軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:ウゾームゾーの今

寒冷地帯にあるイザム湖。その湖に浮かぶ孤島に、湖が凍結する冬のみ行けるダンジョン、『氷鏡迷宮』があった。

このダンジョンは魔剣が出やすいという話もあり、それなりに人気のあるダンジョンだ。

今まさに、氷でできたような神秘的な回廊を、二人組の冒険者が周囲を警戒しながら探索を進めていた。

「うーん……」

「どうした、ウゾー?」

「いや、魔剣がみつからないなぁってさ、ムゾー」

「……まぁ、出るところではホイホイ出るもんらしいけど」

ウゾームゾーのコンビは、命の恩人に返す魔剣を探すべく魔剣探索を続けていた。

自分達で1年という期限を設けたものの、いまだに魔剣は見つかっていない。

貯蓄も進めてはいるが、未だに魔剣を買えるほどでもない。

「ま、ケーマさんもあまり無理しなくていいっていう話だったしな」

「『無理して死なれるくらいなら2年かかっても魔剣返せ』だっけ? ギルド経由で届いたメッセージ。……いやぁ、やっぱりケーマさんは器が違うな、ウゾー」

「もっと頑張って早く恩を返したいな! ムゾー」

「というか、ウゾー。ケーマさんだが、村長になったらしいぞ?」

「えっ、冒険者辞めたのか?! それ俺聞いてないぞムゾー!」

「いや。冒険者しながらだ。あの例のダンジョン……『欲望の洞窟』だったか? そこを中心に村ができたんだと……おっと」

襲い掛かってきた雪玉のようなモンスターを軽く切り捨てる。

スノーボール、通称「雪玉」と呼ばれるこのダンジョンによく出るモンスターだ。単体では非常に弱いのだが、集団になると合体して 雪だるま(スノーマン) となる厄介な敵だ。

「しっかし、あのダンジョンはかなり優良なダンジョンになってるらしいぞウゾー」

「そうなのか? ムゾー」

「なんでも、アイアンゴーレムが産出されたらしい。魔剣もそれなりに」

「……ここで魔剣出なかったら、俺らも『欲望の洞窟』に戻ろうか? ムゾー」

「魔剣が用意できていないのに顔を出せるか? ウゾー」

「できないな! 愚問だったよムゾー」

氷の迷宮を歩き回り、宝箱を探すウゾームゾー。途中、アイスゴブリンやらブルーリザード、コールドウルフといった寒冷地特有のモンスターたちを退治していく。伊達に一人前と称されるCランクの二人組ではない。

罠も警戒しているが、このダンジョンはさほど罠がなかった。せいぜい足場が氷張りですべりやすくなっているくらいだが、スパイクを履いているのでこれも問題ない。

そして、『氷鏡迷宮』を探索すること2日目、ついに宝箱が置いてあるのを見つけた。2日潜って、ようやく1個だ。もっとも、人気のダンジョンということもあり同時に潜ってるパーティーも多く、宝箱が見つかる分、この二人はまだ運が良い方なのだが。

「……これが割と普通のペースなんだよな、ムゾー」

「最初に潜ったってのもあるけど、『欲望の洞窟』は宝箱よく出てたなぁ」

宿の事もあり、いろんな意味で『欲望の洞窟』と他のダンジョンを比べてはいけないな、とウゾーは思った。

「で、中身は?」

「ちょっと待て。……うん、罠はない、かな。ウゾーも見るか?」

「ああ。部屋に閉じ込められるのはもう御免だからな、ムゾー」

例の『魔剣お試し部屋』閉じ込め事件から、ウゾーとムゾーはそれぞれ罠への理解を深めるよう 研鑚(けんさん) を積んでいた。ダンジョンに潜りつつ文字通り命がけで学んだこともあり、今やムゾーだけでなく、ウゾーも斥候職としてもやっていけるレベルであった。

罠が無いということを念入りに確かめた後、少し距離をとって棒を使い宝箱をあける。

……どうやら本当に罠は無かったようだ。

「で、中身は?」

「中身は、えーっと……剣ではないな。魔道具か? ウゾーも見るか」

ムゾーが手に持った魔道具をウゾーに渡す。

形状としては、野球ボールによく似ているそれは、どのように使うかは分からないが魔石をセットする箇所があり、魔道具であることがすぐ解る。

このダンジョンでよく産出するという製氷の魔道具かもしれない。だとすれば、売ればそれなりの金になるだろう。

「ふむ? これはなんの魔道具だ? 場合によれば売って魔剣を買えるかも」

「それはギルドへ持ち帰って鑑定してもらうのが一番だろう。ま、今回はこれで十分な収獲だったとしないか? ウゾー」

「ああ、魔道具抜きにしても途中で狩った魔物の素材もあるし、一旦戻るか」

ウゾームゾーは、今回のところはこれで引き返す、ということにした。思っていたよりも寒かったし、はやく町に戻って温かいスープでも飲みたい、と、急ぎ足で来た道を戻るのであった。