軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

騒動の行方

空から降ってきた巨大な火球によって一帯のモンスターは焼き払われたものの、雲霞のごとく攻め寄るモンスターを相手にするには不十分だった。

だが人間側もここに来て連携が取れるようになった。連合国軍はドリームメイカーの城壁内へと収容されたのである。

『北側城壁に崩れた場所があるぞ! 手を貸してくれ!』

『土砂が足りねえよ!』

「うちの部隊はどこにいきゃいいんだ!」

「ここがドリームメイカーの街か……」

入り乱れての混乱が起きている。

「この一角は神殿騎士が任された!」

連合国軍が収容された後はモンスターが突っ込んでくる西門を、200人の神殿騎士が固める。門が崩れているとはいえ、堅固な造りになっている。200人で守り切れるだろう。

「時間を稼ぐ、後の場所は任せるぞ!」

「大臣、副長、こちらへ」

グルゥセルがやってきてフォレスティアの陸軍大臣とクインブランドの副長へと話しかける。

即座に人数を分割し、街の北側に展開することが決まる。

「あの城壁にいた集団は何者だ?」

話が終わった後、大臣がたずねた。

「アイツらは、ドリームメイカーの救世主だ」

捕らえられながらも連合国軍を街に引き入れることに成功したジンが、胸を張った。

城壁を使えるようになれば人間のほうが強い。勝手が違う場所ではあったが兵士たちはすぐにも順応し、モンスターの侵攻を食い止めた。

『ヤママネキだ!』

『ブラストキャノン用意——』

前回、最大の脅威となっていたヤママネキもドリームメイカーの改良されたブラストキャノンがあればいい的になっていた。

移動式のブラストキャノンは、いくら重量があるとは言えヤママネキの動きにならば対応できる。

反省があれば人間は成長する。

轟音とともに吐き出された砲弾によって、身体の中心を破裂させ崩れ落ちていくヤママネキを眺めながらヒカルはそう思った。

「ヒカル」

「——ああ、ラヴィア、ポーラ」

ハンググライダーで城壁の内側に降り立ったヒカルがいたのは、「賢者」ザハドゥが作った牧場だった。もはや動物もおらず、草が伸び放題になっている。

ラヴィアとポーラがいっしょにやってきて合流する。

「『親衛隊』の皆さんは?」

「はいっ。ドリームメイカー防衛をやるんだと張り切っていました」

「あのマントで?」

「は、はい……あのマントで、です……」

彼らは今回の遠征に当たって「花仮面の女神様親衛隊」を知らしめるのだとばかりにおそろいのマントを作っていた。

それはポーラの銀仮面が花模様であることから、巨大な花を刺繍したマントである。花は花でも架空の花なので、特別な意味は持たないもののどこか派手なイメージはある。しかも身につけているのは筋骨隆々のマッスルたちだ。

「だけどあの弓の腕前はすさまじいね」

今後親衛隊がどうなるかについて考えるのを止めたヒカルは話題を変えた。

コウキマルが乗っていた巨鳥を撃ち落とした矢を撃ったのは、親衛隊の隊長であるガリクソンである。

「食料調達のためによく鳥を撃っていたみたいで、あれくらい大きいなら外すことはないとおっしゃってましたよ」

「にしたって……すごい距離だぞ?」

狩猟における有効射程距離は、散弾銃のスラッグ弾で50メートル程度、プレチャージ式の空気銃でも100メートル程度で、「当たったらラッキー」程度だ。

その上はライフルで、これは数百メートルが射程となりあの巨鳥ほど大きければ当てることもできるだろうが——。

「ライフル並かよ……しかも立射で」

威力は違うにせよ、有効射程距離が長すぎる。

恐ろしいものである。

「これで敵の動きは終わり?」

ラヴィアに聞かれ、

「とりあえずは……ね」

ヒカルは応えた。

「今日をしのげればしばらく動きはないだろうね。だからこそその間に人間がどこまでまとまれるかじゃないかな」

「まとまれる?」

「まとまってもらうさ」

言いながらヒカルはため息を吐いた。

まとまってもらうために少々芝居を打つ必要がありそうだったからである。

脅威が去れば現金なもので、連合国軍とドリームメイカーは和解をした。これはグルゥセルが、「竜石によって人間の精神が影響を受けていた可能性が高い」ことに思い当たっていたという部分が大きい。もしそうでなければ遺恨が残り、そもそも連合国軍をドリームメイカーに引き入れることもできず、モンスターによって各個撃破されていただろう。

