軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

350、思わぬ遭遇

アイリーンちゃんの一撃を私は手の平で受け止めた。いや、手の平を貫かれた。くうぅ、めちゃくちゃ痛い……

「痛いよ……」

「どうして避けない! 防がない! カース君ならどうにでもなるだろう!」

「間に合わなくてごめん……」

「うわあああ! 謝るなぁぁー!」

顔をぐしゃぐしゃに濡らしたまま槍を突いてくる。何度も。しかし……

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「僕を殺すんじゃないの?」

「できるはずがない……バラドが死んだのは……盗賊ごときに遅れをとったからだ……あれで騎士を目指すだなんてお笑いだ……」

「アイリーンちゃん……」

「でも、一番の間抜けは私だ……まんまと騙されて……不意打ちなんかをくらうとは……もう殺してくれ……」

それが目的だったのか? 殺して欲しいから私を殺すふりをしたのか……

全く殺す気などない気の抜けた槍で……

「殺してくれえええええーーーー!」

『麻痺』

『快眠』

アイリーンちゃんを殺せるはずがない。とりあえず大人しくしておいてもらおう。あー痛い……体中切り傷だらけだわ。アレクにバレないうちにポーションを飲んでおこう。

『浄化』

私が風呂に入れるわけにはいかないから魔法できれいにしておいてあげよう。後はアレクに任せるとするか。

そして朝が来た。アイリーンちゃんはこのまま寝かせておくかな。

「さ、帰ろう。領都に。」

「ええ、そうね……カース、頼むわね。」

盗賊の死体は私の魔力庫、バラデュール君の遺体はアレクの魔力庫に収納されている。盗賊の死体は騎士団詰所に届けるべきだろう。ギルドにも寄らなければならないな。仕事の終了と顛末を報告しなければなるまい。アレクにばかり負担が増えるな……

領都に着いたらまずは騎士団詰所。死体を出し事情を説明。アレクの口から。私は聞かれたことに答える程度だ。

そしてギルド。ここでもアレクが代表して説明をした。そして全てが終わり解散しようとする頃には昼を過ぎていた。全員朝から何も食べてないんだよな。アイリーンちゃんは寝かせたままだが、どうしたものか……

そんな時、ギルドの入口で意外な人と遭遇した。

「カースではないか。珍しいところで会うものよ。王都以来かの。」

ごっついお姉さんこと、ゴモリエールさんではないか。

「お久しぶりです。お元気そうで。領都へは依頼ですか?」

「おお。妙な依頼があっての。話ぐらいは聞いてやるかと来てみたまでよ。まあ、ついでじゃがの。」

妙な依頼……もしかして……

「その依頼人ってアイリーンちゃん、この子じゃないですか? 体の鍛え方とか動きについての相談では?」

「ふむ、そのような名じゃったかの。まだ受けると決めたわけではないがの。その 女子(おなご) が依頼主か。」

こんな時にゴモリエールさんとは。これもアイリーンちゃんの運命なのだろうか。

「ゴモリエールさん、少し話しませんか? 食事でも。この子のことで相談があります。いいよねアレク?」

「ええ。話しておくべきだと思うわ。」

「ほう? 訳ありか。まあよかろう。カースの甲斐性を見せてもらうとしようぞ。店は 妾(わらわ) が選ぶでな。」

「お手柔らかに……」

あんまり手持ちがないからな。

アイリーンちゃんを他の三人に任せて私とアレクはゴモリエールさんと共に食事に出かけた。もちろんコーちゃんも。

ゴモリエールさんが選んだ店はベイルリパース。高い店だなぁ……

ゴモリエールさんは私の三倍ぐらい食べ、五倍ぐらい飲んだ。

「さて、聞かせてもらおうかの。何があった?」

「では私から……」

事の子細を一から話すアレク。普段付き合いの悪いアイリーンちゃんがほんの気まぐれで盗賊討伐を受けたらこれだもんな。今思えばいくら盗賊はザコなのが定番だからって気軽に受けたのも悪かったのかもな。

「ふむ。なるほどな。それでそやつは荒れ狂っていると。まあよかろう。なれば後は本人と話してみるのみじゃ。悪いようにはせぬ。そやつなればエロイーズも歓迎してくれようぞ。」

「歓迎、ですか?」

アレクが聞き返す。

「うむ。今回のような場合はの、一時的とはいえ妾達のパーティーに入れることになるやも知れぬ。パーティーと言うても妾とエロイーズの二人しかおらぬがの。」

「なるほど……アイリーンをよろしくお願いします……」

「まあそやつ次第じゃがの。妾もエロイーズも最愛の男を亡くした悲しみが分からぬわけではない。つまり、立ち直れぬことなどないと知っておる。時にカースよ。もし魔女殿であればこのような時、どのような助言を贈ると思う?」

なんと難しい質問を……

「母上なら……まずアイリーンちゃんが生き残ったことを褒めて……同じ失敗をしないよう強くなるよう言い聞かせる……ですかね。」

「ふむ。なるほどの。存外普通なのじゃな。もしもアラン殿を失った時、魔女殿がどうなるのか気にはなるが……やめておこう。魔女の怒りになど触れたいものではないからの。」

父上か……あの時の母上は一言で言えば狂乱って感じだったな……それでも父上を治すべく必死だった。昔、オディ兄の右腕が失くなりかけた時は冷静に対応していたのに。

「ではカース、馳走になったの。そなたの甲斐性はしっかりと見せてもろうたぞ。妾に相手をして欲しくばいつでも言うがよい。もちろんエロイーズと二人がかりでも構わぬゆえな。宿は辺境の一番亭にとってある。あやつが目覚めたら来るよう伝えておくがよい。」

二人がかり……昔の私なら喜んで飛びついたかも……

「はい。わざわざありがとうございます。アイリーンちゃんをよろしくお願いします!」

「よろしくお願いします。」

「ピュイピュイ」

「うむ。ではの。」

ゴモリエールさんはスッと立ち上がり音もなく去って行った。

あ、ゼマティスのおじいちゃんとの対戦結果を聞くの忘れてた。まあいいか。

「じゃあ私は寮に帰ってアイリーンに伝えておくわ。叩き起こしてでも。」

「それがいいね。僕は家に帰っておくよ。マーリン達が心配してるだろうからね。」

ところでゴモリエールさん達のメインの用事って何なんだろう? ついでとか言ってたもんな。よし、コーちゃん帰ろうか。

「ピュイピュイ」