軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300、準決勝第二試合

嘘だろ……負けた……のか?

『鮮やかな勝利です! スティード選手がカース選手を引きつけつつ! ターブレ選手が見事にダミアン様の頭からアプルの実を奪取しましたぁーー!』

『ボスにしちゃあ油断したねぇ。いやボスだから油断したのかねぇ。でもまぁよくあの選手がボスの氷壁を崩せたもんさぁ。』

だよな……?

自惚れてるわけではないが、私の氷壁は鉄壁並みだ。言っちゃあ悪いがバラデュール君の腕や魔力では突破できないはず……だからダミアンを囲った後は放置していたのに……

私だってバラデュール君を無警戒だったわけではない。いくらスティード君しか戦わないからと言ってバラデュール君がダミアンを狙うのは当然なのだから。でも一体どうやって……

「もう立てないよ……はぁ……どうやら知恵ではカース君に勝てたね……」

「負けたよ。まさかバラデュール君が僕の氷壁を崩せるとは思ってなかった。」

よく見るとスティード君は小さな傷だらけだ。致命傷だけは避けた結果か。それに体力も、いや魔力まで限界なのか……飛斬や飛突を撃ちまくってたもんな……

「俺ぁ引っ込むぞ……寒くてたまんねーからよ!」

「おお、悪いな。負けちまったわ。風邪病にかかんなよ。」

ダミアンにも悪いことしたな。

「スティード、これを返しておく。」

「うん、バラデュール君。お見事だったね!」

「あっ、それって!」

なるほど! 単純な話だったのか……

テンペスタドラゴンの短剣をバラデュール君に貸していたのか……

序盤に私に斬りかかった時に普通のロングソードだったのが気にはなっていたが。あそこでもし短剣を持っていたら私だってきっちり避けただろう。切り札として温存しているのかと思えば、まさか持ってなかったとは……

なるほど、知恵で私に勝った、か……完敗だな……

「前にさ、カース君に剣で勝ったじゃない? だから次は知恵で勝ちたかったんだ。正面から勝つのはさすがに無理だからね。」

うーん、妙なこだわりだな。さすがクタナツの男。勝ちにこだわる姿勢が素晴らしい。

「いや、完敗だよ。決勝はきっとアレク達だろうから、ほどほどに頑張ってね。」

「まあカース君がさ。僕を怪我させないようにしてくれたのはありがたいような悔しいような気分だよ。『りゅうだん』だっけ? あれだって使わなかったよね?」

「さすがにスティード君に榴弾は使えないよ。あれは危なすぎるからね。」

それを言ったら使えない魔法はたくさんある。氷壁が溶けないように火の魔法も使わなかったしね。観客への被害も考えて広範囲魔法も使ってない。スティード君が避けた徹甲弾だって客席に行かないように軌道を曲げたんだぞ。

「肩を貸してくれる?」

「いいとも。」

『不思議な光景です! 満身創痍の勝者と無傷の敗者! 敗者に肩を支えられ武舞台を後にする勝者! スティード・ターブレ組の作戦勝ちに見えますがその実! 薄氷を踏むようにして得た勝利だったことは明白です! もう一度両者に大きな拍手をお願いします!』

『いやぁ見事だったねぇ。あの時のボスの顔ときたらさぁ。くくくっ……さぁてダミアンが凍えてんだろうからあっためてやんないとねぇ。』

『ダミアン様は重大発表が控えていますので、ほどほどにしてくださいね。』

私とスティード君、バラデュール君は武舞台を降り、選手用ベンチに座っている。スティード君は当然決勝戦にも出るつもりなので、治療を受ける気はないようだ。

「スティード君はアレク達の対戦相手知ってる?」

私は先ほど医務室にいたから見てないんだよな。

「あ、ああ、知ってるよ……それなんだけどね……」

「ん? 言いにくい相手?」

「カース君のさ……」

私の?

「カー兄! なんで負けたのー! ばかばかー!」

「キアラ!?」

「カー兄ちーっす! スティ兄ちーっす! そっちのごっつい兄さんもちーっす!」

「「シビルちゃん!?」」

「誰だ?」

嘘だろ!? うちのキアラにセルジュ君の妹シビルちゃんじゃないか。いつ来たんだよ……

「カース君負けたわねー。奥様に言ーってやーろー言ってやろー。怒られるわよぉー?」

ベレンガリアさんまで来てるのか?

「ベレンガリアさんこそ、あのことバラすよ? それより出場してるのは……キアラとシビルちゃん?」

「いーやー、私とベレン姉だよー。」

「こんなの参加するとかありえねーっすわ!」

「私も出る気はなかったんだけどね。キアラちゃんが出るって言うから。ちなみにカース君と同じでキアラちゃんもここまで一歩も動いてないわよ。そ、それよりあのことって……?」

「えへへー。でもカー兄と当たりたかったのにー! もーばかばかー!」

これは負けてラッキーだ!

私とキアラがこんな所で戦ってみろ。大惨事が起こるぞ!?

「キアラ、ちょっと錬魔循環してみな?」

気になった。まだ大丈夫とは思うが……抜かれてたらどうしよう……

「いいよー!」

私はキアラの額と臍に手を当てて魔力の流れを感じ取る。

「いっくよー!」

嘘だろ……

魔力の流れが山奥の泉状態だ。まさに明鏡止水……静かに存在する波一つ立たない清らかな湖……

当時の私を抜かれた……あっさりと……

現在の私にも追いつきかけている……

そもそも私が感じた錬魔循環のイメージ、最初は髪の毛だった。髪の毛のような細い魔力がナメクジのようなスピードで全身をゆっくりと廻る。

それがやがてミミズになり、蛇になり。

スピードも歩くようになり走るようになり、車になり新幹線になり。

そんな過程を経て辿り着いたのが、オイル状態だった。滑らかなオイルが全身を絶えず循環するような魔力の流れ。これで一つの殻を破ったと言ってもいいだろう。

その状態から修練を続けて、次に到達したのが先程のキアラの状態。山奥の泉状態だ。

そして現在の私が、周りに何もないかのような白い部屋、空間。魔力が流れているのかすらよく分からない妙な状態だ。あの時は特注の王族用拘束隷属の首輪を付けて頑張っていたよなぁ……

まさかキアラも!?

いや、違う。確かに首輪はしているが、あれは循環阻止の首輪か。私もあの頃は同じそれを付けていたはずだが……

つまり……

才能の差?

くっ、分かっている、いや、分かっていたさ。いつか抜かれるであろうことは……

だが、それは今じゃない!

兄より優れた妹など存在しねぇ! 今のところは……