軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

282、キアラとベレンガリア

治療院に戻ってみると……

「うえーん旦那様旦那様! 私が留守にしたばっかりに! もうどこにも行きませんから!」

「父上のばかばかー! ばかばかうわーん!」

ベレンガリアさんとキアラだ。父上に縋り付いて泣いている。そういえば昨夜から姿を見てなかったな。

「ねえ母上、あの二人はどこかに行ってたの?」

キアラがいれば母上はかなり魔力を吸収できたろうに。

「昨日の朝から王都に行ってたの。フランツウッド王子と遊ぶ約束をしてたらしいわ。さすがにキアラ一人で王都を歩かせるわけにはいかないからベレンを付けてたのよ。」

「そうなんだ……」

くっ、王都までちょいと一泊小旅行ってか!? 一泊だと? まさかあのクソ王子と? そんなわけないよな? な? キアラはまだ子供なんだぞ? ベレンガリアさんと同じ部屋で寝たに決まっている! きっとそうだ!

「父上、具合はどう?」

「おおカース。もう大丈夫だ。お前の魔力のおかげで助かったぞ。ありがとな。」

「助かってよかったよ。それで、コカトリスなんだって?」

「そうだ。標準サイズだったせいかも知れんが門下生は甘く見てしまってな。私の指示を聞かずに戦おうとする始末さ。やっぱ騎士団の部下に指示するのとは全然違うな。」

「それで父上が余計な怪我をしたってこと?」

剣の腕なら私よりよほど上の兄弟子達なのに。状況判断が甘いのか。

「そんなところだ。私もまだまださ。考えてもみろよ。もし兄貴だったらどんな邪魔があっても一振りで斬り捨ててるぜ。飛斬も飛突も使えないクセになぁ。」

「フェルナンド先生と比べたらダメだよ。いくら父上でも勝負にならないんじゃないの?」

実際のところフェルナンド先生も父上も私からすれば上限が見えない。

「ふふっ、そりゃそうだ。兄貴はいつ頃帰ってくるんだろうな……」

先生が帰って来たら……アッカーマン先生のことを伝えなければならないな……少し気が重い。あ、そういえば。

「ハルさんは? 昨日道場の母屋に行ったけど留守みたいだったからさ。」

「ん? 一緒のはずだがな。おーい、イザベル。ハルさんも無事だよな?」

「ハルさん? そう言えば姿が見えないわね。いち早く目を覚ましたのかしら? もちろん無事だったわよ。」

「そうか。無事ならいいんだ。ほらほらベレンにキアラ、もう私は大丈夫だ。離してくれよ。」

「うえーん旦那さまぁ……」

「父上のばかぁ……」

ベレンガリアさんもキアラも父上が大好きなんだなぁ。それよりハルさんが無事? つまりハルさんも父上と一緒にいたってことか?

「ハルさんも魔境にいたの? 無尽流の稽古に?」

「おお、参ったぞ。いくら来るなって言っても付いて来てな。そこにコカトリスまで来るしな。みんな生き残ったようで何よりだ。」

うわぁ……まさかハルさんまで父上のハーレム入りするのか? すごいなこの親父……いいのか母上。

あー、それにしても昨日と今日で色んなことが起こりすぎてるよな。ダミアンとリゼットを始め父上にキアラに……私が注意するべきは……キアラ! いや、ダミアンだよな。ダミアンが負けたら私のほぼ全財産である白金貨四百枚がパーだもんな。とりあえずダミアンとリゼットを無事に領都に連れ帰ることを考えるとしよう。

「よう、マーティン卿。妙なとこで会うじゃないか。」

「よう、ドラ息子。まったく変なとこで会うもんだ。お互い命拾いしたってことだな。」

そういえばダミアンは父上と面識があるんだったな。

「ああ、アンタの息子に助けられちまったぜ。サイコーの男になってるぜ。」

「当たり前だろ? 俺の息子だぜ? なあカース。」

いや、そこで私に振られても……

「まあアレだね。父上もダミアンも助かってよかったよね。」

「オメーよぉ……もぉちっとマシなこと言えねーのかよ……ちっとはマーティン卿を見習えよな。」

「おおそうだドラ息子。俺ぁもう貴族じゃねーぞ。ただの平民だぜ。」

そう言えばそうだよな。私も今や平民だ。

「あー、確かそうだったよな。聞いてたわ。つーかよぉ、平民で俺にタメ口きくなんてアンタとカースぐらいだぜ。」

「なんだぁ? 恭しく接して欲しいかぁ? 三男様よぉ?」

「バカ言ってんじゃねぇよ。ここがクタナツだってことぐらい分かってんだよ。ほんの冗談じゃねぇか。そんでカース、そろそろ出るのか?」

なんだかダミアンと父上ってえらく仲がいいな。

「おう、宵闇に紛れて出るぜ。関所破り上等だな。」

「カー兄、どこ行くのー?」

ぬおっ! キアラ、さっきまで泣いてたのに!

「お、おお、キアラ。ちょっとそこら辺を散歩にな。キアラは明日から学校だよな。どうだ、分からないところはないか?」

「んー、ないよー。私成績一番だもん!」

「おおー! さすがキアラ! 偉いぞ! よぉーしよしよし!」

頭をしっかり撫でてやるぞ。さすがキアラ。一番だなんて。私の時はサンドラちゃんがいたから全然一位をとれなかったんだよな。

「あー、カー兄に伝言だよー。フランツ君がねー、年末に会いたいんだって。」

「フランツウッド王子が? 何の用だって?」

「知らなーい。会いたいんだって。」

「そ、そうか。分かったよ。キアラは王都まですぐ行けるようになったんだな。偉いぞ。」

「えへへー。ベレン姉が案内してくれるからねー。」

「そ、そうかなのか。じゃあキアラ、またな。しっかり勉強するんだぞ。」

「うん! カー兄もお勉強してるのー?」

ぎくっ……

「も、もちろんさ。人生は常に勉強なんだぞ。キアラも頑張れよ。」

「うん! それでカー兄どこに行くのー?」

「ねぇキアラちゃん。お腹空かない?」

おお! ベレンガリアさんナイス!

「うんお腹すいたー。」

よし、この隙に出よう。リゼットも来い。こっちだ!

ふう、キアラに関所破りを知られるわけにはいかないからな。私は品行方正な兄でいたいのだ。