軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

161、ダンスパーティー3

踊り終えたアレクが私のところに戻ってきた。おかえり。

「カース……貴族学校の女の子と踊っていたわね……? 楽しかった?」

ふふ、アレクめ。ヤキモチか?

「全然。おかげでアレクが踊ってるとこが見れなくてさ。あーあ残念。」

「もう……バカ……」

ふくれっ面のアレクもかわいいぜ。

「そういえばカース、私が踊ったリスナール君なんだけど、なんだか変だったのよ。」

「変? どこが?」

「それが私にも分からないの。同級生ってだけで特別親しいわけでもないから。強いて言うなら違和感がある、ってとこかしら。」

私からすれば先ほどの女の子三人組も十分変だよな。薬を盛る奴までいるし、どうなってんだこのパーティーは。

「大変長らくお待たせいたしました! 余興の時間がやって参りました! 本日は特別ゲストが参加されておりますので、ぜひ余興を手伝っていただきたいと思います!」

リスナール君だよな。私には違和感が分からない。しかしアレクがおかしいと言うならアレクを彼に近付けるべきではないな。

「魔王カース殿! ステージにお上がりいただけませんか?」

名指しかよ。呼ばれたからには行くけどさ。コーちゃん、アレクを頼むね。「ピュイピュイ」

「皆さま! 勇敢な魔王カース殿に拍手をお願いします! さあ魔王殿、こちらの箱に入っていただけますか?」

用意されたのは直方体の木の箱。小さい穴がいくつも空いている。私の首から下がちょうど入るサイズだ。

箱に入ると首だけを出した状態で蓋をされた。立った状態でのギロチンかな。

「さあ! ご覧の通り魔王殿は身動きできなくなりました! ここに二十本のサーベルがあります! このサーベルを一本ずつ刺していき、何本目で魔王殿が根をあげるかを賭けていただきます!」

「おい……マジか?」

「大丈夫です。刺さらないサーベルですよ。適当に痛いフリをしてもらえますか?」

ぼそりと伝えてきた、なるほどね。マジックショーって感じね。これは新しいな。古い見世物、いわゆる『手妻』とは一線を画すものか。

「それでは賭けを締め切ります! では魔王殿に剣を刺してみたい方はステージにお上がりください! こんな機会二度とないですよ!」

これは失敗したかな? どうもいいように利用されてしまってるな。こいつの箔付けに一役買ってしまったか。

そして一人目が剣を構える。何やら会場に向かって自己紹介をしている。そして私の腹部を目掛けて剣を突き刺した。腹に何か触れた感触はあったが刺さるなんてことはない。気に入らないがサービスぐらいしてやるか……

「ぐあっ!」

会場は盛り上がっている。まだ一本目だぞ? 心配そうな悲鳴とざまぁと言いたそうな歓声が半々ぐらいか。アレクは一切心配してないって顔だな。

それからも私は痛そうな演技を続けた。演技派だからね。しかもこの箱には足元や剣を刺した穴から血が流れる機能まで付いていた。やるものだ。

そして十五本目。クライドなんとかって奴か。あれ? こいつ斧を持ってるぞ?

「お前さえ……いなければ……」

何か言ってるが聞こえない。いきなり箱を前に倒され私はステージに下を向いて横たわる。

「死ねぇーーーー!」

マジの断頭台スタイルかよ。誰か止めろよな。

「ぐっ!? くそっ! どうなってる!」

当たり前だ。お前ごときの斧で私が切れるはずがない。私の自動防御は鉄壁だ。しかし、いつの間にかステージの全員が斧を持ち、私に向かって振り下ろす。『金操』お互いを攻撃してな。一瞬にしてステージ上に奴らの手足が転がる。

