軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会

なるほど、ふたなり少女(?)であるセツナにはそういう目的があったのか。

『つまりお前も【超錬金】とやらで、何か混ぜられてたのか?』

「そういうこと。……ボクを戻せるのはおばあちゃんだけだからね」

『そうか。詳細はよく分からないが、がんばれ?』

「うん、ありがと。今度何か持ってくるよ」

『礼なら、神の寝具とかいうモンの情報でも持ってきてくれ』

「神の寝具……うん、分かった」

というわけで、こちらも話を切り上げた。

セツナは小部屋に戻ると中断ボタンを押してさっさと帰って行った。

そして翌日。セツナとナユタは早速2人でダンジョンに潜ってきた。

今日はウェイトレスのシフトが入っていたようだが、ニクに代わってもらったらしい。事情を知っているためあっさり許可を出したが――まぁ、うん。レオナの対応がどうなるか楽しみだ。

「……私、もう先回りして部屋で寝てた方が良い気がするんだけど。むしろ寝てたいわ」

「俺のセリフを取るんじゃない。……まぁ気持ちは分かるけど」

「レオナが何かしてきたら私は速攻で寝るとするわ!」

部屋のベッドまで運ぶのは面倒だから、異変を感じたら戻っていいことにした。

そんな話をしているうちに、セツナ達はあっさりとサキュバス達が居る草原エリアまで到達した。ゴーレムで案内してやったので当然とも言える。……しかし、こっちが騙してる可能性とか考えてないのかね? 騙してないけどさ。

そんじゃ、様子見に徹しようか。

あらかじめ聞いていたが、ダンジョンの罠やモンスターによって妨害されることは無かった。

むしろゴーレムに案内され、他の冒険者にも遭遇することなくあっさりと迷宮エリアを通過する。

罠だらけと聞いていた螺旋階段エリアも何事もなく下りきり、勇者くらいしかまともに探索できないと言われている倉庫エリアでも、これまたゴーレムの案内で平和な散歩にしかならなかった。

エリアの境目となる階段まで案内されたところで、案内のゴーレムは手を振って去っていった。

「本当に歓迎ムードね。逆に罠じゃないの?」

「ウーマさんは信用していいと思うよ」

「私は直接会ってないんだけど、その根拠は……ああうん、いつもの通り無さそうね。まぁお姉ちゃんが言うなら私も信用するけど。で、この先に居るの?」

「らしいよ。……まずは様子見だね、慎重に行こうか」

階段を下りると、そこは草原だった。ダンジョン内なのに空まであった。

ダンジョンではたまにこういう環境ががらりと変わる部屋やフロアがある。初めて見る訳でもなかったので、セツナ達は落ち着いて探索を続ける。

草原には四角い建物群があり、そこにレオナと名乗る女性が居るとのことだ。

……詳しくは聞いていないが、レオナの居るフロアでは安全が保障できないとウーマは言っていた。つまりダンジョンの支配下にない何者か――おそらくレオナの同行者か、ペットが――居るのだろう。それは元々想定内だった。

