軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

はじめての人里

「いいかロクコ、冒険者がきたらゴブリンを5匹だけけしかけるんだぞ。それ以上はだめだぞ。メロンパンは『菓子パン詰め合わせ』で出すこと。一日2個までたべていいぞ」

「わ、わかった。ケーマも気を付けてね?」

と、そんなこんなでロクコを留守番にして洞窟をでることにした。

……

そういえば、初めてマスタールームの外に出るな。なんだかんだで土をとりに行くのや動かなくなったテストールの回収やらはニクにやってもらってたし。

……大気中に異世界人には有害な元素が含まれていたりしないだろうか。

マナとか魔力とか実は人体に有害なのでは……

「……行かないの?」

「お、おう、行くさ。今行くとこだから」

「早くいきなさいよ」

「いいか、押すなよ? 絶対押すなよ?」

「え? 押せって? 分かった」

ちょっと待てや翻訳機能?! うぉっ!

……ロクコにとんっと背中を押されて、マスタールームの外に出る。

普通に特に何事もなくダンジョンの中、コア部屋に出てきた。

「……よ、よし、なんともないじゃないか。ふう、ビビらせやがって……いや、そういえばそもそも魔法とか普通に使ってたし今更じゃないか俺。うん」

「ご主人様、大丈夫ですか?」

「あ、うん、大丈夫だよ? 全然余裕だって」

「じゃあ早くいきましょう。……なんで洞窟の出入り口で立ち止まってるんです?」

いや、俺そういえばダンジョンマスターだしやっぱりダンジョンから離れたらまずいことになったりしないかな?

ここはもっと慎重に慎重を重ねて……

「えい」

「なんで押す?! 押すなよ?!」

「え、はい、押しますね」

「何で?! 翻訳機能さん余計な仕事しないで?! あっ」

初めて(の一歩)を……ッ そんな、無理矢理……ッ!

……

うん、そりゃ何事もないよね。何もあるはずなかったね。

しみじみと一歩を踏みしめてると、ニクが俺の服をちょいちょいとひっぱってきた。

「ご主人様?」

「あ、ああスマン。それじゃあ行くぞ!」

そして俺は森に向かって一歩を……

「……押しましょうか?」

「あ、うん。お願い……」

*

あーもう、なんで安全地帯……とも言い切れないが、命の危険すらある外へ自分から行かねばならないのか。と、愚痴を零しつつも山道をニクと駆け抜ける。

なんで外へ行くかって言えば、それはもちろん安全のためである。情報がなければ安全かどうか判別できない、今回は情報の重みが今の仮初かもしれない安全に勝ったがゆえに人里まで降りるのだ。

ああ、働きたくない。

もちろん、ろくに運動もしない俺が山道をするすると駆け抜けられているのは布の服ゴーレムのおかげだ。「ツィーアの町まで走れ」っていったらしっかり走り抜けてくれるのだ。

でも、動かされてるだけなんだけど、すっごい疲労したので途中何度か休憩した。……なんでニクは平気なんだ……俺、明日筋肉痛確定だろこれ。

一日で着かないことを考慮して持ってきていた水や食料やらも、最初の休憩からあとはニクに持ってもらっていた。というか荷物運びは奴隷の仕事だから持たせて欲しいと言われて断れなかった。実際ニクは荷物抱えても余裕で走れるんだもの、俺は布の服ゴーレムの補助があってもいっぱいいっぱいなのに。

で、半日がかりで人里までやってきた。道中、危険なことは特になくてよかった。

途中、布の服ゴーレムのマナが切れたので魔石に魔力を充填したりしたくらいだ。……ケチらずにもっといい魔石使うべきだったな。帰ったら交換しとこう。

そんなこんなでやってきた人里、ツィーアの町だ。

水と食糧の他、ダンジョンからお金をいくばくか持ってきた。山賊がため込んでいて、襲撃の時に回収できたお金の一部だ。

5mくらいの石レンガでできている壁が町をぐるりと囲んでいて、出入り口である門にはがっしりしたいかにも兵士という門番が立っている。というか、かなりでかい。これ、町っていうか街かな。何人くらい住んでるんだろ……

とりあえずマップを見るに、東西南北に門があり、ここは西門のようだ。

「止まれ! ツィーアに何の用か!」

門に近づいたところで、警戒している門番に止まれと言われてしまった。

問題を起こしても仕方ないので止まる。

「ああ、すみません。田舎者なもんで。中に入るには何かいるんですかね」

「……質問に答えよ。ツィーアに何の用か?」

「えー、冒険者になろうかと思いまして住んでたところを飛び出してきたんですよ」

「ふむ。……そちらは奴隷か。奴隷はお前のものか?」

「そうです、たまたま拾いました」

「何故この時期に来たのだ?」

「ほら、この間山賊の討伐で騎士様が来てたみたいだから道中安全になってるんじゃないかとおもって。実際、ここに来るまで何もありませんでしたよ。平和っていいですね。……あれ、もしかして今の時期なにか大変な時期だったんですか? すみません田舎者なもんでそういうの知らなくて」

嘘は一切言っていない。……DPカタログ眺めてたら『嘘感知の魔道具(5万DP)』とかあったし、念のため気を付けておいた方がいいだろう。DP的には『ヒーリングのスクロール(10万DP)』の半分だし、要所では出回ってる可能性が高い。