「言われてみれば確かに……やけに心が焦っていたような感じがいたします。誠に申し訳ない……貴君らが祖国を取り返したいという思いを疑ってしまって」

陸軍大臣が頭を下げると、クインブランドの副長も、ビオスの神殿騎士大隊長も頭を下げた。

それをグルゥセルは苦笑でもって受け止める。

「もう、結構です。謝罪など必要ないことは兵士たちを見れば明らかではありませんか」

外はすでに夜更け。モンスターの攻撃は散発的になり、やがて途絶えた。

歓声とともにそれぞれの兵士が所属の隔てなく肩を組んだり抱き合ったりするのがそこここで見られた。

「これからどうするか考えましょう。ランズハーヴェストについては放棄すべきだと思います。最低限の見張りを船に乗せて、全員我がドリームメイカーに移るべきだと考えます」

「その……よろしいのですかな。ドリアーチ国王の言葉を待たずに」

「全権を委任されております」

フォレスティアの大臣には、自国を思うとこれほど自信を持って言えるグルゥセルがまぶしく見えた。フォレスティアは各地方の思惑が入り乱れ、意見を通すことは並大抵ではない。

この場にいる者に否やはなく、翌朝には伝令が飛んでランズハーヴェストを放棄することが決定。海上から監視するだけに留め、結界の魔道具も含めてすべて移送することとなった。

せっかく拠点を構えた冒険者ギルドは不平たらたらではあったがドリームメイカーにはすでに建物があることと、目抜き通りに面した大きな役所を冒険者ギルドに提供するというグルゥセルの言葉で態度を翻した。意気揚々とドリームメイカーにやってきて「冒険者ギルドドリームメイカー支部」を立ち上げたのである。

いまだ持ち主がおり、所有権がある建物も多かったが、国が所有して貸し出しているような建物も相当な数あった。これらの多くを放出してもなお兵士は路上にあふれている。

それもそのはずで、もともとドリームメイカーの人口は1万人程度。対して今回の派兵は17,000人である。海上展開の兵士や死亡した兵士もいるのでそこから減ってはいるものの、それでも15,000人はドリームメイカーに一時的に収容することになった。店を出す者もあれば娼婦が集まって娼館らしきものまでできていた。

ドリームメイカーは空前の人口密度を記録した。

「ああああああっ! こんなとこにいたら息が詰まるぜ! 俺たちはさっさと戦いにいくぞ!」

全軍が集まった翌日、各国軍のトップと冒険者ギルドの代表を集めた会議が開かれた。

第一声は、苛立っているアインビストの獣人王ゲルハルトだった。

「ですが、この付近にはあまり『ルーツ』がありません。遠征を行うのも結構ですが、大規模なモンスター襲来の可能性も考えると、動くのは得策ではありません」

はっきりとグルゥセルが反対をすると、それに賛同する者も多かった。

竜石は1箇所に集めて無人の船に乗せることになった。その両脇を別の船で支えているので流される心配も、影響を受ける心配も少ない。

おかげで徐々に、人々の精神状態は正常に戻っていった。

「あ? じゃあずっとここに籠もってろってか? お仲間がやってくるまで? んなつまんねえことをするために遠路はるばる来たんじゃねえや! それともなにか——お前が俺様の退屈しのぎに付き合ってくれんのか?」

ぎろりと向けられた視線をグルゥセルは涼しい顔でいたが、この獣人王を止める手段がないことは確かだった。

「お前でもいいんだぞ、『剣聖』。俺様との戦いに逃げばっか打ちやがって」

巨体を縮めるように腕を組んで瞑目していたポーンソニアのローレンスは、その目をゆっくりと開いた。

「……どうやら私よりも、 刺激に詳しい(・・・・・・) 者が必要なようですな」

「あ? それはどういう——」

「いるのだろう、 白銀の貌(シルバーフェイス) 」

そう、ローレンスが言ったあと——バレてたか、という小さなつぶやきが聞こえた。

「どうしてわかったんだ?」

シルバーフェイスが姿を現した。