軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

338、領都の週末

いやぁ昨日の秋の大会は楽しかったなぁ。あれから出店を食べ歩いて、夜は家族でキアラのお祝いパーティー。そりゃあ酒も進むさ。

さて、今日はケルニャの日。もう週末だな。とりあえず思い出した順に用事を終わらせるとしよう。まずは領都に行かないとな。

「おはよ。キアラはもう学校?」

「おはよう。ええ、もう出たわよ。何か食べる?」

「うん。お願い。」

「待ってなさい。」

今朝は珍しく母上と二人だけだ。ベレンガリアさんは馬車でキアラを送って行ったんだろう。正確にはペガサス車だが。

「美味しかったよ。ご馳走様。」

「ああ、そうだわカース。年末には王都に行くのよね?」

「うん。行こうと思ってるよ。」

「そう。だったら一件仕事を頼むと思うわ。大したことじゃないけど、その時にまた言うわね。」

母上の仕事? 何事だろうな。しかし断る気などない。

「いいよ、分かった。行かないってことはないと思うから。」

それからは軽くお茶飲み話。ヒイズルのあいつらのことも話してみた。

「ヒイズルで思い出したわ。気になってたことがあるの。あの紫の鎧のことよ。」

「紫の鎧がどうかしたの?」

「王都で戦った時のことよ。カースの話によるとあいつらは『換装』を使ったらしいじゃない? カースですら魔力庫に収納できない鎧なのに。」

あ……確かに……

魔力庫内の装備と一瞬で着替えることができる魔法技術『換装』

魔力消費は大きいが超便利な魔力庫の設定だ。確かに偽勇者との最後の戦いの時、あいつら全員換装を使ってやがった。あの時の鎧は魔力との相性が最悪で私ですら魔力庫に収納することができなかったってのに。

ちなみに、昔スパラッシュさんとラフォートで殺した偽勇者の紫の鎧は今も私の魔力庫の中にある。低品質だな。

「確かに変だね。よし、ヒイズルの奴らが何か知ってるかも知れないから聞いてみるね。ちょうどいいタイミングだし。」

「そうね。私も興味深いわ。それで今回はいつ頃戻ってくる?」

「うーん、たぶん来週の中頃かな。今回は領都に行ってから楽園に行って、また領都に戻ってそれからノワールフォレストの森に行くことになるかな。」

「そう……気をつけてね。」

「うん。じゃあ行ってくるね!」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

セキヤの居場所なんか知らないけど、クワナなら辺境伯家に行けば誰か知ってるよな。

着いた。門番さんに聞いてみると、サテュラちゃんとデートに出かけたと。ほう……平日の昼間からやるもんだね。ならば出直そう。

では次はマイコレイジ商会だな。あー忙しい忙しい。

到着早々会長室へと通された。

「カース様! お待ちしておりました!」

「やあ会長。少し待たせてしまったね。」

「あぁん、またリゼットって呼んでくださらないのね……」

「いや冗談。それで楽園行きなんだけど明日でも大丈夫?」

「はい! いつでもウェルカムですわ!」

ウェルカム……これまた古い言葉を使うなぁ。

「じゃあ前回同様に日の出時に北の城門ね。建物は今から収納しておくよ。」

「それで結構ですわ。では早速参りましょう!」

リゼットは当然とばかりに私の腕に腕をまわし、引っ張ってくる。

「あれ? カース様、腕の感触が変ですわ? シャツと腕の感触が少しも感じられませんが……」

「そう? 気にしない気にしない。」

最近使えるようになった自動防御の進化版。家屋の中で球体バリアのように自動防御を張るのはいささか都合が悪いのだ。特にドアをくぐる時なんか。そこで進化版。体型に沿って自動防御を展開、密着型バリアってところだろうか。当然魔力消費は元の自動防御の数十倍ってところだ。効率が悪いにもほどがある。魔法制御の練習にもなるからいいんだけどね。

「それより今日はあの護衛いないの? いても役に立たないけどさ。」

「うふっ、ジャンヌは間者ですわ。所属はアジャスト商会ですわね。今日は休みをとってますが、あちらに報告にでも行ってるのかしら。」

なんとまあ……

「そうなの? 間者ってバレてる上に仕事の役にも立たない……あいつの将来はボロボロだな。」

「いつ間者が刺客に変わるのかは分かりませんが、使い道がある間は使ってやりますわ。」

使い道があるのか……バカと何とかは使いようってやつだな。

「へ、へぇ……」

案外ダミアンと一緒に襲われたのはそいつの情報が元だったりするんじゃないか? いや、私が考えることぐらいリゼット達が考えてないわけないな。

さて、到着。リゼットのやつ、馬車の中でも私にベタベタしやがって。実際には私の素肌には触れていないのだが。

「さあ、こちらですわ。」

リゼットの前に見えるのは注文通りの公衆浴場と公衆便所。なお、男女別にはなっていない。大便はどうせ個室なんだから構うことはないし、ケツを拭く何かは利用するやつが用意するのが常識だ。

「じゃあ収納するぞ。ありがとな。楽園の奴らも喜ぶと思うわ。で、あれが注文してた家だな?」

「はい! その通りです! オーガの群れに襲われても一日ぐらいは耐えられる見込みです!」

「ベヒーモスが相手なら?」

「む……無理です……」

さすがに意地悪な質問だったな。

「いや冗談。問題ないよ。ありがとな。」

一片が五メイルの正四角錐。ちょっと豪華な寝袋ってところだな。出入りが少し面倒だが、これで魔境の夜もある程度は安心だ。

内部はもちろん魔法効果により快適な温度湿度を保ち、好みの明るさにもできる。トイレがないのはどうしようもないが安全第一だもんな。

「ごくっ、カース様……この中で……夜の魔境……アレックス様と……」

「ん? 何か言った?」

「い、いえ何も……」

もちろん聴こえたけどね。さて、これで明日の朝までフリーだ。放課後まではまだ時間があるけどアレクの所に顔を出してみようかな。きっと驚くだろうな。