あまり余計なことは言わないように気を付けないとな。

洞窟とか住人3人(うち一人ダンジョンコア)という田舎だし、情報収集のために冒険者になろうと決めていた。ニクはダンジョンで拾ったし、ここに来たのは騎士が来て道中(山賊のいたダンジョン)が安全になったからだ。

「ああ、そうか。すまないな。……ちょっと今、お偉いさんが来てるからな。さっきお前のいってた騎士様の関係だよ」

「そうだったんですか、お仕事大変ですね。では通っても? それとも何か要りますか」

「身分証はあるか? 無いならお前は銀貨5枚と銅貨1枚だ。奴隷の方は銅貨1枚。奴隷は首輪が身分証になるからな」

うげ、結構要るな……持ってきた財布を確認する。中には銀貨8枚、銅貨は30枚くらいはいっていた。うん、払えそうだが、中でどのくらい金がかかるか……

「ああ、銀貨の方は保証金だからな。冒険者になるならギルドで身分証もらえるから、それをあとで見せてくれれば戻ってくる。……でも田舎から出てきてこれから冒険者登録するってくらいなら金はないだろう? 冒険者ギルドの登録にも一人銀貨3枚かかるしな。兵士が冒険者ギルドまでついて行って身分証を確認できれば銅貨3枚でいい。先に言っておくが、銅貨2枚は手間賃だからな。今は手が空いてるからすぐ行けるぞ」

おう、つまり……銅貨2枚を節約するか、案内なしで冒険者ギルドに行って、登録して、戻ってきて、身分証みせて保証金を返してもらって、改めて冒険者ギルドへ……。うん、面倒くさい。これは頼んだ方がいいな。

「それはありがたい。お願いできますか?」

「それでは私がついて行こう。……おい、見張り替われ。案内業務いってくる」

銅貨4枚を支払う。まだじゃらじゃらあるな。

見張りの兵士が交代し、兵士と同行して冒険者ギルドへ向かう。

道案内も頼めて銅貨2枚なら安いもんだ、多分。

……金貨ははいってなかったけど、やっぱりあるんだろうな。貨幣はどれくらいの価値なんだろうな?

DPカタログのお宝項目に金銀銅の貨幣があったけど、それからすると100枚で繰り上がる感じだった。

ああ、しかし大通りに屋台があって、おいしそうな匂いが漂ってきておる。串焼きが多いのか、肉の焼けるおいしそうな臭いがする。 何の肉だろうか。

値段は銅貨5枚前後。うーん、銅貨1枚100円相当ってところか? そんな感じで覚えておこう。

「おい、気持ちは分かるが身分証ができるまでは勘弁してくれよ? 私は仕事なんだから」

屋台をじっと見てたら兵士にさっさと来いと呼ばれてしまった。

しかしこの兵士さんいい人だな。もしうちのダンジョンに来ても命は助ける方向でいこう。

しばらく歩くと、それなりに大きな建物のところまでやってきた。

目立つようにぶら下がっている木の板に、剣と薬の瓶とスクロールが描かれている。これが冒険者ギルドの看板らしい。

中に入ると冒険者らしき人が酒盛りしていた。真昼間から酒盛りとは……夜勤明けかな?

兵士につれられてカウンターに行くと、受付嬢が登録用紙を出してきた。この世界、羊皮紙とかじゃなくて普通に植物紙つかってるのか、と地味に感心する。登録用紙は手書きっぽいけど、印刷技術とかはあるんだろうか。

「名前は書けるか? 銅貨1枚で代筆するが」

「ああ。……ニク、頼む」

「はいっ御主人様!」

ニクを呼んで代筆してもらう。俺は日本語しか書けないのだ。

文字だけでは理解不能で、文章は脳内で日本語になって理解できるという翻訳機能。

だが日本語で書いた文章が逆に相手に読めるようにはならないのだ。実に面倒くさい、ニクを拾って本当によかった。

ん? ……兵士と受付嬢が俺とニクを交互に見ていた。

え、何? そんなに文字書ける奴隷が珍しいのかな。

「意外ですね……そんな小さい子なのに」

「ええまぁ、何かの役に立つかと教えてもらっておいたので」

「そ、そうですか」

若干引き気味の受付嬢。もしかして字が書けないのは色々ダメだったんだろうか?

……今更だけど、俺の見た目ってこのあたりで普通とはいいがたいよな?

ニクが黒髪だし行けるかと思ったんだけど、山賊とかヨーロッパ系な顔してたもんなぁ……

服は一応普通の布の服だけどもさ。

でも登録には顔は関係なかったようだ。

名前を書いて、さくっと登録を済ませる。

登録金として銀貨6枚……おう、残りは銀貨2枚と銅貨30枚程度……一気に減ったな。

「それでは登録を確認できたので私は戻る」

「あ、はい。ありがとうございました」

「気にするな、仕事だからな。次からは門の出入りは銅貨1枚だぞ」

ギルドカードを確認したところで兵士は戻って行った。

これで身分証もできたし、情報収集がてら依頼を見てみるとしようか。

「では、ギルドランクの説明をいたしますね」

「あっはい」

とりあえず先に身分証ができたけど、まだ説明が残っているようだ。