軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

古代神民の地下街 4

別の無人住居を見つけ——とはいえ地下街のほとんどが無人住居で、住人がいるとすればアンデッドモンスターなのだが、そこで寝床を確保する。「魔力探知」でも周囲にモンスターの気配はない。

(……「直感」が厄介すぎるな)

「直感」6なんてレア中のレアだろう。とはいえ2人も出会ってしまった——騎士団長と、先ほどのアグレイアだ。

5となると「東方四星」のサーラ。

4で「救国の英雄」ウンケン。

4以上はほとんどいないと見ていい。それどころか3や2すら稀だ。

王都やポーンドで、ヒカルはなるべく多くの「ソウルボード」サンプルを見ていた。「直感」4以上は、今までその4人しかいない。

だが、いるはいる。

(「直感」は「筋力量」や「魔力量」と同じく、いわゆる「基本項目」なんだよな。だから上がりやすいのかもしれない。上限は20だけど……「直感」10とかなったら「隠密」していてもバレるのか? いや……でもなあ、そうなったら「隠密」項目の意味がないよな……「意味」とか考えてる時点であまりにゲーム的か?)

ヒカルは考える。

先ほどのアグレイアは騎士団長ローレンスよりもずっとはっきりヒカルの場所を確認していたふうだった。

(あいつの場合は、「職業」だろうな。なにか……「直感」に関するような「職業」を設定している)

脅威は脅威として、対策を考えなければいけない。

ヒカルが考えたのは次の3つだ。

1つ目は、「訓練・装備」。

ヒカルは「隠密」に関しては素人だ。戦闘訓練もろくすっぽ受けたことがない——日本で暮らしていたのだから当然と言えば当然だ。

相手は戦闘のプロたちだ。こうなると、いかにヒカルがソウルボードや「職業」の恩恵を受けていたとしても、「直感」で見破られる可能性がある。

(これを伸ばすとなると、やっぱり師匠みたいな人を探して弟子入りするか……でもいるのか?「隠密」のプロなんて)

ヒカルの脳裏にウンケンが浮かんだが、過去を隠したいふうの彼が教えてくれるはずもないだろう。ましてやポーンドに戻るという選択肢もない。

2つ目は、「生命遮断」「魔力遮断」が3/5であるので、この2つをMAXにするという手である。「スキルに頼り切ってしまう作戦」だ。派生スキルが出てくるかもしれないという可能性もある。

(僕の残りのポイントは……3か)

【ソウルボード】ヒカル

年齢15 位階23

3

湖周辺での狩りで1上がってた魂の位階は、今日だけでさらに2上がった。

(意外と上がりやすいなー)

と、ヒカルは勘違いしているが、実を言えば「上がりやすい」などあるはずがない。

ふつうは、5人以上のパーティーを組んでモンスターと戦う。負傷者が出れば対応も必要だし、必然的に慎重な行動をする。「2人」で「連戦」なんてあり得ないのである。

ちなみにラヴィアの魂の位階も上がっている。位階は18で、ポイントは11残っている。

(「生命遮断」を上げてもいいけど……)

「魔力探知」持ちが少ない以上、優先すべきは「生命遮断」だろう。

けれども、ヒカルは躊躇する。

(こっちのほうが…… もっと有効(・・・・・) かもしれないからなあ……)

3つ目の対策——それは、ヒカルも「直感」を手に入れる、ということだ。

そもそも「直感」がどのように働き、「隠密」状態の相手を見つけているのかがわからない。

(よしっ、やっぱり「直感」1を取ってみよう。これで意味がないなら、「遮断」をMAXにするか、装備を新調するかだな)

無駄ポイントになるかもしれないが、1なら許容範囲だ。

今後のことも考えて「直感」を体験することをヒカルは重視した。

【ソウルボード】ヒカル

年齢15 位階23

2

【生命力】

【魔力】

【筋力】

【筋力量】1

【武装習熟】

【投擲】2

【敏捷性】

【瞬発力】2

【隠密】

【生命遮断】3

【魔力遮断】3

【知覚遮断】5(MAX)

【暗殺】3(MAX)

【狙撃】0

【集団遮断】3

【直感】

【直感】1

【探知】

【生命探知】1

【魔力探知】3

【探知拡張】1

「ふーむ……」

「? どうしたの、ヒカル」

「あ、いや」

なにも変わらないな——正直、そう思った。

数字が1増えただけ、という感じだ。

「……寝たほうがいいんじゃない? 休めるときに休まないと」

「そうだね」

ヒカルは「聖油」を床に置いて、自分はその横に外套を敷いてごろりと寝転んだ。

するとラヴィアがヒカルに自分の外套をかける。そして、

「……ラヴィア?」

「くっついてたほうが暖かいわ」

自分もヒカルに寄り添うように潜り込んできた。

ヒカルの腕の付け根にこめかみを寄せて、腕枕の状態だ。

気になるほどの気温ではなかったが、なにもかけずに寝るには寒かったかもしれない。

帽子を外したラヴィアの頭から、彼女の香りが漂ってくる。

「……顔をくっつけないで。身体を洗っていないもの」

「くっついてきたのはそっちが先じゃないか」

「していいことと悪いことがあるのよ」

「そうかなあ——」

悪ふざけを言いながら、ヒカルはラヴィアの頭に鼻を埋めようとして——瞬間、「あ、これは絶対怒られる」と思い、留まった。

(そうだよな。ラヴィアだって怒る……え?)

