軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

225、バンダルゴウの洗礼

ほどなくしてギルドに到着。適当に歩いても着くもんだよな。中は……中々広いな。クタナツ以上、領都以下ってところか。

受付もそこまで混んでいない。少し待てば私の番だ。コーちゃんとカムイはギルド前で待機している。

「いらっしゃいませ。どんなご用ですか?」

「用はないけど一週間ほどバンダルゴウに滞在するので挨拶をね。」

そう言ってギルドカードを手渡す。

「はい。わざわざありがとうございます。ちなみに船の警護依頼が美味しいですよ。」

「なるほど。ありがとう。気が向いたらやらせてもらうよ。」

船の警護か。船って乗ったことないんだよな。馬車にも酔う私だ。船なんか絶対酔って仕事にならないだろうな。一応依頼を見るだけ見ておくか。

やはり海系の依頼が多い、次いで護衛か。エルネスト君も護衛で領都に来たって言ってたもんな。さて、次はデルヌモンテ伯爵家を探すとするか。まあ急ぐことはない、のんびり散歩しながらショッピングでもしながら探すとしよう。夕方までに到着できればいいだろう。

よし、コーちゃんもカムイもお待たせ。昼までもう少しあるけど何か食べようか。

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

屋台を回りたいって? いいとも。私も気になっていたんだよね。串焼き系が多いのはどこも同じだが、ここのは肉だけでなく魚貝系まである。値段もピンキリだが、片っ端から食べてくれよう。

ステーキっぽいやつを串で焼いてる店から貝を連ねて焼いている店まで。いつもながらコーちゃんもカムイも串でも器用に食べるんだよな。コーちゃんなんか尻尾で串を掴んで食べてるし、カムイは串ごと口に入れて後から串だけを吐き出している。

「魔王はーん。ご機嫌でんな。」

「何か?」

見るからに胡散臭い奴が寄ってきた。城門で待ってる時に居た奴だっけ?

「さっきはどうもでしたな。さすがは今をときめく魔王はんでんな。身につけてるモンが上から下まで一級品ときてますわ。」

「それが何か?」

「分かってまっさ。そんな一級品を愛用される魔王はんや。泊まる宿も一流店と決まってますわな?」

「まあな。」

デルヌモンテ伯爵家で泊まっていけと言われるかも知れないが、さすがに気が進まないんだよな。宿をとってから行こうとは思っていたところだ。

「バンダルゴウで一番の宿にご案内しまっさ。旅は道連れ言いまっさかいな。」

「案内するのはいいが泊まるとは限らんからな。」

「よっしゃ! 決まりでんな! ほなご案内いたしますわ! こっちですわ!」

この上なく怪しい男もいたものだ。客引きって感じではないが……

「ほな改めて自己紹介しまっせ。ワイはアレクサンドル公爵領でも随一の商人カケィフ言いまんねん。よろしゅうに。」

「カース・ド・マーティン。この蛇ちゃんはコーネリアスで狼ちゃんはカムイだ。」

「どうもどうも。カケィフでっさ。よろしゅうなあ。」

「それでカケィフさんよ。何が目的だい? 何か商売でもしたいのか?」

「かぁーっ! 野暮なこと言いまんなー! あんさんは天下の魔王はんやで!? 誰だってお近付きになりたいに決まってまっしゃろ。」

えらく素直だな。

「まあ付いてくるのは勝手だがな。どうなっても知らんぞ。」

「逆でっせ。一流の宿に案内するんはワイですわ。行きまっせ。」

まあいいか。

目抜き通りを過ぎてまだ歩く。

「まだか?」

「まあまあ、一流の宿ってもんは街から離れた所にあるもんでっせ。」

段々と治安が悪いエリアに差し掛かってきた。

「まだか?」

「まあまあ、こんな所ほど通が選ぶ宿が隠れてるもんでっせ。」

せっかくだから行ってみるか。面白いことになりそうだし。

本格的にスラムになってきた。まさかの客引きあるある?

「さあて着いたぜ。宿泊料はお前の有り金全部だ。死にたくなけりゃあとっとと出しな。」

マジだ。スラムの空き地に着いたらいきなり口調が変わりやがった。手慣れてんなー。なんだかこの手の奴ってかなり久々だな。面白いわー。素行の悪そうな奴らもワラワラ集まって来やがった。

「こいついい服着てやがるぜ」

「身包み剥いじまおうぜ」

「この狼も高く売れそうだな」

「ほらほら早く出しな」

「命だけは助けてやるからよー」

どうしよっかなー。

「お前ら俺を知らねーのか?」

「ギャハハ! 知るわけねーだろ!」

「俺ぁ知ってるぜ! 魔王のモノマネだろ!」

「ここまで念入りに真似する奴ぁ珍しいな!」

「蛇に狼まで連れてよー! そこまでして魔王の真似したいかねー!」

「しかもこいつ魔王の本名まで名乗ってんだぜ!」

うわー、初めから偽物と思われてたパターンか。まあここに来るのは初めてだしな。よし、最近せっかくの母上の教えを無視してたことだし今日は教え通りに……

『水壁』

全員頭まで閉じ込めてやった。最初の怪しい奴は首から上は出している。

「なっ! なんなんだよお前は!」

道中の怪しい口調で喋ってくれよな。あの怪しさは少しクセになるかと思ったのに。

「魔王だよ。クタナツのな。」

「バカな! ロクに魔力も感じないくせに!」

「別に信じなくてもいいさ。お前はどうせ死ぬんだからよ。」

「ま、待っとえくえ! 金ならはあう!」

何言ってんだこいつ? しっかり喋れよな。

「なら約束な。この場で命は助けてやる。だから俺に絶対服従しろよ?」

「あ、ああ、分かっとうあっく……」

よし、効いたな。

「とりあえず有り金全部出しな。」

「あ、は……」

おっ、意外に持ってるじゃないか。大金貨五枚かよ。後は金貨と銀貨が少々か。

「隠してる財産の在り処は?」

「アレクサンドル公爵領に土地と家、が、ある……」

別に欲しくもないが、一応聞いておこう。

「お前の名前は? その土地屋敷の名義は?」

「あ、う、カケィフ……名義は、カケィフ・ハンシンノ……」

おや、意外にも本名だったのか。

『水壁解除』

「そいつらが撒き散らかした金を拾ってこい。」

こいつ以外を全員溺死させたもので魔力庫の中身を撒き散らかしてやがる。

「あ、あ、トーマ……スカニ……ホネネ……」

「拾ったら持ってこい。懐の金も探っておけ。」

「あ、う、う……」

全部合わせて金貨二十枚分ってとこか。貧富の差が激しいな。仲間じゃないのかよ。とりあえず死体は跡形もなく燃やしておこう。

『火球』

「さて、お前の上司の所に案内しな。ボスとか兄貴分とかいるんだろ?」

「あ、あう……」

やはりいるのか。意外な収穫になるのかどうか。やっぱスラムってクソだわ。