軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女と火焔窟

「……ふぅ、ひと仕事したわ……」

「お疲れ、ケーマ」

ウーマと命名したメッセンジャーゴーレムを操り、俺自身は壁の向こうのさらに通路を曲がった先で声を送っていた。

リンには「俺、名前は人語ではウーマだから、そのあたりヨロシク」と言って何とかごまかした。

尚、命名モンスターのリストに「ウーマ」は増えなかった。そういえばテストールもリストになかったし、【クリエイトゴーレム】で出したゴーレムは対象外なんだろう。

声でバレる可能性も十分あったが、ゴーレムでは再現しきれない高音成分が欠けた……いわゆる『音割れ』状態の声だし、なんとかごまかせてるといいなぁ。

何か聞かれたら『このフロアに最初に来た冒険者の声を真似て擬似的に声に出してるだけだ』でゴリ押すか。

ゴーレム使って俺の声を擬似的に出させてるってのは、仕組として嘘じゃないしな。

というか、リンのせいで聖女を撃退できそうに無かったから俺が出ざるを得なかった。子分同士なかよくしようぜ、そして帰れ。

……本当はリンに聖女を守らないでほしかったんだが……くそう、話が通じなかったぜ。

ともかく、俺が陣取ってた壁の向こう側……今聖女は『火焔窟』へつながるマグマエリアへ向かって進んでいる。

あと「行っても無駄だ、お目当てのモノはこの先には無いぞ。アレは片付けたしな」って言ったけど……目的のモノ、ダンジョンコアは『火焔窟』のダンジョンコアがあるし、片付けたってのも嘘だ。うん、本当の事は言ってないな!

しかしやはり聖女、嘘を見分けるようなスキルを持っていたか。ハッタリかもしれないけど、あると想定しておいて問題はないだろう。

……ゴーレム越しでも有効とは凄い代物だな。やっぱりハッタリか? とも思うが、金遣いの荒さを考えると、金に飽かせて覚えてそうだ。むしろ国から優先してレアスキルを保有させられてる可能性もある。

聖女は生還率はともかく帰還率100%なんだし、レアスキルを覚えるスクロールを使っても無駄にならないもんな。

ともかく、俺は倒されて、道を空けることになった。ただしその道はウチのダンジョンコアには通じていない。これで十分時間は稼げるだろう。

ほっと一息つく。せっかく用意したゴーレムやトラップ、リンに試した毒の余りで作った毒矢なんかも無駄に終わり、仕方なく俺が出る羽目になってしまったが……

……これで、封印終了までの時間稼ぎができた。『火焔窟』に行ってくれればあとはどうにでもなるだろう。あちらは封印されてないんだから。……されてないよな? 繋がってるからって。

封印されてたら文句言ってきてるだろうし。

「やりましたね、マスター。ロクコ様」

「……レイは弓矢ゴーレムの使い方、だいぶ上達したな」

「はい、ゴーレムは私が唯一ダメージを与えられる手段ですから……やりこみました。お給料のDPで弓術のスキルスクロール手に入れたり……ふふ、それでもニク先輩には勝てないんですけどね。なんですあの先輩? 本当にただの獣人の子供なんですか? ああ、飛んでくる矢を見てから回避余裕とかアハハありえないですってアハハハ」

レイはどこか遠い目をしつつ、乾いた笑いをして感慨深げに言った。

まったく、リンってばウチの配下の努力を無駄にしてくれやがって。

そのリンは今、聖女と共に『火焔窟』へつながるロクコの作ったマグマエリアの入り口に来ていた。

以前はここに入るのを躊躇していたが、別にマグマがダメというわけではない。単に暑苦しそうで、寝るのならもっと穏やかな場所が良いという、誰もが納得する理由だった。

尚、飲み水の代わりにマグマを飲んでも大丈夫らしい。……マグマはH2Oじゃない、理論的に考えてふざけんなとしか言えない。

『親分。この先、雰囲気が違いますね』

『……この先は、行ったことが、無いからな、道が、分からない』

ひょい、ひょいっと飛び石の足場を進む聖女とリン。

何気に聖女、リンのこと親分呼びするのに抵抗なくなってないか?

「……リン相手に半端なゴーレム出しても意味ないな……」

「せっかく用意したガーゴイルたちも出番ないですからねー」

「よーし、ちょっかい出すわよ。フェニ、いったれー!」

何も襲い掛かるものがないと不自然かと、途中、フェニが襲い掛かる。

『む! これは……不死鳥?! つ、つ、捕まえます!』

『うん? ふむ、あれもウーマの配下か?』

『テイム、テイムさせてください、不死鳥は初代聖女のパートナーでっ! わ、私もッ、私も不死鳥をパートナーにッ!』

「フェニ、逃げなさいー?!」

聖女がフェニを捕らえようとしたので、さっさと逃げた。聖女がマグマの海に飛び込んで追いかけようとしていたが、リンに止められていた。

『子分のもの、だからな。ダメだぞ、欲しいなら、ウーマに、頼め』

『うう……だ、ダンジョンコアを破壊した暁には……! 崩れる前にこちらへ……!』

ダンジョンコアを諦めるならフェニを差し出すって言ったらどうなるかな……と思ってたらロクコに睨まれた。うん、だめだよね、うん。

そして、『火焔窟』へ通じる扉を見つけ、そこをくぐるリン。そして、聖女。

ようやくこれで安心して寝られる――

『――親分、ここから先は別のダンジョンのようです。……おそらく『火焔窟』ですね。引き返しましょう』

『む? そうか。別のヤツの、家か。なら、また今度、にしよう』

――と思った矢先、聖女がリンに背を向けてくるっと引き返す。

……え、なんで分かったんだ? 聖女、何モンだよおい……

「……どうするのケーマ?」

「こうなったらもう迎え撃つしかないだろ、ボス部屋に誘導するぞ。仕方ない……できれば取っておきたかったが、新型ハニワのお披露目といくか。それと、対リン用特殊ゴーレムを使う」

「あれ、ケーマ、そんなのいつの間に用意したのよ」

ちゃんと準備してるに決まってるだろ。死にたくないんだから。