向に手を出してこない。これが本物の盗賊ならすでに何回かイチャモンを付けるなりマイオドールだけをさらうなりのチャンスはあったはずだ。

だがこれは丁度いい。マイオドールはまだどこかに行きたそうだけど、そろそろ帰る時間だから屋敷に戻りたかったんだよね。

「マイ様、屋敷に戻りますよ」

「ええっ、もう少しデートしたいです……ダメですか?」

「ダメです。あと護衛ですので。……あちらをこっそりご覧ください、盗賊らしき男がこちらを伺っています」

「えっ! ……そ、そうなのですか? まさかパヴェーラ家の手の者でしょうか」

あ、そっか。よその貴族がさぐりを入れてるという線もあるのか。

……ボンオドールが俺に護衛させたの、それを見せつけて情報を流すという線もあるな。ここは護衛の仕事に徹することでさっさと帰らせてもらおう。淡々と仕事であるという事を見せつければ相手も誤解しないだろ。

「ですので、今日の散策はここでおしまいです。良いですね?」

「む、むぅ……ケーマ様があんなの蹴散らしてくだされば」

「護衛の仕事は護衛対象を危険に晒さないことですので。……なんなら急いで帰るためにお姫様抱っこで運びましょうか?」

「えっ! ……お、お姫様抱っこ、ですか? それはその、あのお姫様抱っこですか?」

どのお姫様だっこかは知らないけど、お姫様抱っこで通じるってことはあるんだな。

マイオドールはしばらくもじもじとその青髪縦ロールをくりくり弄りつつ何やら考えて、改めて俺に向き、決意した顔で言った。

「それでは、その、お、お願いします!」

「ええ、では失礼して……クロ、お嬢様を運んで差し上げろ」

「はい」

「えっ」

いや、俺が運ぶとか一言も言ってないよ。

キョトンとした顔のマイオドール。ニクはそれをひょいと軽々お姫様抱っこして運んだ。

布の服ゴーレムのアシスト機能、本領発揮ってとこだな。

屋敷についたところで、ニクはマイオドールをおろした。

盗賊っぽいのは後を付けてきてはいたが余裕でぶっちぎった。疲れ知らずの布の服ゴーレムブーストの勝利である。……股関節がちょっと痛い。

「あ、足が速いのですね。それに全く揺れませんでした。見かけによらず力持ちなのですね」

「えっへん」

無表情は相変わらずだが、自慢げに胸を張るニク。あれだ、表情筋以外の感情表現が豊富になったね?

「……個人的にはケーマ様にしてほしかったのですけど。お姫様抱っこ」

「残念ながら俺は非力でして。力仕事はおおむねクロに任せてるのです」

「今度はケーマ様がお姫様抱っこしてくださいな」

「機会があれば、という事にしておきましょう」

「わたくし、これからどんどん成長しますから。今なら軽くてチャンスですよ?」

「なに、非力と言えど女性を抱き上げることくらいはできますので、今じゃなくても大丈夫ですよ」

「うふふふ」

「はっはっは」

口元を手で隠して笑うマイオドール。このロリ、小さくても貴族だな。

「さて、それではボンオドール様に報告しに行きましょうか」

「ではお父様の部屋までお姫様抱っこで……」

「緊急事態ならともかく、平時にレディに触れるなど恐れ多いですよ」

「むぅ、気にしませんのに」

気にしろよ。というか俺はもう帰りたいからな、さっさと行こうさっさと。

ニクとマイオドールを連れてボンオドールの執務室に向かった。

扉をノックし、許可を得てから入室する。中には執務机に向かって書類仕事をしているボンオドールが居た。万年筆をペン立てにさし、こちらににっこりと笑いかける。

「おかえり。ずいぶん早かったね。もう少し遊んでくるかと思ったが」

「ええ、ちょっときな臭い輩がいたので切り上げてきました。それと、これで護衛依頼は完了ということで良いでしょうか?」

「まぁいいだろう。どういう輩だったんだい?」

と、見かけた男たちの特徴を簡単に説明した。ボンオドールは特に表情を変えずに頷いた。こりゃやっぱりボンオドールの手配した護衛って線が濃厚かな? 良い口実になったよ。

「……で、どうだね? マイの婚約者になる決心はついたかい」

その言い方だと婚約者になることは決定事項みたいな言い方だな。

だが断る。

「その件は、お断りさせていただきます」

俺がそう言うと、隣に居たマイオドールが目に見えてしゅんとした。

「ふむ。……理由を聞かせてもらっても良いかね? 昨日は会ったばかりだったが、今日半日でマイオドールの事は多少なりとも分かっただろう?」

「まず、半日ではやはり会ったばかりと変わりないですからね? それに、実の所俺には好きな女がいるというのが大きいですから」

「ふむ。……そうか」

あ、これは諦めないな。次はどういう手でいこうか、と考えている顔だ。

だが俺はここでトラップカード発動! その思考に割り込みをかけるぜ!

「少々良いですか、ボンオドール様。この件について、ひとつ案がありまして」

「うん? 何かね」

「その前に――」

俺がちらりと――聞かせてもいいのか? と――マイオドールを見る。ボンオドールは意図を察してくれたようだ。

「マイ、少し早いが部屋に戻っていなさい」

「……むぅ。ケーマ様、わたくし、あきらめませんからね!」

ボンオドールに言われてマイオドールは少し渋りつつ退室した。

「マイに随分気に入られたみたいだな。何かあったのかね?」

「特に気に入られるようなことはしたつもりないのですが」

「まぁ、それは後でマイに聞かせてもらうとしよう。それで、提案とは何かね?」

俺はニヤリと笑う。

食らうがいい、俺の意趣返しを!

「では提案なのですが。……ぶっちゃけ、偽装婚約なら男である必要ないですよね?」

「……ん!? そ、それはどういう意味かね?」

「言葉通りですよ。俺は、マイ様の偽装婚約の相手にクロを推薦します」

ずい、と俺はニクを差し出した。

「理由はいくつかありますが……まず、俺のパーティーメンバーですから、冒険者的には俺と同じ功績を持っています。それにゴレーヌ村の運営についても実績があることを俺が全面的に保証しましょう。俺の実績は全てクロのおかげです、と」

そして俺が保証することにより、俺の手柄は実は全部ニクのおかげなんだぜ! と言い張ることができるのだ。異論は認めない。

ニクは俺の方を見る。そりゃ驚くわな。ボンオドールだって驚いている、やったぜ。

「さて、他に何か必要な箔はありますか?」

「……まぁこの際女であるのは良いとしよう。歳もマイに近い。……だが、その者は奴隷ではないか? その首輪は」

「これはクロの趣味です。一応俺が主人という事になっていますが、クロは首輪を付けていないと落ち着かない特殊性癖の持ち主だから付けているだけです。ボンオドール様にはご子息がいましたよね? つまり、マイ様と結婚したからといって領主になるわけでもなし……別段構わないでしょう。どうせ偽装婚約ですし、本当に結婚するわけでもない」

俺が適当なことを言ってまくし立てると、ボンオドールは少したじろいだ。

「む、うむ……? すこし検討しても良いかね」

「ではその検討の足しに、これを」

追い打ちだ。俺は、ニクの冒険者ギルドカードを取り出し、見せた。

これはハクさんから貰った……冒険爵だったっけ? たしかそんな爵位の、つまり貴族の証でもある Bランク(・・・・) のギルドカードだった。