軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女の帰還

また来るとか言ってたから復活してすぐ来るかも、なんて思ったけどそんなことも無く、聖女はそのまま一休みしてから村長としての俺を訪ねてきた。

封印の残り時間はあと1時間といったところだった。

「非常に残念ながら、私では解決することができませんでした……本国からの帰還命令さえなければ、まだ滞在できたのですが……」

「まぁ、仕方ないですよ。毎日ダンジョンに潜っていたのは見てました、ありがとうございました」

「そう言っていただけると……生憎、もう時間が無く、もうここを発たなければならないのです」

できればもう来てほしくないくらいだけど、DP収入的には居てくれると……うん、厄介さを考慮すると来ないでほしいな。

「それではウーマ先輩、またいずれ」

「……ウーマ先輩? 誰の事ですか?」

「…………いえ、間違えました。ダンジョンの奥に、村長様に似た声で喋るゴーレムが居たのですよ」

うん、今使ったな? 嘘を見破るスキル。だが俺は嘘はつかないぞ。

「ふむ、喋るゴーレムですか。……前に奥まで行ったことがあります。声を真似されたのかもしれませんね」

「そうですか……ちなみに、ウーマと名乗っており、このダンジョンのボスでした。親分……脅威となる魔物とは協力関係にあるようでしたね。なにかご存じでは?」

「残念ながら、お話しできるようなことはありませんよ」

「……本当に?」

「ええ、本当です」

隠し事だから「聖女には」話せない内容なだけだよ。ホントホント。

もし「隠し事は無いか」と聞かれたら「そりゃ、これでも冒険者ですからね」ではぐらかす予定だったけど、特にこれ以上突っ込まれることは無かった。なによりだ。

「……では、村長様。またいずれ」

「ええ。機会があれば。……あ、お土産に菓子などいかがです? シュークリームといういいのが手に入りまして。ひとつ金貨1枚で5個まで、どうです?」

そして聖女はシュークリームと共に、聖王国へ帰って行った。

……旅費足りるのかな? と敵ながら心配になったのはここだけの秘密だ。

*

「お! 見てケーマ! モンスター呼べるようになってるわよ!」

「おう、壁や通路、部屋も作れるようになってるな」

聖女が帰って1時間後、無事に【トリィティ】の効果は解除された。DPカタログを見て無事に武具アイテムやトラップ、モンスターが交換できることを確認し、ついでにダンジョンコアをロクコの部屋に移動しておいた。

聖女が宿に泊まってたから、一番安全なダンジョンの奥へ置いといたのが、まさかダンジョンコアの移動を封じられるとは思わなかった。肝心な時に使えないでなにが 緊急脱出(キャスリング) だと言いたい。

「それとなんかメニューの機能が増えてたわ。私が見つけたのだとダンジョン内に声を届けるのと、出撃ポイントの設定があったわ」

「もうちょい早く欲しかったなぁそれ」

このダンジョンで徐々にできることが増えていくのって、【トリィティ】をしのぎ切った実績ボーナスとか、ダンジョンのレベル上がったとか、そんな感じなのかもしれない。とにかく、ダンジョンを広く深くしていけってことだろう。

……なんかこう、実績制とかだとしたら、もっと色々極端な事してみるべきだろうか。階層だけ100階まで増やすとか。階段部屋のみで50万ポイントかかるけど。

「リンはまだ居るけど、これでようやく枕を高くして寝れるな」

「ケーマってホント寝るの好きよね」

「人間の三大欲求、本能って奴だからな。じゃあ俺は寝る。ひたすら寝る。3日くらい連続で寝る。途中でトイレ行ったり飯食うかもだけど寝る。何もないと思うけど、なるべく起こすんじゃないぞ」

「はいはい、邪魔なんてしないわよ。おやすみケーマ」

ロクコに見送られ、俺は村長邸の自部屋へ向かう。

そしてゴーレムにオフトンを用意させ、おもむろに布団に入り込むと、そのまま寝入った。

そして3日後。

俺はようやく起きて、久々にロクコの部屋に行くことにした。

いやぁ、良く寝た。ぐっすりだ。寝覚めもいいし、少しくらいなら働いてもいいかなって。

そしたらロクコの部屋では、ハクさんがにっこりと満面の笑みでロクコをナデナデしていた。ロクコを膝の上に座らせて。

「おはよう、ケーマさん?」

上機嫌な笑みのまま、ハクさんが俺に挨拶してきた。

アッハイ。おはようございますハクさん……あの、いつの間に来たんですか?

