軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

241、ドナハマナ伯爵との面談

「ところで、バンダルゴウの街も治安はめちゃくちゃだし騎士も腐っていた。ここと事情は似たようなもんか?」

「いや、確かにあっちにもヤコビニの子供達はいるようだが、事情が少し異なる。確信はないのだがヒイズルの手先が入り込んでいる可能性がある。」

「ほう? ヒイズルか。あり得ない話じゃあないな。もしかしてムラサキメタリックに関係しているのか?」

「さすがに魔王だな。そこまでお見通しとは。あの金属は危険だ。我らローランド王国にとって天敵と言ってもいい。貴族でござい、なんて言っても魔法で勝てなければ平民と変わらぬ。まだ冒険者の方が強いだろうよ。」

すごいなこいつ。ちゃんと状況が分かってやがる。紫の鎧を身につけてしまったら近衛騎士ですら一対一で互角だったんだからな。そこらの魔法部隊どころか騎士団だってどうにもなるまい。それに紫だけでなく白い鎧もそれなりに厄介だったし。

あれ? もしかして……

「ちょいと気になったんだが、ヤコビニ派がヒイズルを引き入れたってことはないか?」

「あり得る話だ。晩年のヤコビニは妄執に狂っていたからな。自分こそがこの大陸の帝王になる。そして国号をダイヤモンドクリーク帝国と改める、なんて本気で考えていたものだ。私も面従腹背するのに精神をすり減らしたさ。」

うわ……完全に狂ってるじゃないか……ダイヤモンドクリーク帝国っておとぎ話の世界じゃん。頭がイカれてる者同士だから偽勇者と手を組んだってことか? そんだけ狂ってたんなら奴隷に落としても使い物にならんわな。代官がひと思いに首を刎ねたのはそこにも理由があったのだろうか。

エルフにしてもそうだが、もっと真っ当な悪人はいないのか。遊びだったり狂ってたり、まともな悪人がいない。勧善懲悪でめでたしめでたしってさせてくれよ。

思えば勇者ムラサキはどうだったんだろう。魔王を倒して万事解決だったのだろうか。たぶん、その後こそ大変だったんだろうな……きっとそれが現実なんだろう。全然ファンタジーあるあるじゃない……

と、思ったけど……そもそも私が心配することじゃないよな。放っておいて、私に火の粉が飛んで来たら対処すればいいんだよ。やはり私は働きすぎだよな。わざわざ自分から仕事増やさなくても、ね。

「だいたいの事情は分かった。手間を取らせて悪かったな。こいつはほんの気持ちだ。」

バンダルゴウで回収した脛当て、左右のグリーブを出す。

「待て、今それを魔力庫から出したな? 一体どうやって?」

「それはこのムラサキメタリックが古い品だからさ。この夏に王都で暴れた偽勇者達が身に付けていたやつは俺でも収納できない。まさに絶対魔法防御と言っていいだろう。」

「そ、そこまでなのか……どれ……」

伯爵はグリーブを片方だけ手に持ち、魔力庫への収納を試みている、が……

「無理だな……私にとっては、いやほとんどの魔法使いにとっては恐るべき装備だ……これほどの物をくれると言うのか?」

「ああ、伯爵ほどの男に時間を取らせたんだ。当然だろ? もし困ったことがあったらギルド経由で連絡をくれ。気が向いたら受けることもあるだろうさ。」

「君の名前を利用しても構わんか?」

「ん? 具体的には?」

「このグリーブだ。これは私が魔王本人から友好の証として受け取ったと大々的に宣伝するのさ。」

ほう、やっぱこの伯爵は優秀なんだな。使えるものは何でも使うってか。

「構わんよ。ギリギリ嘘じゃないからな。」

「感謝する。ちょっと待っていてくれ。」

そう言って伯爵は席を立った。バンダルゴウに行ったのは無駄足だったが、ラフォートに来たのは有益だったな。

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

ん? お腹空いた? よしよし、何か食べような。適当な宿でも探すとしよう。さっき焼き魚食べたばっかりなのに。結局私は一口ぐらいしか食べてないんだぞ。

「待たせたな。お土産を用意した。よかったら持って帰ってくれ。」

小さめの樽。酒かな?

「ありがたくいただこう。これは……お、ディノ・スペチアーレか? 嬉しいな。」

「ああ、ディノ・スペチアーレの五年物だ。十二年物には及びもつかないがこれしかなくてな。」

「ありがたい。これが好きなんだよ。よく知っていたな。偶然か?」

「偶然に決まっている。これしかなかったのだから。まさかその歳でスペチアーレが好きとは思わないさ。」

偶然だからこそ嬉しいものだ。それなら私も。

「せっかくだ。何か容れ物はないか? センクウ親方の酒があるから分けてやるよ。『ラウート・フェスタイバル』だ。」

「ほう。それは嬉しいな。予約がいっぱいでなかなか買えなくてな。これに入れてくれるか?」

予約がいっぱい? 私が買った時は八樽も残っていたが……まあいいか。

伯爵が用意した容器に中身を移す。いやぁ酒の好みが合う奴ってのは憎めないもんだな。気まぐれだったけど、来てよかった。