軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

265、カムイとオリバー

あれからもう一時間ほどみんなで飲み食いして解散となった。今は私とアレク、コーちゃんとカムイの四人で歩いている。

「アレク、今日はありがとね。嬉しかったよ。」

「どういたしまして。本当はカースのおうちでやるはずだったの。セルジュ君達も呼んでね。それをマーリンと話してたらダミアン様が聞いちゃって。それなら辺境伯邸で派手にやろうってことになったのよ。」

あー、ダミアンはまだうちの居候なのか?

「ダミアンはあんなイベントを仕切らせたら上手いよね。楽しかったよ。」

「少し残念なのはカースのために料理が作れなかったことかしら。」

「あー、それは僕も食べたかったよ。じゃあ冬休みに楽園でお願いね!」

「ええ、楽しみね!」

そして我が家に到着。

「おかえりなさいませ!」

「おかえりなさいませ。」

マーリンとリリスが出迎えてくれる。

「ただいま。」

「今帰ったわ。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

「さて、坊ちゃん。成人おめでとうございます。従いまして本日より『旦那様』と呼ばせていただきます。」

「よろしくお願いいたします、旦那様。」

なるほど。言われてみれば。坊ちゃんと呼ばれないのは変な気分だが、私だっていつまでも子供ではないしな。

「分かった。これからもよろしく頼むよ。今日はもう風呂に入って休むからいいよ。」

「かしこまりました。では、お休みなさいませ。」

「お先に失礼いたします。」

「ガウガウ」

おや、カムイめ。いいことを言うじゃないか。

「マーリンは帰るんならカムイが送って行くって。」

「まあ! それは嬉しいですわ! 頼みますわねカムイちゃん。」

「ガウガウ」

私達は風呂だ。湯船が気持ちいい季節になってきたよなぁ。

アレクとコーちゃんと風呂。うふふ。

そして風呂から上がったら……ふふふ。

「はぁ……はぁカースぅ……」

「なんだい?」

「あ、明日は何か予定を考えてる?」

「いや、何も考えてないよ。何かある?」

「うん、何かってほどではないけどムリーマ山脈に連れてってくれない? アイリーンに負けないようにと思って……」

おお、さすがはアレク。休日なのに偉い!

「もちろんいいよ。カムイも修行したがってるからちょうどいいかもね。」

「カムイね。あの子もアッカーマン先生に負けて思うところがあったのね。山岳地帯まで行って修行だなんて。」

どの程度強くなったのか私では分からないのが悔しいけどね。動きが速過ぎるんだよなぁ。

「じゃあ明日の予定も決まったことだしもう一回お願いしていいかしら?」

アレク……かわいい……

「もちろんだよ。」

「カース、大好き……」

長い夜になりそうだ。

一方その頃。マーリン宅では。

「おう? なんでぇそのでっけえのは?」

「坊ちゃんのお友達のカムイちゃんよ。私をここまで送ってきてくれたの。」

「ガウガウ」

「おおそうかい。俺ぁ植木職人のオリバーってんだ。坊ちゃんちの庭木も手入れしてんだが会ったこたぁねぇよな。」

「そうそうあなた。今日から坊ちゃんではなくて旦那様よ。」

「けっ、俺ぁ給金貰ってんじゃねぇや。好きに呼ばせろや。これからも好きに手入れするからよ!」

「ガウガウ」

カムイはオリバーのことが気に入ったように見える。

「そうだわ! カムイちゃんも食べていかない?」

「おお! そいつぁいいや! 食え食え!」

「ガウガウ」

こうしてカムイはマーリン宅で夕食を共にすることになった。子供のいない二人にとっては望外の楽しい時間を過ごすことになる。

「おめえカムイっつったか! かわいいやつだぜ! ほれ! 飲むか?」

「ガウガウゥ」

首を横に振るカムイ。酒は好きではないのだ。

「なんでぇ飲めねえのか。男らしくねぇなぁ。あれ? お前オスか?」

「ガウガウゥ」

またもや首を振るカムイ。

「そんな凛々しい顔してメスだったんか。なら飲めなくてもしゃあねぇな。」

「ガウガウゥ!」

やはり首を横に振るカムイ。どういうことなのだろうか?

「あぁん? メスでもねぇってか? 世の中不思議なことがあるもんだのぉ……」

「ほらあなた、できたわよ。カムイちゃんも食べなさい。」

「ガウガウ」

「おいマーリン! こいつオスでもメスでもねぇんだとよ! 分かるか? 俺にぁさっぱり分からん!」

「私にも分からないわよ。でも、どうでもいいじゃない?」

「全くだ! なあカムイ! さあ食え食え! マーリンの料理は最高だぜ!」

「ガウガウ!」

そんなこと知ってると言わんばかりに返事をするカムイである。

「だからよぉ俺ぁ言ってやったのさ! 短気をおこしてはなりません! 植木の命は長い目で見るものですってよぉ! それをよぉあのボケ伯爵はよぉ! 今すぐ治せとかバカぬかしやがってよぉ! 治るわけねぇっつぅんだよ! なあ?」

「ガウガウ」

「おお! 分かるか! 分かるよなぁ! んっと貴族にゃあロクな奴がいねぇぜ! おっと、フランティア家とアレクサンドル家は別だぜぇ! おお、カース坊ちゃんもなぁ!」

「ガウガウ」

「だよなぁ! 俺ぁフランティアに生まれてよかったぜぇ! おめぇはどこの生まれだぁ?」

「ガウガウ」

「おおそうか! よく分かんねぇのか! おめぇも変わった奴だよなぁ! おおよしよし! かわいいやつだぜ!」

「ガウガウ」

マーリンはすでに寝ている。オリバーは酔ってカムイを相手にクダを巻いている。しかしカムイは意外に楽しそうに相槌を打っているようだ。さほど空腹でもなかろうに、オリバーから差し出されるツマミが存外美味しかったことと関係あるのかも知れない。