軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

251、真打ち登場

私達が少しだけしめやかに酒盛りを続けていると『範囲警戒』に反応があった。いくら奥ではないと言ってもここはムリーマ山脈の中なんだから、これぐらいの用心はしておくのは当然だ。来たのは執事かな? いや二人だ。

「来たぜ。二人か。」

何となく、俺は気付いてるんだぜ感を出したくなった。

「え? あの執事っすか?」

「逃げずに戻って来たんすね……」

「いやーそれが賢明だろ……」

「お待たせいたしました……こちらは我が主人、ダン・ド・スペチアーレ男爵です。」

「遠路はるばるようこそ。私がダン・ド・スペチアーレです。早速ですがこのお酒、一つはセンクウ親方の作品がベースですね? だが、なぜこうなったのかが分からない。あなたが手を加えたのですか!? しかも残り二つに関してはさっぱり全く分からない! こんなお酒があるなんて! 教えてください! さあ! 何でもします! 靴を舐めましょうか! それとも肩を揉みましょうか!」

見た目と口調が全然合ってない。折れそうなほど細いナイスミドルなのに。

「初めまして。カース・ド・マーティンです。高名なスペチアーレ男爵にお目通りが叶い恐悦至極でございます。」

「いやいや、そんなにかしこまらないでください。聞けばうちのセリグロウが大層失礼をしてしまったそうで、この通りです。申し訳ありませんでした。」

そう言って頭を下げる男爵。

「申し訳ございませんでした。」

執事も同様に頭を下げる。

「分かっていただけたならそれでいいんですよ。ね? コーちゃん?」

「ピュイピュイ」

「うちのフォーチュンスネイクも許すと言ってますので、お気になさらずに。」

「ありがとうございます。そこで大変言いにくいのですが、例の樽……お返しいただけないでしょうか……もちろん代わりのお酒は提供いたしますので……」

「ピュピュピュイー!」

まさかコーちゃん? 真の狙いはそれだったの? そこまで展開を読みきってあの樽に拘ったの!? 恐ろしい子!

「喜んでお返しするそうです。その代わり、樽を選ばせて欲しいと。」

「大地の精霊様に飲んでいただけるとは光栄です。ではご案内いたします。申し訳ありませんが冒険者の方々はこれにて。ご苦労様でした。」

「あ、ど、どうも!」

「また、のご指名を!」

「ご、ごくろっす!」

「じゃあ魔王さん、またどこかで!」

「あざっした!」

「いい経験をさせてもらいました!」

「おう、またな。白金貨は返せよ。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

色々あったがやっとスペチアーレ男爵に会えた。後は居場所さえ分かれば今後いつでも来れるしな。

「お客様に対して非常に申し訳ありませんが、目隠しをさせていただきます。」

「目隠しですか? なるほど。いいですよ。」

誰にも会わないってのは居場所を隠すためか。それぐらいならまあいいか。

『闇雲』

執事の魔法で顔を丸ごと覆われてしまった。このまま歩くのは大変だから飛ぼうかとも思ったが、せっかくだから心眼の修行といこう。山道を目隠しで歩く。これはハードだぜ!

「え? そのまま歩かれるのですか?」

何だ? 手を引いてくれるつもりだったのか? そりゃそうか。

「はは、まあ、せっかくなんで。ちょいと遅くなるとは思いますがご勘弁を。」

「すごいですね……この山道を目隠しで歩くだなんて……」

いや、よちよち歩きだ。先生なら走ってるよな。カムイも楽勝そうだ。そこまで遠くなさそうだし、このまま歩かせてもらうとしよう。