軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

膝に矢を受けるレベルの何か

包囲殲滅陣……もとい、単に囲んでみたわけだが、サキュバスと直接接触すると魅了される恐れがある以上、村長として交渉することは自殺行為。

なので、必然的にゴーレム経由で間接的に交渉できるダンジョンマスターとしての対応になるわけだが――

『えーっと、ひのふのみの……うん? お前たちは9人だけか?』

「……ええ、9人だけよ」

『ふうん』

スイラを含むサキュバスたちは大人しく小屋の外に出てきたものの、9人しかいなかった。全員で11人って話だったはずだが……居ないのは、ミチルと、あと人間か?

9人を改めて見る。全員、布面積というより紐面積というべきな服を着ていて、肌色率がすごかった。この中には人間はいないよな、多分。いたとしたら痴女だ。

まぁ人間がいない方が都合はいいか。

ニクを森の中に待機させ温存したまま、俺はサキュバスのリーダーであろうスイラに向かって話しかける。

『なに、別に戦おうっていうわけじゃないんだ。ちょっと話をしとこうと思っただけでな。……俺の話、信じてくれるよな? その方がお互い幸せだろ?』

「……」

『よし、分かってくれたようで何よりだ』

スイラは無言で睨んできていたが、信じない=戦う=開戦なので、この魅了の通じないゴーレムの群れと戦いたくなければ信じたという事にするしかないわけだ。

だが実際俺の目的は戦いではないので、さっさと用件を伝えることにする。

『さてサキュバスの諸君、もしよかったらウチのダンジョンに就職しないか?』

「ダンジョン? ……あ、あなた、もしかして……ダンジョンコア?」

『あー、そんなもんだと思ってくれていいぞ』

スイラの顔が引きつった。ダンジョンコアになにか嫌な思い出でもあるんだろうか?

「……そ、その。『欲望の洞窟』でいいのかしら? そこのスカウトってこと?」

『そうだ』

「えっと、断ったら?」

『去るなら何もしない。まぁ、この近くをウロウロするようなら分からんが……』

「……ちょっと相談させて」

『良いだろう』

露骨に牽制しつつ、スイラ達の様子をうかがう。

しばらく待つと相談が終わったようだ。

難しい顔をするスイラだが、何と答えるだろうか?

「……支配下に入らなくて良いのであれば、言う事を聞いても良いわ」

『ほう、そこまで知ってるのか? 話が早くて助かるな。じゃあそれで良い』

「えっ」

いいの? とスイラが驚いた顔をした。

『ん? 言う事を聞いてくれるんだろ?』

「死ねとか言うのは聞かないわよ」

『こちらの要望を聞いて余計な事しないならそれでいい。無茶な命令はしないつもりだ。納得したか?』

「隠し事もするわよ」

『多少探るが、隠し通すっていうならそれは無いのと同じだ。ダンジョンに不利益でない秘密なら見逃そう』

「……何を企んでるの?」

『なに、無理にとは言わんだけさ。場が荒れるのを良しとしないと分かってくれて、その方針に沿ってくれるなら良い』

「ここまでゴーレムを集めておいて?」

『この方が話が早いと思ってな。実際、早かった』

この数のゴーレムを連れ出すことで、ダンジョンマスターであることに疑問は持たれなかったし、無駄な戦闘もなく交渉できた。

と、手付け金代わりに普通の食糧を置く。

『サキュバスでも、普通の食糧でも多少は大丈夫だろ、とりあえず数日分の食料を置いておく』

「……助かるわ」

……驚いた顔してるけど、まさか就職しないかと誘っておいて生活の保障もしないダンジョンマスターだと思ってたんだろうか?

「ゴーレムに食事の概念があることに驚いただけよ」

『ああ、まぁなんだ。あくまで権限のある代理だからな俺は』

なるほど、そっちか。

とりあえず、就職については心配しないようにと言っておく。

『ところで、まだ隠れている仲間が居るだろう? そいつらもダンジョンに就職でいいかな?』

「……ええと、お見通しだったようね」

『まぁな。でも別に文句言わなかっただろ? ちゃんと交渉だけ、って予定だったからな』

「分かったわ、信用しましょう。……でも、その、ひとつ言いにくいのだけど、私たちの仲間に1人だけ人間がいるの」

『ほぉ、人間か』

知ってたけど、初めて聞いたフリをする。

『それはできれば会いたくはないな』

「……それが、もうそのドアの後ろにいるの。一応、その、話は聞いてたみたいだし同意してるし、ダンジョンのことは他言しないように言うから」

『わかった。そっちで方針を言い聞かせてくれ。……とりあえずは指示を考えるから、それがあるまで適当に休んでてくれ』

そして、帰ろうとしたその時。

「……まってください!」

扉の向こうから声が聞こえた。勢いよく扉を開こうとして、ガン! 扉の前に立っていたサキュバスにぶつかっていた。

「あら邪魔よ。どなたかしら、退いてください?」

「ひゃ!? だ、だめです! 危険です!」

「どうかお下がりを!」

ガン、ガン、と何度も扉をぶつける中の人。

よろけかけつつも扉を押さえるサキュバス。

「いいえ、ここは私が誠意を見せなければいけないところです」

「なんでそんな嬉しそうな声で!?」

「だってここで私が出て行ったら絶対面白いことになるじゃないですか!」

誠意とは何なのか。嫌な予感がしてきちゃったぞ。

『あー、じゃ、また』

「ええ。ここは私に任せて――」

俺はサキュバスが扉を押さえてる間にゴーレムを連れて逃げようとする。

「ちょ!? 自重してください! お願いですからお下がりください、 レオナ(・・・) 様!」

レオ、ナ? 俺の動きが思わず止まる。

ドガン! と音を立てて扉を吹き飛ばし、中の人間が出てきた。

そして、その人間は、 黒髪(・・) をポニーテールにした 赤目(・・) の女性だった。

「はじめまして」

にっこりと、笑顔を浮かべる――レオナという、女性。

えーっと。

数え役満、って言えばいいんだっけ? こういうのって。