軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139、サンドラの両親、カースの誓い

私達がゼマティス家に戻ると、サンドラちゃん達も母上達も帰って来ていた。

「カース、えらく大人しい挨拶だったわね。陛下の機転がなければ魔王の雷名に傷が付いていたわよ?」

「そう? 僕は気にしないよ。それより母上、今夜はここで食べるの?」

「ええ、聞いたわよ。ヒュドラですってね。ありがたくいただくわ。今夜はアステロイド達も全員いるわ。」

それはよかった。それにしても魔王の雷名ってなんだよ。私はそんなに偉い人間ではないぞ。

「あ、サンドラちゃん。ちょっと相談があるんだ。来てくれない?」

「いいわよ。あら、二人っきりで何の相談をするのかしら?」

アレクにもまだ伝えてない話だしな。これはサンドラちゃんより先に誰にも話す訳にはいかなかったんだ。

「アレクには後で教えるから待っててね。」

「いいわよ。カースも大変ね。」

確かに! 私ってかなり働いてるよな?

私とアレクが使ってる客室へと入る。

「サンドラちゃんのご両親だけど、おば様は多分近いうちに解放されるよね? おじ様なんだけど、解放して欲しい?」

「いきなりね。私の個人的な感情としてはどうでもいいわ。でも弟達のことを考えると悩むわね。解放されたって元奴隷の子どもなんてロクな扱いにはならないし。元奴隷の元貴族、そんな両親も果たしてまともに生きていけるのか怪しいものね。」

「なるほど。この件を相談した理由がね、鴉金のシンバリーを解放して欲しいと頼まれたからなんだ、ラグナに。僕としてはシンバリーにもう何の感情もないんだよね。捕まえる時に手足を数十回ぶち切ったしね。」

「それで私の両親のことを相談してくれたのね……気にしなくていいのに……」

さすがにそうはいかない。あんな極悪人を解放してサンドラパパママが解放されないのは理不尽な気がする。

「だからシンバリーを解放するならまずご両親や金庫番の騎士が先じゃないかと考えてるんだ。もっともあくまで僕は嘆願をしに行くだけだからどうなるかなんて分からないけどね。」

「うぅん、しばらく待ってもらっていい? 弟達に手紙で聞いてみるわ。申し訳ないけどクタナツの孤児院まで届けてもらえないかしら?」

「いいよ。サンドラちゃんの納得が何より大事だと思うし。ラグナなんていくらでも待たせておけばいいんだよ。」

何が体が寂しいだ。極悪人のくせに贅沢言いやがって。

「ありがとう。でもシンバリーのことは先に解放を頼んでもいいわよ。私だってもう気にしてないの。あの件は明らかに父が甘かっただけだし。」

さすがサンドラちゃん、クタナツの女。覚悟が違う。あれからもうすぐ五年か……頼むだけ頼んでみるか。誰に頼めばいいんだ?

「分かったよ。とりあえず成り行きに任せてみようかな。」

話を終えてみんなの所へ。

あれ? 母上もアレクも、スティード君もセルジュ君もいないぞ?

庭か……

うおぉ、母上がアレクとセルジュ君、ついでにシャルロットお姉ちゃんに稽古をつけているではないか。みんなストイックだなぁ。

スティード君はアステロイドさんとか。いい勉強になりそうだ。

「サンドラちゃんも混ざってきたら?」

「そうするわ。滅多にない機会だし。」

私はスティード君の方に乱入しよう。二人でアステロイドさんを倒そうぜ!

そして夕食までの間に私もスティード君もボロボロにされてしまった。今日のアステロイドさんが使ったのは木剣。基本を無視したような自由な剣だった。蹴りは飛んでくるし足は踏まれるし。足クセが悪いぞ。

しかし、私はともかくスティード君まで翻弄されてしまうとは……

やはりクタナツの五等星は違うな……

いやいや、せっかくの夏休みに一体何をやってんだ? 修行なんか夏休みが終わってからでいいってんだ。

そして夕方。キアラもオディ兄達も帰ってきた。それから夕食。ヒュドラの味に母上は大喜び。他のみんなも喜んで食べてくれた。

私とアレクは一番風呂。ありがたいことだ。早めに出て、客室に戻る。

「アレク、ソルダーヌちゃんのことなんだけど……」

「ええ、どうだった?」

「ごめんね。バッサリ断った。やっぱりアレク以外の女の子に全然興味が湧かないんだ。かなり泣かれてしまったよ……」

「そう……カースは、勇者や英雄に成れそうもないわね。でも……私、そんなカースが……」

そう言ってアレクは私の肩に顔を埋めてきた。心なしか肩が震えている。

アレクからしてみると、自分のせいで親友の幸せを奪ってしまったことになるのか。しかも自分はのうのうと幸せを享受している。さらに原因の一つにはアレクのセリフ『自由なカースが好き』これもある。

あのおかげで私は自由に、思うままがに生きる自信がついたのだ。何とも皮肉な話だ……

「アレク、聞いて。」

「……カース……」

「約束だ。アレクは僕の最後の女だ。だから僕より長生きをして欲しい。分かったね?」

「……分かったわっくっぅ……死が二人を別つまで……」

魔力全開でかけた。これで私はエロイーズさんに誘われたとしても浮気などしない、できない、する気もない。この歳でアレクに重大な決断をさせてしまったような気もするが、すでにプロポーズは済んでるし関係ないな。

そろそろ魔力も増えなくなる。たぶん、この契約魔法は一生解けないだろう。それでいい……