軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

330、酒場にて

どうにか夕暮れまでに全て終わったのでアルケイディアに声をかけてみた。

「お前らどうする? クタナツに帰るんなら乗せてやるが?」

「乗せる? 意味が分からんが連れて帰ってくれるってことか? そんなら頼むわ。全く意味が分からんがな」

今からならどうにか閉門に間に合うだろう。

「こいつだ。乗りな。」

そう言ってミスリルボードに五人の前に出す。おどおどと上に乗る五人。

「じゃあ帰るぜ。」

ちなみにアルケイディアが仕留めた魔物のうち、解体の最中だったやつは私の魔力庫に入れてある。クタナツの城門までは運んでやるさ。

絶句する五人をよそに私はカムイのブラッシングをしている。よそ見をしててもクタナツまでなら進路がズレることもない。カムイのやつ、先日買ったブラシがやけに気に入ったらしい。コーちゃんは私の首に巻き付いたままだ。

そしてクタナツに到着。閉門には余裕で間に合った。

「も、もう着いたのか……?」

「ここ……クタナツだよな?」

「夢……じゃねぇ……」

「飛んだ?」

「空を飛ぶ……あの距離を……?」

「じゃあまたな。」

魔物を取り出しておく。とりあえず元の実家はすでにないから無尽流の道場に行ってみよう。父上達はどこに住んでるのかな?

「待てよ魔王……」

「晩飯行かねぇか?」

「酒なんかどうよ?」

「世話んなりっぱなしだからよ!」

「飲めんだろ?」

「ピュイピュイ」

私より先にコーちゃんが返事をしてしまった。これもお約束か。まあいいや。少しぐらい付き合うか。門前に積まれた魔物は放置か?

「じゃあゴチになるわ。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

連れられて行ったのはそこらの酒場。まだまだクタナツにも行ったことのない店はたくさんあるもんだよな。

「さあ、好きなもんを頼んでくれよ。」

「おお、悪いな。ディノ・スペチアーレある?」

「あるわけねーだろ……」

うーん、それもそうか。

「ピュイピュイ」

「じゃあ酒はお任せで。コーちゃんには高いやつを頼むぞ。」

「お、おお……任せとけ……」

「あとは……トビクラーかコカトリスの軟骨ないか? あれが旨いんだよな。あ、ミノタウロスかブラックブラッドブルの舌があると嬉しいな。」

「あるわけねーだろ……」

ないのか……

「ガウガウ」

「じゃあ料理もお任せで……カムイには肉の塊を焼いたやつを頼むわ。」

「お、おお……任せとけ……」

うむ。酒も料理も悪くない。普通だな。腹も膨れたし、そろそろ帰ろうかな。

「ご馳走になったな。ありがとよ。じゃあまたどこかで。」

「おう、こっちこそありがとよ! またな!」

「またなぁ魔王!」

「おもしろかったぜぇ!」

「酒も強えんだなぁ!」

「次ぁどこで飲むかよ!」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

全然酔ってないがお腹はいっぱいだ。さて、我が家へ帰ろう。引越してからまだ一度も行ってないから我が家感もなければ実家って感じもしないんだよな。変な気分だわ。

カースが酒場を後にしてから数分後。

「おう、お前らどう思う?」

「ん? 魔王のことか?」

「そうだ。お人好しの甘ちゃんだと思うか?」

同郷というだけで初対面の人間にワイバーン肉を食わせてやり、空振りに終わった仕事の補填まで面倒を見る。まるでクタナツの上位冒険者パーティー、そのリーダーのような振る舞いだ。しかし、そうでなければただの甘ちゃんである。

それだけにアルケイディアのリーダー、マノスはメンバーの考えをまとめておきたいのだ。

「そんなわけねーだろ。お人好しなのは間違いねぇが、甘ちゃんじゃあねぇな」

「だよな。あれだけ飲んでも全然酔ってやがらねぇ。魔力がやべぇって聞いてたが、ちっとも感じねぇのも不気味だぜ」

「それに装備だ。魔境にいんのにスカしたウエストコートだと思やぁ何だあれ? どっかでトビクラー製って聞いてたが、全然違うじゃねーか!」

「サウザンドミヅチって聞いた気もするが……違うな。もっと上だぜ?」

「俺もそれが気になってよぉ……確かめてみようとしたんだわ。そしたらな……触れることもできなかったぜ……」

「どういうことだ? マノス、おめー魔王の隣に座ってたじゃねぇか?」

「それがよ? 魔王のやつ自分の周囲、ほんの二、三センチぐらいか。そこに何か魔法防御を張ってやがったのさ。見えない何かをな……」

カースの自動防御である。

「あの歳で……どんだけ修羅場くぐってやがんだよ……」

「俺らを相手にも油断してねえってのか?」

「ってことだよなー。しかもそんな状態で普通に飯は食ってやがったな……どんだけ精密制御してんだよ……」

「ぜってえ敵対しねぇように気ぃつけようぜ……」

「お前らが分かってんならそれでいい。安心したぜ。千杭刺しなんて目にぁ遭いたくねぇからよぉ……」

彼らの酔いはもう醒めていた。