軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

201、魔法学校の貴族子女

楽園の我が家、寝室。目覚めても一人。玄関前まで出てみてもやはり一人。コーちゃんもカムイもいない。

仕方がないので再び伝言を頼み、私は一人、領都へ出発した。途中、タティーシャ村に立ち寄り魚と貝類を補充した。ツウォーさんの子供たちはだいぶ大きくなっていた。早いものだ。

そのまま村長達とみんなで海を見ながら海鮮バーベキュー。やはりここはいい村だ。

昼過ぎ、領都へ到着。いよいよ放課後にはまたアレクに会える。それだけで幸せ。

さて、まずはギルドに寄ってみよう。例の魔石がどうなったか確認しておかないとな。

時間が時間のためか混雑していない。列に並ぶことなく窓口へ。

「こんにちは。例のクリムゾンドラゴンの魔石はどうなりました?」

ギルドカードを見せながら質問をする。

「ひっ、魔お、んんっ。その件でしたらフランティア中の全ギルド、及び全商会に通達してあります。後は待つだけかと。」

「もちろん個人経営の店にもですよね?」

「そうです。」

フランティアにおけるギルドの力は結構大きい。正式名称こそ冒険同業者協同組合だが実際には商工業組合の要素も持っている。宿屋、飲食店、武器屋、防具屋など大抵はギルドに加入している。クタナツならばいくつか未加入の店もあるが、ここ領都にはほぼないらしい。まあ、これだけ動いたっていう誠意は汲み取ってあげるとしよう。

実際には、フランティアから外に出たらほぼアウトではあるが……

「分かりました。発見に期待しております。」

さて、これで放課後まで完全にひまになった。庭に岩を出しておいてもいいが、帰った時にしよう。腹もへってないし……よし、カフェに行こう。昼下がりのコーヒータイムと洒落込むかね。

やはりコーヒーはカファクライゼラで。選んだ銘柄は『ビートロンリ』

飲むとビートを感じるここのコーヒーに相応しいネーミングだと思う。一際高かったが頼んでみた。

うまい。フワッと広がる豊かな香りはまるで花か果実か。良質な酸味は爽やかな瑞々しさを感じさせてくれる。そして飲んだ後も口の中に余韻が残る。そんな状態なのに二口目をくれと舌が求めているかのようだ。なぜか空を見上げて走りたくなるような気分にさせてくれた。一人で寂しい私の心に寄り添う味わいだったのだろうか。

堪能した。最高だった。そして値段も最高だった……金貨二十枚。普段のコーヒー、金貨二枚だってかなりの高級品なのに。その十倍! まあ美味しかったからいいけどさ……ぜひアレクにも飲ませてあげよう。

「ちょっとアンタ!」

店から出た瞬間に声をかけられた。

「何か?」

私と同年代の女の子達のようだ。貴族っぽい。

「クライドをあんな目にあわせて!」

「ラリーガが奴隷落ちってどういうことよ!」

「あいつらが何したってのよ!」

「取り消しなさいよ!」

何事だ……?

「全く話が分からん。お前ら誰だ?」

いや、その制服は……私の大好きなその制服は……

「クライドがダマネフ伯爵のパーティーでアンタを襲ったことになってんのよ!」

「ラリーガもよ! ダマネフ伯爵邸は半壊してるし! アンタの仕業なんでしょ!」

「クライドみたいな臆病者がアンタを襲うわけないでしょ!」

「ラリーガみたいな弱虫だってそうよ! アンタがはめたんでしょ!」

「クライドとかラリーガって誰だよ? それよりお前ら、魔法学校生か? それもアレクと同級の?」

放課後までまだ一時間半はある。それなのにここに居るってことは?

「そうよ! それがどうしたってのよ!」

「そんなことより白状しなさい! どうやってあいつらをはめたのよ!」

「あいつらってバカで能無しだからさぞかし操りやすかったでしょうよ!」

「あんたそれでも魔王なの!?」

「一斉に話すな。ダマネフ伯爵邸の件なら伯爵本人から聞け。俺はまだ狙われた理由すら聞いてないからよ。」

と言うかもう放置しておこうと思ってたんだよな。もう嫌だ……面倒くさい。何も考えたくない。

「適当なこと言って!」

「ラリーガを助けなさいよ!」

「あんな臆病者をはめて気分がいいっての!?」

「魔王なら直接やりなさいよ!」

「もう疲れてんだよ……せめて一人ずつ順序立てて話してくれ……カファクライゼラに行こうぜ……奢るから……」

今出たばかりなのにまた入店かよ。

「好きなモノ頼んでいいんでしょうね!?」

「コーヒー飲むわよ!?」

「キラービーハニーのミルクセーキだって頼むし!」

「新種のバニールの冷たいデザートだって食べるわよ!」

結局アレクがここに来る二時間後までこの女どもは飲み食いし続けた。貴族じゃねーのかよ!

「それで? カースに逆恨みした上にこれだけも奢らせたの? 金貨五十枚は超えてるわね?」

「ア、アレクサンドリーネ様……」

「だって、美味しくて……普段は高くて来れないし……」

「キラービーハニーって蕩ける甘さ……」

「バニールの香りだって鼻から脳を直撃するかのよう……」

うう、アレクぅ……やっと会えたのにこんな奴らの相手をしてもらうなんて……

もう帰りたい……帰ろう……

「文句は全てダミアン様に言いなさい! カースは被害者なのよ! 分かってるの!? カースはね! 私の目の前で首に斧を叩き込まれたのよ!? 普通死んでるわよ!? ホプキンスさんも同じ目に遭ってみる?」

「いや、そ、その、それは……」

「じゃあ黙ってなさい! とにかく今回の件、仕切っているのはダミアン様よ? カースに文句言っても始まらないから!」

「わ、分かりました……」

「うう……ラリーガ……」

結局私が全て支払いをした。貴族の割に貧乏そうだし、腐っても女の子だしな。ちなみにこの子達は停学中らしい。

そして私とアレクは手を繋ぎ我が家まで歩いている。

「いきなり 伝言(つてごと) でカファクライゼラに来てって言われたから驚いたわ。」

「ごめんね。かなり参ってたんだ。来てくれて助かったよ。」

「なんだかカース元気がないわね。何かあったの?」

「うん、実はね……」

砂漠での八つ当たりからコーちゃんカムイの不在まで順を追って説明した。ダークエルフの村での出来事はマウントイーターについてだけ軽く話しておいた。

「そうなの、コーちゃん達がね……」

「なんだかすごく寂しくなっちゃってさ。アレクにすごく逢いたかったんだよ。」

「カース、私もよ。すごく逢いたかったわ。」

自宅に辿り着いた私達にもう言葉は必要なかった。マーリンもリリスもいない広い我が家に二人きり。アレク大好き。