そのときヒカルは、気がつく。

(どうしてそこまで僕は 確信(・・) を持ったんだ? ラヴィアが怒る、って——)

「……ヒカル?」

「そうか、これが……『直感』か」

「?」

「なんでもない。おやすみ、ラヴィア」

「おやすみなさい」

あまりにも自然だ。なんの違和感もなく受け止められる。

考えや感覚の1歩先が、するりと入り込んでくる。

それは自分の五感が1段階上がったかのような、全能感に近い感覚だ。

便利だ。思わず残り2ポイントをこれに注ぎ込みたくなるが、ぐっと我慢する。1でも十分役に立つかもしれない。ポイントは有限だから、確認しておく必要がある。

そしてこの「直感」は、アンチ「隠密」——高レベル「直感」に対する切り札になる。

「古代神民の地下街」という名称はガフラスティ=ヌィ=バルブスが命名したという。

古代ポエルンシニア王朝の研究家であった彼は、「崩壊した」王都をずっと探していた。

ポエルンシニアに関する文献すらほとんどなく、さらには奇妙なことに、王都の遺跡すら発見されなかった。

今あるポーンソニア王国の王都、ギィ=ポーンソニアはポエルンシニア崩壊後に、王朝の正統後継者たる王家一族が再興した——というのがポーンソニア王国「正史」である。

前王朝「崩壊」後の再興には時間がかかり、その間に各国が力をつけ直し、旧ポエルンシニアの国土は大きく削られた。その後、ポエルンシニアはポーンソニアに名前を変えたらしい。

つまり崩壊前「古代ポエルンシニア」、崩壊後「ポエルンシニア」、再興後「ポーンソニア」と便宜上呼ばれている。

そこまではガフラスティのファイルに書かれてあった。

ガフラスティはこの地下街が古代ポエルンシニア、つまり「神民」たちの街であったとすぐに考えたようだ。彼がここでなにをしたいのか——単に歴史学者としての好奇心なのか。

それはわからないが、ヒカルには大きなヒントを与えてくれた。

「今の王都は、古代ポエルンソニア王朝の王都を参考に造ったんだ。だから同じ形をしている」

朝食を取りながらヒカルは言った。

日持ちをするギリギリだったので、サンドイッチを食べている。今日の昼からは保存食が中心になる。

「ヒカルは、このダンジョンが旧王都だと言いたいの? おかしくない? なんで地下に街を造るのよ」

「なぜ地図があるのか、という疑問がある。まだ踏破されていないダンジョンのはずなのに」

「そう言えば……」

「ガフラスティはここが旧王都だと見込んだんじゃないかな? それで、彼は旧王都の地図を運良く持っていた。その地図が合っているかどうか確かめながら進んでいた」

「なるほど……。でも地下に街を造る理由は?」

「……推測だけど、なんらかの『事故』に巻き込まれたんじゃないかと思う」

ヒカルは詩の一節をそらんじた。

『暁の日 ギィ=ポエルンシニアは消ゆ』

「消える……っていう表現はおかしいよな。王都が消えるんだぞ。でも、この地下に王都が存在しているのなら——なんらかの『事故』で王都が地下に転移したんじゃないかと思う」

「転移魔法は実用化されていないわ」

「そうみたいだな」

ヒカルはうなずく。

この世界には「神」や「精霊」や「魂」や「魔力」がある。

しかし一方で地球と同じ物理法則も働いている。

「魔力」を「地球では未知のエネルギーである」と仮定すると、「神」や「精霊」の存在も科学的に証明できるのでは? という気がしていた。

一方で、ローランドは「世界を渡る術」でヒカルの魂をこの世界に持ってきた。おそらくではあるが「東方四星」のセリカ=タノウエも日本人の魂を持っている。これはある種の「転移」である。

「転移魔法は実用化されてないけど、実用化されていないだけなんじゃないかな。できる可能性があるんじゃないかと僕は思う」

様々なエネルギー的な問題を、魔法……というより「魔術」が相殺し、解決すれば、転移ができるのでは?

それがヒカルの推測だった。

「どこ○もドア」は異世界にあったんである。

「……王都がまるごと、地中に転移した……?」

「そういうこと。まあ、ここを探索していけばある程度わかるんじゃないかな」

「はあ……気の長い話ですこと」

「気は長くないよ。今日中に終わる」

「え、今日中?」

「そりゃそうじゃないか」

ヒカルは笑った。

「王都なら、1日かければ中央の王城まで歩けるだろ? 幸い、僕らは誰にも見とがめられずに中へ入れる」