『散弾』

箱の内側から魔法をばら撒いて、箱もろとも撃ち抜く。無傷な奴は三人か。『麻痺』

残り二人、こいつらは雑魚じゃないな。斧を放り投げ剣を構え襲いかかってきた。『金操』自分の足でも刺してろ。ぬっ、まだいるのか。ステージ下から魔法が飛んできた、と思ったら術者はアレクに制圧されている。三人か。

ここは伯爵家だったな。可哀想に。どれだけ歴史があるのか知らんが今夜で滅亡だな。私に対してこれだけやらかしてくれたんだからな。

『観客の皆さん。今からここは更地になります。五分以内に避難してくださいね。』

拡声の魔法を使い周知する。逃げる奴の中に黒幕とかがいるのかも知れないが気にしない。私に敵対したら家が更地となる。今後はこれを徹底しようと思うのだ。アレクと私が捕らえた十八名は後でじっくり取り調べるけどね。『拘禁束縛』身動き一つできないようにしておこう。

「こっ、これはどうしたことだ!?」

おっさんが現れた。

「あら? ダマネフ伯爵ではございませんか。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。アレクサンドリーネでございます。」

たおやかにアレクが挨拶をする。そうか、ここの当主か。一度会ったことがあるはずなんだけどな。

「アレクサンドリーネ嬢……これはいかなることか? いかな貴女と魔王殿とはいえ、無体が過ぎるのではないか?」

「あら? 見てお分かりになりません? ご子息を含むこの者らが余興にかこつけてカースの命を狙ったのですのよ? それをカースは一人も殺すことなく制圧しました。何か問題でも?」

「あと三分だよ。」

決定に変わりはない。誰が来ようが予定通りここは更地となる。

「なっ! 何を!? 頼む! 弁明をさせてくれ! きっと何かの間違いだ! 頼む、この通りだ!」

ほう? 伯爵ともあろう者が跪いたか。いいだろう。

「残り二分半。で一旦ストップ。弁明があるなら聞いてあげましょう。」

弁明があるぐらいなら息子の愚行を止めていたばすだ。何も知らなかったのだろうがね。

「そ、それが何も分からぬのだ! 朝からリスナールの姿が見えなかったことが関係しているかも知れぬ!」

そんなトコだろうな。いつだったか王宮でも似たようなことがあったな。あの時は側用人が偽物だったんだっけ? そうなるとあの偽物自身が個人魔法か何かで化けたのではなく、他人を化けさせる魔法使いが別に存在するのか? ありそうだな。

「少し見えてきた。伯爵、アンタの命は助けてやる。だから早く逃げな。残り二分だからな。」

「だ、だから何を!?」

「俺に敵対した家は更地になるんだよ。まさか貴族のアンタが息子の仕出かしたことを知らないで済むとは思ってないよな?」

「ぐっ……」

知らなかったでは済まない。これは平民から王族までの共通認識だ。無知は罪だからな。

「舐めるな! このダマネフ伯ラスニールが十五にも満たぬ若造に脅されたぐらいでおめおめと逃げると思ったら大間違いだ! やるならやれ! 私の命ある限り抵抗をするまでだ!」

ならば仕方ない。命より建物が大事だと言うなら命運を共にするがいいさ。

「アレク、こいつらを連れて先に出ておいてくれるかな? そろそろ騎士団も来るだろうから説明もお願い。」

「ええ、分かったわ。」

アレクは動けない十八人を浮身と風操で運び出す。まだ死んでもらっては困るからな。

「伯爵、俺としては人死を出す気はない。引いてくれないか? 残り一分だ。」

「彼らを助命してくれたことには感謝する。しかし私は先祖代々受け継いだこの屋敷を更地にすると聞かされて抵抗しないわけにはいかない。魔王たる君に勝てるなどと思い上がってはいない。私ごとやれ!」

「そうかい。伯爵、アンタは本物の貴族なんだな。残念だ……」

『水球』

真上に向かって巨大水球を打ち上げた。

屋根を突き破り大量の瓦礫が私達を目掛けて降り注ぐ……