「昨日のお昼に来たのよ? 今日帰るところで、ケーマさんが起きるのを待ってたのよ、私を待たせるなんて、いい御身分ね」

おいいいい?! なるべく起こすなとは言ったけど、ハクさん来てるんなら起こせよぉおお?! 最近忙しかった反動で思いっきり寝てたじゃねぇか!

トイレ以外で部屋から出なかったのが仇になったか! 布団の中でDP交換して、後始末は歯磨き含めて『浄化』で一発だからな!

と、俺は心の中で盛大に取り乱した。

「ちょっとハク姉様。ケーマはものすごく頑張ったから休ませてあげてるって言ったでしょ? ちゃんと3日で起きてきたんだから良いでしょ」

「ああうん、そうだったわねロクコちゃん。ロクコちゃんが言うから私を待たせた件は不問にしてあげるわね」

「あ、ありがとうございます」

「それで、今日は色々お話を聞きたくて来ちゃったの。ここのところずっと忙しくてロクコちゃんに会いに来れなかったんだから。ホント戦争って面倒くさいわ、儲かるけど」

ああ、ハクさんくらい偉い人だと戦争ってそういう認識になるんだ。

あと、戦争についても噂で聞いてたけど、本当にやるのか……

「兵士が削れればその分定期的に入ってくるDPが減るから、魔王軍からしてみればこっちの稼ぎを削るのが大きな目的ね。この程度で揺らぐほどの足場じゃないとはあっちも分かってるでしょうけど、そろそろランキングの時期で、気が立ってるのよ」

ああ、魔王もダンジョンコアだって言ってたなそう言えば。

「えーっと、ランキングってなんですか?」

「あら、知らないの? 1年に1度、ダンジョンコアの集会があるのよ。そこで保有DPのランキングが発表されるの。去年は総合7位だったかしら」

そういえばだいぶ昔にロクコからそんな事を聞いたことがあった気がする。

というか、7位って。ハクさんより上に6人いるのかよ。いや人じゃないけど。ダンジョンコアだけど。

「で、6位が魔王軍総帥、6番コア。通称は『大魔王』ね。コイツ自身は別に何もしてこないからいいんだけど、魔王軍派閥の雑魚がポイント稼ぎにちょっかいかけてくるのよ」

「色々面倒なんですね」

「ええ。なんなら少し被ってくれてもいいわよ?」

それは全力で遠慮したい。

「ああ、話が逸れたわね。それで今回の件について、一応、私の方から送り込んでる手駒からも話は聞いてるわ」

「……ハクさんの手駒、ですか?」

「ええ。言ってなかったけど、酒場のマスター、ウォズマと、大工の才能がある冒険者、クーサンよ。面識あるでしょう?」

ウォズマとクーサン、だと……? どっちもこの村の幹部、むしろ片方副村長じゃないか。というかクーサンまでハクさんの手駒とか、手駒の範囲広いな……いや、そもそもこの人は冒険者ギルドの頂点だった。そりゃ人間人外併せて手駒は豊富に決まってたわ。

「手駒と言っても、どちらもダンジョン関係外のニンゲンね。DPやダンジョンマスターの話はしないように」

「あ、ハイ」

「それで、ウォズマとクーサンの報告からするに、結構まともに村長やっているそうじゃないの」

「適当に仕事を押し付けてるだけですよ」

「ふぅん、まぁそれならそれでいいわ。ウォズマは元々はウチの城で働く文官だったのよね。だから内政については任せて間違いないわ」

それは良い事を聞いた。帝国の城で働く文官とか超エリートに違いない、遠慮なく面倒な仕事をブン投げよう。

「で、少し忙しくて来れない間に色々あったみたいで、それはもう色々聞きたいことがあるのよ。……いいかしら?」

「は、はい。なんでしょうか?」

「黒い狼と聖女の話もするけど……まずロクコちゃんに贈った指輪についてね?」

俺はまず本能的に土下座した。