軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

で、どうする?

黒い狼との交渉を中断して一旦宿に戻った俺に客が来ていた。頭にターバンを巻いてる男……えーと、誰だっけコイツ。……あ、商店の店長じゃないか。金貨100枚預けた奴。名前忘れたけど。あれ、そもそも聞いてなかったっけか?

そいつは俺の姿を見るなり、慌てて叫んできた。

「け、ケーマはん! たたた大変やぁ! だだ、大事件やぁあ! む、むむむ村の一大事やあああ!」

一刻も早く伝えなければ! という意思が伝わってくるが、何が大事件なのかさっぱりわからん。誰か刺されて死んだのか?

「大事件? 何かあったのか、金の運用に失敗でもしたか?」

「そ、それは大丈夫や! お、おおお、落ち着いて聞くんやで?! ええか、ええな! じゃあいい知らせと悪い知らせ、どっちから聞く?!」

お前が落ち着け。いい知らせと悪い知らせがあるとか初耳だぞ。

「じゃあいい方から聞こうか」

「いい方な、うん、それな。……第4階層が攻略されたんや!」

第4階層……あ、そういえば謎解きエリア直してなかった。やべっ。

「あー、うん、それで?」

「勇者様の報告にあった通り、その奥は螺旋階段が続いとったそうや、まぁ、今回はここでいったん戻ってきたっちゅー話やけど……む、なんやケーマはん。反応が薄いで、さてはケーマはんもとっくに攻略済みやったんか?!」

「まぁな。で、いい知らせっていうのはそれだけか?」

「や、それがな。謎解きの扉がメタメタに壊れてて、素通りできる状態やったんよ。しばらく見てたけど直る気配も無かったっちゅー話や。今なら魔剣がわんさか眠る第5階層へ行き放題っちゅーわけやな」

ああ、俺が直すまでは行き放題だな。はぁ、面倒くさい……

「で、ここからが悪い話や! ……ボスクラスのモンスターが第3、第2階層に出てきた可能性があるッ! これはヤバい! これ実は、バンチョはんが死体で見つかったんよ。Cランク冒険者で、そろそろBに手が届くかっちゅーバンチョはんがズタボロに殺されとった。やられてすぐだったんか死体が残ってたんやけど、鎧ごとガブッと食いちぎられたかのような跡があったそうや……」

うん、リン……黒い狼の話か。ていうか死体回収忘れてた、てへっ。つーか、みんな揃って忘れてたな。

……というか、どっちも黒い狼関連の話か。アイツが謎解きエリアをぶっ壊してくれたおかげで冒険者どもが螺旋階段エリアへ進めるようになって、けどそいつがダンジョン内を徘徊してる可能性があるからどうしたもんか、と。実際はコアルームで寝てるけど、そこは分かってないしな。

「……どうしたらええと思う、ケーマはん!」

「ギルドに調査依頼なり討伐依頼なり出したらいいんじゃないか? ……報酬の金は預けた運営資金から出してくれ。あとは任せた」

「お、おお! せやな! 任されたで!」

商人は走り去っていった。

……うん、こっちで解決してくれるならそれはそれでアリだな。別にどうしても仲間にしたいわけでもないし。

あ、ていうかこれまた転換期ってことになって見張りの依頼が来るんじゃないか?

面倒だな。今の俺はやることがたんとあるってのに。村長権限で断れたりしないかなー。

*

謎解きエリアは見張られてて修理できる状況じゃないため、パーツだけ作っておくことにした。この機会に倉庫エリアまで冒険者が入ってこられるようにするのもアリだな。アイアンゴーレムは倉庫エリアの方が多く徘徊させてるし。

んで、変わり種ゴーレムで冒険者をおちょくるのもアリだろう。ダンジョンとしての特性をどんどん出していきたい。

というわけでゴーレム類をちまちま作りつつ、皆を集めて狼をどうするかの相談をする。といってもネルネとキヌエさんは宿の方で仕事してもらってるから居ないけどな。

「さて、今後の方針についての相談だ」

「ってかケーマ。ゴーレム作るのか相談するのかどっちかにした方が良いんじゃない?」

水をさすロクコの問いにニヤリと笑って「馬鹿め、面倒事を一緒に片付けられるんならその方が睡眠時間増えるだろうが」と言うと、ロクコは「ああ、ケーマだわ」と何かを納得していた。よくわからんが分かってくれて何よりだ。

