軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

216、楽園の拡大

八等星になった翌日、アグニの日。私はまた楽園に来ている。外側の城壁建設の続きだ。まだまだ先は長くなりそうなのでじっくり行うより他ない。

はてさて今日からは基礎の杭打ちだ。鉄塊の魔法でひたすら杭を作ろう。中空の円柱、厚さ二センチ、直径は五十センチ、長さは十五メイルだ。こいつを一平方メイル辺りに一本打ち込んでいく。城壁の厚さは十メイルにする予定なので、一辺が八キロルだと必要な杭は……二十四万本……

イカれてる……

鉄なんていくらでもあるだろうから枯渇することはないとは思うが、資源の無駄遣い感が半端ないな。まいっか。きっとこの星からすれば微々たるものだよな。

そうと決まればヘルデザ砂漠へ行こう。あそこだと鉄塊が非常に使いやすいんだよな。

魔力に任せて鉄塊を使いまくる。最初は一本作るのに一分ぐらいかかっていたが、夕方になる頃には一本あたり十秒程度で済むようになった。結局夕方までかかって出来た杭は三千本程度だ。これは先が長いな……

途中で魔物も襲ってくるし。カムイがいれば退治してくれるんだろうな……

コーちゃんがいれば危険を知らせてくれるし。帰ろ。帰りに岩を拾っておこう。そして帰って寝よう。今日もよく働いたな。

サラスヴァの日。

今日は杭打ちの作業をする。とりあえず感触だけでも掴まないとね。北側から行ってみよう。ここも四隅には巨大な岩を置くつもりなので、適当に北側を東西に打ち込んでいこう。まずは打ち込む前に地均しだな。巨岩を浮かせては落としてを繰り返す。地均しじゃないな、これはもう地盤固めだな。やればやるほどヘコみそうだ。ヘコんだら杭を打つ。ある程度入ったらもう上から岩を落としてしまおう。その方が早い。

うん、奥までズシンと入るな。これは相当に頑丈な城壁が生まれそうだ。楽しみだな。

こうしてこの日は杭が無くなるまで続けた。三千本も使って進んだ距離は三百メイル。やはり先が長いわこれ……私は何と戦っているんだ?

いや、まあ、完全に趣味なんだけどね。小さい子供の秘密基地と同じか。ちょっとスケールが大きいだけだよね。

トールの日。

今日は鉄杭作り。四千本近く出来た!

ケルニャの日。

今日の放課後はアレクに会える! だから昼まで作業したら領都に行くのだ。さすがに四千本は使いきれなかったな。二千本と少しが無くなった。ペースは上がっているな。

さて、タティーシャ村で買い物してから領都へ行こう。

そうさー、そうさー、またぁアレクにぃーあーえるぅ。それだかーら幸せーえー。

到着。午後三時前か。アレクが出てくるまでもう少しか。授業は三時で終わるはずだからな。あー楽しみ。

まだかなまだかなー。

いつも通り魔法学校の正門前にスタンバイ。

まだかなまだかなー。

もちろんアレクに到着の『 伝言(つてごと) 』は送ってある。

来た! アレクだ!

いつものように、いや、いつもにも増して取り巻きが多いな。

「カース!」

「アレク!」

これまたいつものように駆け寄ってくるアレク。さあ、私の胸に飛び込んでおいで。

ああ、いい匂いだ。さあ、すぐ私の家に行こう。

「ま、魔王さん……」

ん? 魔法学校の女の子か? アレクの同級生じゃないか。

「魔王さん! 先日のパーティーでは大変失礼いたしました!」

「あれからアレクサンドリーネ様に本物の金緑紅石だってことを見せていただいたんです!」

「変な疑いをかけてごめんなさい!」

「夕方、青緑から真紅に変わっていく様子には感動すら覚えました!」

あー、アレクが学校で身につけて見せるって言ってたやつだな。意外に素直に謝るんだな。

「分かってくれたらそれでいいよ。審美眼って大事だよね。」

私は自信ないけどね。

「その、それでお詫びのつもりで用意したものがありまして……」

「受け取っていただけないかと……」

「リスナール! 来なさい!」

「用意してきたんでしょうね?」

リスナール? あ、確か偽物が私を狙った件だったな。結局真相を聞いてないな。聞く気もないけど。

「カース殿、この度は偽物にとって代わられるなどという貴族として恥ずべき事態に陥っただけでなく、貴殿の命を狙うなどという大それたことをしてしまい申し訳ありません。その上、罪を減じていただき誠にありがとうございます。おかげで我がダマネフ家は家格こそ子爵に落ちたものの私も父も無罪放免。しかも屋敷の再建費用も辺境伯閣下が半分面倒を見てくださることになりました。そちらの方のお口添えも本当にありがとうございました。」

そう言って深々と頭を下げた。本心かどうかはともかく、私に屋敷をぶち壊されたはずなのに、こうやって頭を下げることができるとは。

「こちらには何のわだかまりもない。その謝罪、受け入れよう。」

「ありがとうございます。つきましてはこれは我ら全員の気持ちです。アレクサンドリーネ様とも相談して用意しました。」

手の平サイズの箱を開けると……

「まさか、羅針盤!?」

「そうです。アレクサンドリーネ様の卒業と同時に旅に出ると伺いました。それならばと思いまして。常に北を指しております。」

「これはありがたい。出発前に発注しようと思っていたけど、手間が省けたよ。ありがたくいただこう。」

「これには貴族学校の者もお金を出しております。合わせてお許しいただけると……」

「あ、クライドとかって奴らかな? もちろんいいよ。あと挨拶に来なくていいからね。」

母上の教えを盛大に破ってしまったか……だって何もかも面倒になってしまったんだもん……

悪い前例を残してしまったのだろうか……

「カース君!」

「え? セルジュ君? と、その後ろは……」

「僕の同級生達だよ。例のパーティーの件で謝罪とお礼を言いたいそうだよ。」

「あー、それはもう聞いたからいいよ。はい解散。セルジュ君わざわざごめんね。もう解決したからいいよ。それより、せっかく来てくれたんだからうちでお茶でも飲んでいかない?」

「あ、そうなの? でもアレックスちゃんに悪いからやめとくよ。じゃあまたね。」

さすがセルジュ君、話が早い。こんな奴らの相手などしていられるか。私は家に帰るぞ。

あいつらだってほっとした顔をしているからこれでいいのだ。

さあ、帰ってアレクとの二人だけの時間だ。二週間ぶりだからな。燃えるぜ!