軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

132、慰霊『祭』

慰霊祭当日。私とアレク、コーちゃんとカムイは馬車に乗ってコロシアムに向かっている。

馬車内では私もアレクも無言だった。今日は慰霊祭、そして国葬。偉大な王族と、偉大な騎士長を弔う式典であるためか、自然とそうなってしまった。

コロシアムに到着すると側近さんが既に待っていた。ダンバルさんだったか。

「おはようございます。本日はご足労いただきまして、ありがとうございます。」

「おはようございます。本日はよろしくお願いします。」

「カースがお世話になります。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

「それではこちらへ。打ち合わせと参りましょう。」

式の流れと私の出番。三十分の打ち合わせが終わった。思ったより出番が少なくて助かった。開始までもう一時間半はある。

「アレク、膝枕をしてくれる?」

「いいわよ。眠いの?」

「いや、なんだか落ち着かなくてさ……」

「そう。いらっしゃい。」

応接室のソファーに横になり私は出番を待った。アレクと昔話なんかをしながら。

係の人が呼びに来た。行くか。

「じゃあ行ってくるね。」

「ええ、カースの勇姿を見せてもらうわね。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」

応接室を出て、係の人の後を歩く。着いた先はコロシアムのグラウンドへの出口、いやむしろ入り口か? 王族が勢揃いしていた。

「カースよ。今日はよく来てくれたな。頼んだぞ。」

「はい。立派に務めてみせます。」

「カースちゃん。わざわざありがとうね。後でお楽しみが待ってるわ。楽しみにしておいてね。」

「王妃様、ありがとうございます。」

「カース、昨日はフランツウッドが世話になったようだ。今日のあやつは身動きすら取れずベッドの住人になっておる。命があっただけ儲け物よ。」

「王太子殿下、昨日は僕の負けでしたよ。キアラを奪われるのは業腹ですが……まあ、それも王子の器量なのでしょう。」

そりゃ衝撃貫通がたっぷり乗った徹甲弾を相当数受けたんだから当然だろ。よく生きてたもんだ。よかったよかった。ちっ……

「コーちゃん、カムイ。そろそろカース達が出てくるわ。どんな慰霊祭になるのかしら……」

「ピュイー」

「ガウー」

私は以前も利用した貴賓室からカースを見ている。サンドラちゃん達もじきにやって来るだろう。

『大変長らくお待たせいたしました。これより王都防衛戦役戦没者慰霊祭、ならびに国葬の儀を挙行いたします。全員脱帽の上、ご起立ください』

『グレンウッド・クリムゾン・ローランド国王陛下、並びに戦功者の入場です』

ああっ! カースだわ! カースが王太子殿下の後ろを歩いている! ふふ、カースったら違和感が凄いわ。王族の方々は魔力が強大だから、カースの所だけ何もないように感じてしまうわ。本当に変な魔力。

『それでは国王陛下から開会宣言をしていただきます』

『皆の者、楽にしてよい。本日の目的は慰霊、かの魔王以来の強敵から王都を守りきった英霊達の鎮魂である。お前達が大事な者を失った悲しみ、分からぬはずがない。余とて同じだからだ。しかし我らはローランドの民! どのような困難があろうともこの国を未来へと導いていかねばならない! 奮い立て皆の者! 本日が新たな王国の出発だ! ローランド王国万歳!」

『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』『万歳!』…………

まだ始まったばかりなのに、いきなり最高潮ね。やはり国王陛下はすごいわ……一瞬で会場を一つにしてしまわれた。音のうねりが止まらない。隣にいるコーちゃんの声すら聞こえないぐらい。

陛下が掲げた手を降ろされると、会場は一転して静かになった。

『戦没者の鎮魂を願いまして一分間の黙祷を行います』

『黙祷!』

私は目を瞑り亡くなった方々のことを考える。数で言えば教団側の死者が圧倒的に多いだろう。しかし貴族学校の生徒……ソルの友人が多く亡くなった以上、何の慰めにもならない……死と再生の神、トリローナ様のご加護があらんことを……

『やめ!』

もう一分経過したのね。コーちゃんにカムイも黙祷してたの? 偉いわ。

『遺族代表挨拶、シャトリーゼ・ド・ブランシャール夫人』

王国騎士団、騎士長の奥様ね……

カースはブランシャール様ごと教団を制圧したことを気に病んでたわ……

『主人、セロニアスは……不器用な男でした。若い頃は何をするにも人の三倍はかかり……とても騎士長になれる器とは思えませんでした。そんな主人には無二の友がいます。アントニウス・ド・ゼマティス様。先代ゼマティス卿です。年が同じだけで学校も身分も違う二人なのに、よほど馬が合ったようで……

しかし、今回主人は大失態を犯してしまいました……騎士長に有るまじき……そんな主人の名誉を、守ってくださった方がアントニウス様のお孫さんとはどのような巡り合わせなのでしょうか。世間では魔王と呼ばれ恐れられているそうですが、物事の軽重を間違えない素晴らしいお方だと思います。重ねて申し上げます。魔王カース様、セロニアスの名誉をお守りいただきましてありがとうございました。以上を以って挨拶に代えさせていただきます。』

カース! 聞いたわよね!? やはりあなたは間違ってなかったのよ!『遠見』

カースったら泣きそうな顔をしているわ。必死に涙を堪えているのね……私の方が泣きそうになってきちゃった……

『カース・ド・マーティン様はこの度の功績で勲一等紫金剛褒章を授与されました。それでは一言ご挨拶を賜りたいと思います。お願いします!』

ついにカースの出番ね。緊張してないかしら……

会場中の視線がカースに集まっているわ。あんな普通の男の子が魔王だなんて外で会っても誰も信じないでしょうね。

『皆さんこんにちは。カース・ド・マーティンです。この度は誠に悲しい事件でした。被害者の方にお悔やみを申し上げます。この度の事件が解決できたのは私一人の力ではありません。王都に住むみなさんの協力があってこそです。これからも一丸となって王都を盛り立てていきましょう! ありがとうございました!』

ふふ、カースらしい無難な挨拶ね。会場の反応は……

「あれが魔王?」

「嘘だろ?」

「弱そうじゃん……」

「あれなら俺でも勝てるぜ?」

「ゼマティスの孫なんだろ?」

「けっ、七光で勲章ってか?」

貴賓室にまで聞こえるほどに……やっぱりこうなるのね。これもカースらしいわ……

『皆の者! 今日は慰霊祭、つまりお祭りだ! 祭りには余興が付き物! たった今面白い余興を思いついたぞ!』

あら、きっとこれは予定外ね。陛下は何をお考えなのかしら?

『お前達! カースの実力に疑問があるのだろう? 前回の王国一武闘会で優勝しているのだがな! さて、そこでだ! カースに挑戦したい者は降りて参れ! 挑戦料は金貨一枚! 勝てば金貨百枚をくれてやろう!』

これには会場は大盛り上がり。次々と客席から舞台へと降りていくわ。

『カースをこの円から出せば勝ちとする! さあ並べ! 料金を払った者から挑戦していいぞ!』

カースは困ったような面倒なような顔をしている。一体何人いるのかしら? フランティア領都でも似たようなことをしたわね。やはり陛下はそこまでご存知なのよね……

冒険者風、貴族風、平民風。色んな男がカースに近付けもせず負けていく。『風弾』や『風球』でなるべく怪我をさせないように勝っているわ。カースったらこんな時でも甘いんだから……

あら、列の後ろの方が逃げ出したわ。払った金貨は返ってこないでしょうけどね。

おや……残った全員が一斉に襲いかかったわね。それでもカースには……