軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子供の喧嘩に親が出る

聞き間違いかしら、とロクコは666番コアを見る。決闘とか聞こえた気がする。

「え、えーっと。ごめん。なんだって?」

「695番。あなたに決闘を申し込むわ」

だがどうやら聞き間違いではなかったようだ。

「決闘……? えっと、それ、ダンジョンバトルとは違うの?」

「今、ここで、剣を交えて決闘を行おう、って、それだけよ?」

「それだけ、って……」

「あら、その腰の剣は、飾りかしら?」

ロクコはなめられないようにと気合を入れた姿で挑んでいた。

その一環で、腰に剣を差していたのだ。そう、まさに飾りである。今の今まで忘れてて、言われて思い出すくらいに。

「……さぁ、剣を抜きなさい?」

「いやその、飾りなんだけど」

「私なんて素手で十分? そう……なめられたものね。こちらから行こうかしら」

666番コアは炎に包まれた魔剣を出現させ、上段に構える。話を聞いてほしい。

ちらりと周りに助けを求める。629番コアと目が合った。目をそらされた。くそうオレンジ色のウサギめ……いや、盾になるかすら怪しいけど。

「ククク、いい気味よぉ695番。さっさと斬られちゃいなさい!」

「あら650番。あなたも混ざっていいのよ?」

「え、エンリョしとくわッ! 私はそーゆー野蛮なことしないの」

「……は? 決闘が野蛮?」

気が付くと、ロクコの前にいたはずの666番コアが、650番コアにまたも魔剣を突き付けていた。

「ヒィ?! だからアンタ、やめなさいってば!」

今度はずざざざっと 652番コア(ナメクジ) の後ろに隠れる 650番コア(ヘビ) 。

「ふん。まぁ、あなたのような雑魚に私の剣は 勿体(もったい) ないわ。……さあ695番、決闘しましょう?」

にこりと笑う666番コアに、ロクコはどうするべきか考える。選択肢は――

1、決闘に応じる。

2、逃げる

3、そんなことよりメロンパン食べたい。

……現実逃避の3を選びたいところだが、挑発にしかならないだろう。かといって2は背中を切られそうだし1は絶対無理。ちくしょう、せめてケーマにこの剣や服をゴーレム化してもらっておけばよかったわ、とか今更思っても後の祭りだった。

「あらあら、何か楽しそうなことをやっているわね、666番?」

そこに、救世主が現れた。

白いドレスに身を包んだハクが、にこやかな笑顔を浮かべてやってきたのだ。

「……第89番様。ええ、695番と親交を深めようかと思いまして」

「それにしては……決闘というのは、いささか物騒ではないかしら?」

「これは 異(い) なことを。第89番様も、第6番爺様と似たようなことをされて親交を育んでおられるではありませんか。なれば、私と695番がそれを真似るのも必定といえましょう?」

「ふふふ、小生意気ね。躾がなってないのではなくて? 6番」

「ククク、なんだ89番。躾がなっていないのは695番の方ではないか?」

と、さらに黒い鎧を身にまとった『大魔王』こと、6番コアが混じる。

ハクと6番コアの間には、バチバチと火花が飛び交っていた。

「そうかしら? 最近あなたのとこの子がウチにちょっかいをかけてきてうざったいのよ。もっとしっかり 手綱(たづな) を握っておいてもらえないかしらね」

「ほう、それは知らなんだ。もっとしっかり、儂にも分かるようにやれと伝えておこう」

「ふふふ……」

「クックック……」

6番コアは黒い刀身の剣を抜いた。

応じるようにハクは白い槍を構えた。

ロクコと666番コアの決闘騒動であったはずが、いつのまにかハクと6番コアの決闘になっていた。じりじりと焦げるように空気が張り詰める。

「ごるぁああああ! お前らァ! 俺も混ぜろォオオオ!」

『龍王』こと5番コアがその黒いドラゴンの巨体をぶん回しながら、空を飛んで乱入してきた。

ずしぃん! と着地で空気を震わせ、ガォォォォォオ! と吼える。

その咆哮を間近に受けたロクコは、腰が抜けて座り込んだ。少し自信はないが、漏らしてはいないはずだ。

……一方、666番コアは平然と立っていて、 三竦(さんすく) みトリオは気絶した。

「89番をブッ潰す! 6番、手伝え!」

「儂に指図する気か。まず貴様から潰すぞ」

「あぁ?! まずは『裏切者』からに決まってるだろうが?!」

「2人同時でもいいわよ私は」

「ぬかせ」

槍を振り、準備運動をしつつハクは二人を挑発した。

……一触即発の空気に、周りのコアたちは巻き込まれないようにといつの間にか逃げていた。私も逃げたい、とロクコは思う。しかし当事者だ。もうこれ既に当事者なのか怪しいけど。ていうか足動かないし逃げれない。

『はーい、ストップ。3人ともそこまで』

突然の『父』の一言に、3人の動きがぴたりと止まった。

『盛り上がってるところ悪いけど、ここではダメだからね?』

「あら、申し訳ありませんお父様。すこしはしゃいでしまいましたわ」

「ぐうぬぬ……せっかくのチャンスが……」

「儂は悪くないですぞ父上」

それぞれ、武器を収めて、6番コアに至っては軽口をたたいてみせる。

辺りが一瞬にして和やかな空気に包まれた。もちろん表面上だけだが。

『しかし、6番、89番、5番。君たちはもっと親交を深めて仲良くするべきだと思うんだよ。3人とも若い子の面倒をよく見てくれているわけだし、後進は先輩である君たちを見て学ぶんだから。……さ、握手握手』

『父』に促され、にっこりと作り笑顔を浮かべて握手する大魔王とハク。そしてそこにちょこんと爪の先を乗せる龍王。

実に、背筋が凍るような光景だ。

だがモニターに映った『父』は、それを見て満足そうだった。

『けどまぁ、3人はいっそ一度きっちり勝敗を決めておくのもいいかもしれないね。一応DPランキングで順位はついてるけど、それ以外で』

「……そうおっしゃるということは、何かアイディアがおありなのですね? お父様」

『89番は察しがいいね。その通りだよ』

にこり、と『父』が笑いながら言う。

『君たちの後輩にダンジョンバトルしてもらおう。ちょうどそこに、600番台の後輩が揃ってるしね? ……ああ、650番だけマスター居ないから、ハンデとして651番、652番も一緒にということで』

「……へ?」

「ふむ、決闘――ではないけれども、まぁ良いでしょう」

「……はっ」「むっ?」「ほぇ~」

三竦(さんすく) みトリオも目を覚ましたようだ。

……なんか、よくわからないうちにダンジョンバトルをすることに決まってしまった。……ケーマに 相談(まるなげ) したい、とロクコはこめかみをおさえた。