軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勇者の帰還

ギルドに報告した後、ギルド経由で魔剣を売り払って借金返済に充てることにした。

「――というわけで、おそらく『火焔窟』から出てきました。で、こっちが魔剣です。19本あります、もう1本あったんですがそれも同程度の代物で、それはカンタラさんに差し上げました。残りはギルド経由で売りたいです」

「……はい、かしこまりました」

ずらっと並んだ魔剣と、ワタルの報告はある意味爽快な内容だった。

踏破報告のなかった領域を攻略してきたこと、どこからかは知らないが『欲望の洞窟』と同じくツィーア山にあるダンジョン『火焔窟』へとつながっていること、魔剣を20本も持ち帰ってきたこと。

どれもとても素晴らしい成果だった。

「で、この情報はいくらで買ってもらえます?」

「相場だと銀貨20枚ってところですね。魔剣はオークションに流す形にしますか?」

「……20本一気に、だと値崩れしそうなんで、10本で。9本はギルドに1本金貨2枚で売りますから、時期をずらして売ってください。あ、できれば即金でもらえます?」

これで金貨18枚、それにオークションでの売り上げを合わせれば金貨40枚近くになりそうだ。

……金貨2300枚に対しては少ないかもしれないが、日本円で考えれば4000万円の収入。そう考えるととんでもないな、とワタルは思った。

とりあえずその日の夜はカンタラたちと酒盛りをして、翌日一度帝国に帰ることにした。

酒盛りの詳細は省く。翌日に残らない、いい酒だった。

「よし、ロクコさんたちに挨拶してくか」

宿の受付に向かう。……そこに座っていたのはこの数日で結構仲良くなった魔法使いの女の子、ネルネだった。

「ええーっ、もう帰っちゃうんですかー?! うう、もっと魔法の話聞きたかったですー」

「ははは、また来るよ。ロクコさんいる?」

「あ、はいー。呼んできますねー」

ネルネがロクコを呼びに行って、しばらく待つ。するとロクコが上機嫌でやってきた。

「帰るんだって? 姉さまによろしくねワタル」

「はい、で、僕はお役に立てましたか?」

「ん、まぁまぁね! おかげでパートナーに指輪貰えそうよ」

ワタルとロクコは、ある約束をしていた。

それは、ワタルがロクコにパートナーになってほしい、と言ったときのことだった。

* ~~~

『……僕の、パートナーになってくれませんか?』

『え、イヤよ。私、もうパートナーいるもの』

ロクコの反応から、ワタルは自分が告白ともとれる発言をしたことに気が付いた。

慌てて訂正を入れる。

『……あ! いえ、すいません。研究パートナーって意味です。夫婦とか恋人っていう意味じゃないので』

『……うん? そうなの? まぁいいわ』

『日本への送還を研究する協力者になってください! あとその服、今気づいたんですがあれですよね、ナイロン入ってますよね?!』

『ないろん? なによそれ』

『石油から作れる合成繊維です! ……ああ、この世界でまさかナイロン配合の生地がみれるなんて……!』

『ああ、このドレス? これ、私のパートナーがダンジョンで手に入れたのよ。ふふん、素敵でしょ?』

そう、勇者ワタルはその眼力で日本にあった素材の気配を見抜いていた。思わず目が向かってしまっていたが、それはナイロン生地に反応してのことだった。断じてロクコのおしりが見たかったわけではない。髪の毛が邪魔でお尻しか見えなかっただけだ。

『ええ、よくお似合いです。……ふーむ、ナイロン入りの生地が手に入ることもあるのか。噂には聞いてたけど、すごいな……ロクコさんのパートナーさんにも研究仲間になってほしいですね。やっぱり優秀な冒険者なんですか?』

『……あー、そうね、一応このダンジョンで一番深くまで潜ってるから。そこにあるマッサージ椅子とかもダンジョンで手に入れたのよ』

『おお、これも……!』

分解とかできないかな……と見ていたら、「駄目よ? 貴重なんだから」とロクコに止められてしまった。思ったことを声に出していたようだ。

『むむ、ならパートナーさんに攻略のコツを教えてもらうとか……どうにか話聞けませんか?』

『んー、そうねぇ。会話する場を用意してもいいけど、私に利点が欲しいわね』

『ふーむ、じゃあご飯奢りますよ? 金貨5枚のやつで』

『ウチの売り物よ、別に奢られなくてもいつでも食べられるわ』

ですよねー、とワタルは思った。今会ったばかりの相手に対し、なにか交渉材料となるものはないものか。とっかかりが掴めない。

『……じゃあ、ロクコさんのなにか悩みを解消するお手伝いをですね』

『悩み? うーん、別に……』

『えっと、パートナーとの生活とかで困ったこととか!』

ワタルは苦し紛れに言ったことだったが、ロクコには思い当たることがあった。

『そうね、じゃあパートナーともっと仲良くしたいから当て馬になってよ』

『えっ』

『勇者様から告白されたって言ってご飯に誘い出してあげるから!』

『えっ、は、はい?!』

『じゃ、いってくるわね!』

~~~ *

……と、こんなやり取りがあったりした。

結果としてワタルはロクコに告白したことになり、つい先日あった失恋話をして『自分は女性不信なので、本当は女性に告白するなんてできませんよ』という遠まわしなアピールも無駄に終わり、結局警戒されてろくな事を聞けなかったわけだが。

「……でもなんか僕は借金に金貨2300枚とか背負ってしまったんですが」

「え? それは私のせいじゃないでしょ?」

「……そですね」

確かにロクコとは全く関係ないことだ。ロクコに告白してナリキンに目を付けられていたとしても、ケーマとは別人、という話になっているわけだし。

「あ、借金の返済だけど、ハク姉様経由でもいいわよ?」

「ゴゾーさんたちやネルネさんにも会いたいし、また来ますよ。あまりハク様にお手数かけるわけにはいかないですし」

別に来なくても良いのに、とロクコは呟いた。

「それじゃ、また」

「ハク姉様によろしくね」

こうして、勇者ワタルは帝都へ帰って行った。

尚、これらの経緯を馬鹿正直にハクに報告して、Sランク冒険者でも死にかけるほどのきつい仕事を紹介されまくる事になるのは、また別の話。