「まず、ダンジョンの方だ。こっちは今のボス部屋とはまた別にフロアを増やしていこう。倉庫エリアの次はボス部屋、マグマエリア、新フロアへと分岐する形だな」

「今のとこまだ螺旋階段エリアでまごついてるけど、冒険者はすぐ倉庫エリアまで入ってくるんじゃない?」

「うん、仕方ないから新フロアへの入り口……新・謎解きエリア分だけDPつかってさっさと増築する。で、ここをさっさと作って、さっさと奥へダンジョンを拡げていくぞ。謎解きエリアとして必要なゴーレムは今作ってるから、設置はロクコに任せたい」

「分かったわ。新しい謎解きエリアの先はゴーレムで掘り進んでいくのね」

話がツーカーで通じる当たり、さすがパートナーだよな。

「……で、あの黒い狼はどうするの?」

「黒い狼……名前はリンっていうらしい。奴との交渉なんだけど……基本的に言葉は通じるが、話は通じたのか微妙だった」

「食われてたもんね、ケーマ」

メッセンジャーゴーレムがな。っと、これも補充しておかないとな。また食われてもいいように多めに作っとこう。

と、イチカが手を挙げて質問してくる。

「で、ご主人様。あの狼は何て言ってたん? ウチらには狼の言葉はさっぱりでなぁ」

「ああ、欲しいモノがあるか、とか聞いてみたんだ。狼の求めているモノは……住居、それと食料っぽい感じだったな」

「住居はあの部屋を、あとは食料をやればおとなしくしてるっちゅーことか」

「……大人しくはしてるな、うん」

今のところリンはゴーレムを食べて満足したのかまた寝てる。やれやれだ。

「とりあえず言葉は通じたから、あとは根気よく交渉すれば……面倒だが……なんとかなるかもだけど……面倒だが……」

「根気よく、ねぇ。なんかケーマに一番似合わない言葉のような、そうでもないような」

「マスターは、けっこう働いてる気がしますね」

……うん、俺、そういえば寝てないときは結構働いてるな?

「他の人が遊ぶ分の時間を寝てるわけやモンな、ご主人様は」

「プラスマイナスで寝すぎに一票ね!」

「起きてる時間は短いのに、マスターの仕事量は普通より多いんじゃないでしょうか?」

おい、話がそれてる。俺を褒めるのはいいが今は狼の話な、狼の。

「で、狼……リン相手に交渉するわけだけど、引き続きゴーレムを使って交渉する。一応会話はできたからな」

「交渉はケーマがやってね、他に狼と話せるのいないし」

前に俺がリンと交渉した時は、最初に俺が「お前は何者だ」と話しかけたのが人語だっただけで、他は全部狼の言葉で話してたらしい。ワンワンと。翻訳機能さん頑張ったなぁ。

最初の人語での一言は通じたんだから、リンは人間の言葉が分かるとみていいだろう。つまり狼語のリスニングだけできればこちらから話しかけるのは人語でも通じるってことだ。

「あの、ご主人様。良いでしょうか」

「ん? なんだニク。もしかしてニクにも狼語が分かったか?」

「は、はい。なんとなく、ですけど。私、犬獣人ですし」

「おお! ニク、伊達に犬耳じゃないな! よーしよしよし」

俺はニクの耳をナデナデしてやった。撫でられて、ニクは嬉しそうに尻尾をぱたぱたする。

これはうれしい誤算だ。俺が交渉するより黒色&イヌ科繋がりで何とかなるかもしれない。

「よし、それじゃあ次の交渉はニクに任せてみよう。あの狼、リンを仲間に引き入れてみせろ!」

「はい! おまかせください!」

とりあえず、別人だという事が分かるようにニク用の黒いメッセンジャーゴーレムを作ろう。区別が付けられるかは知らんけど。黒いのが大事かもしれないし。……塗装とかじゃなくて黒い絵の具を練り込んて見るのも面白いかな。