「……でも、本当に集落だねぇ」

「ダンジョンの中に集落がある話は聞いたことあるけど……そんな感じなのかしら?」

建物たちを囲うように腰くらいの高さで木の棒を組んだ柵がある。ちょっとした門もあり、そこには真新しい木の看板で『熱烈歓迎! サキュバス村』と書かれていた。

「サキュバス村。……サキュバスかぁ。おばあちゃん居そうだね」

「サキュバスは敵にすると厄介だわ。歓迎って書いてあるしいっそ正面から聞いてみましょうか」

「そうしようか。えーっと……もしもーし、どなたかいらっしゃいますかー」

セツナが門でそう言うと、ガチャガチャといくつかの小屋の扉が開く。

出てきたのは、布というより紐というべき煽情的な恰好をした女性だった。

「はーい、冒険者の方? あら女の子?」

「サキュバス? 本当にサキュバス村なのか……」

「ええ。……ええっと、どうしましょう。初めてのお客様が女の子とは想定外だったわ」

「あ、そのね。レオナ、って人居る? 会いに来たんだけど」

セツナがそう言うと、サキュバスは身構えた。

「……レオナ様への追手!? であえ、であえー!」

「え、追手!? どこよ、ちょっと、槍もってきて!」

「レオナ様はやらせない!」

わらわらとサキュバス達が現れ、迫ってくる。

「ちょ、ちょっとまって! ボクはその、ちょっと話と頼みがあって!」

「レオナ様に?」

「そう! ……まぁボクの知ってる『レオナ』なら、だけど――」

その時、一番奥の部屋から普通の服を着た女性が顔を出した。

その顔は、まさにセツナ達の知っている黒髪赤目、レオナの顔だった。

「あ! 居た!」

「おばあちゃん! 本物!?」

「あら、セツナじゃないの。ナユタも。元気してたー?」

思わず戦闘態勢をとるセツナとナユタ。サキュバスは改めて2人を警戒するが、レオナはひらひらと手を振るのみ。1人だけ、まるで普通の親戚が数カ月ぶりに再会したかのような気楽さだった。

「ええっと、レオナ様。私達は手を出さない方が良いですか?」

「そうねスイラ、手を出さないで。私の可愛い孫娘だから」

「……あれ? レオナ様、17歳なんですよね? あんな大きい子が?」

「ええ、17歳の時の孫よ」

セツナとナユタはジト目でレオナを見る。にこにこと笑みで返すレオナ。

どうやら文句は受け付けていないようだ。

「おばあちゃん? ツッコミを入れたら負けかしら」

「まぁいいじゃないのナユタ。で、私に会いに来てくれたの? でもおばあちゃんじゃなくて、愛らしさを込めてれおなんって呼んでいいのよ? さぁ言ってみて? リピートアフターミー、れおなん♪」

「……それはさておき、ボクの体を元に戻してほしいんだけど」

「あら?」

セツナの問いかけに、レオナは首を傾げた。

「今の方が可愛いわよ? それにパワーアップしてるでしょ? 強くて可愛いなんて最高よねぇ、ふふふッ」

「この……ッ!」

「あらあら、怒っちゃダメよ。折角の可愛い顔が台無し――って程でもないか。怒った顔も可愛いわよセツナ。おばあちゃんお小遣いあげちゃう」

殴りかかろうとしたセツナに対し、レオナは背後から胸の谷間に銀貨を1枚差し込んだ。

目を離したりはしていなかったはずなのに、一瞬にして消え、背後に回り込まれていた。

「ひゃッ! い、いつのまにッ!?」

「大丈夫、セツナならそのまま鍛えれば私も超えられるわよ? 300年くらいあれば」

「300年……寿命が先に尽きるね」

「あら、セツナは 不老(・・) に してあげた(・・・・・) んだから寿命は無いでしょう? やったねセツナ、永遠に鍛えられるわよ!」

背後に立つレオナに向かって振り向きざまに裏拳を放つセツナ。しかしその拳はあっさり外れる。レオナはセツナの間合いから完全に出て、今度はナユタの頬を正面から優しく撫でていた。

「ナユタはまた素材があったら不老にしてあげるわね?」

「……ッ、そう、遠慮しておくわよっ! どうせとんでもない対価を押し付ける気でしょう!?」

「永遠の若さっていうのは女性の夢なのよ? 多少の苦痛や苦労は飲み込んでも十分お釣りがくるわよ。それに、別に悪い副作用じゃないんだから良いでしょう? ……ところでナユタ。セツナと2人旅? 宿は同じ部屋よね?」

「私達は姉妹なんだから、当然でしょうが! へ、へんなことはしてないわよ!」

顔を赤くしつつブンブンとナイフを振るうが、ナユタはそもそもセツナより戦闘に向いていない後衛職。素早さをウリにしているセツナの拳が当たらなかったのに、ナユタの攻撃は当たるわけがなかった。

「いいから、お姉ちゃんを元に戻しなさい!」

「うーん、残念だけど、それはできないわね……」

にこりと、レオナは無邪気に笑って言った。

「だって、面白くないもの」

短い助走を付けて殴りかかるセツナだが、その拳は涼しい顔で受け止められた。

受け止めたレオナの手のひらは、セツナの全力の拳を受けても微動だにしなかった。